「鳥越淫行疑惑」で問われる、民進党の推薦者責任 --- 川崎 隆夫

寄稿

都庁

東京都知事選に立候補しているジャーナリストの鳥越俊太郎氏は、21日に週刊文春が報じた「女子大生淫行疑惑」に関する報道を「まったくの事実無根」と否定し、公選法違反と名誉毀損の疑いで、週刊文春の編集人を東京地検に刑事告訴しました。

また鳥越氏は、21日午前に開かれた民進党都連の会議にも出席し、週刊文春に「女子大生淫行疑惑」と題する自身の記事が掲載されたことについて「記事内容は一切事実無根だ」と否定し、「心ない誹謗中傷を受け、心から悔しい。怒りでいっぱいだ。」と語りました。

「淫行疑惑」に関する説明責任

今回週刊文春が報じた鳥越氏の淫行疑惑に関する記事は、東京都民に大きな衝撃を与え、有権者の投票行動に少なからず影響を与えることは必至の状況を招いています。特に現在問題視されていることは、週刊文春の記事の真偽もさることながら、鳥越氏がジャーナリストでありながら記者会見を開かず、またマスコミの取材にも一切答えないという、ジャーナリズムの否定とも取られかねない対応を行っている点についてです。

「情報公開」の必要性を最も訴えてきたジャーナリストでありながら、なぜか自らの問題に関する事柄については、会見を開かないなど説明責任を全く果たそうとしない姿勢は、多くの都民には理解し難いものでしょう。記事の真偽についても、「弁護士に聞いて。」などといった対応で済ませている姿勢が、一般の都民に受け入れられるはずはありません。

週刊文春は被害女性の夫からの情報のみならず、メールの文面の掲載などの「物的証拠」も記事として掲載しており、内容は概ね事実だろうと思えるものになっています。少なくても多くの読者は、週刊文春の記事内容は限りなく事実に近く、鳥越氏のほうが苦しい対応をしている、といった印象を受けるでしょう。

しかしながら、鳥越氏本人はもとより民進党などの野党も、一貫して「週刊文春の記事は事実無根である。」という姿勢を崩しておらず、法的措置を取ることだけで済ませ、記事の内容についての反論すら行わず、鳥越氏を野党統一候補として推薦した責任を果たそうともしていません。

民進党に求められる「推薦者責任」

今回の都知事選は、そもそも舛添前東京都知事が公私混同や高額の出張費等の問題により、任期途中で辞任に追い込まれたことにより、実施される運びになったという経緯があります。

このような経緯を経て行われる今回の都知事選では、政策のみならず、資質や人格に関する情報も、有権者が投票するうえで重要な判断材料にするはずです。しかしながら、文春が報じた「女子大生淫行疑惑」について、鳥越氏自身が全く説明しないことは、自ら有権者に対する説明責任を放棄したとみなされ、現時点では「文春の記事は事実」といわても致し方ない状況に陥っています。

筆者が残念に思うことは、民進党を初めとする野党各党に、週刊文春が報じた疑惑を真実かどうか確かめようとする姿勢が、全くみられない点です。少なくても週刊文春は、舛添前知事の公私混同疑惑など様々な疑惑を、綿密な取材をもとに明らかにし、実績を積み重ねてきたメディアであることは、周知の事実です。

このようなメディアとして知られている週刊文春が報じた記事に対して、民進党などの野党は、真剣に受けて止めている様子は見られません。逆に疑惑に向き合わず、放置しておけば、間もなく収束に向かうと考えている節があります。

仮に文春の記事の大枠が事実であったとしたら、民進党など野党各党は、鳥越氏が都知事にふさわしい資質と人格をもった人物であるとして、自信をもって都民に推薦できるのでしょうか? 万一鳥越氏が都知事に当選してしまったとしたら、目も当てられません。

今回、鳥越氏を野党統一候補として一本化することにリーダーシップを発揮したのは、民進党本部です。民進党は、舛添前都知事の疑惑が報じられた際、舛添前都知事に対して、一連の疑惑について説明責任を果たすよう、強く求めていました。その時と同様に、、民進党ほか野党各党が、速やかに行うべきことは、疑惑を隠蔽するのではなく、鳥越氏に対して記者会見を行うことを促し、その場でしっかりと真実を語り説明責任を果たすよう、強く求めることです。

仮に鳥越氏が会見を開くことを拒んだとしたら、「文春の記事は概ね事実」と認定し、民進党などの野党各党は、鳥越氏に与えた推薦を取り消すことを検討するべきです。。東京都は、すで2人の都知事が任期の途中で辞任に追い込まれていますので、今度は絶対に失敗が許されない選挙になるのですから。

特に今回の都知事選において、宇都宮氏に立候補を断念させるなど、野党候補の一本化を推進した民進党には、都民の利益のために、鳥越氏に記者会見を開くよう強く求める責任があります。鳥越氏に記者会見を開かせることにより初めて、民進党は「推薦者責任」を果たせることになるのです。

しかしながら、民進党が鳥越氏に記者会見の開催を促すことをせず、このまま疑惑を放置しつづけるようであれば、民進党は徐々に都民の信頼を失い、来年の都議選では厳しい結果を招くことになるでしょう。民進党は現在、岐路に立たされていることを、よく認識するべきだ、と思います。 

【参考記事】

■選挙公約から垣間見える、小池百合子氏の戦略思考
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株式会社デュアルイノベーション 代表取締役
経営コンサルタント 川崎隆夫