トランプ候補、政策討論で勝者に

2016年07月25日 06:00

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バロンズ誌、今週のカバーは医療保険セクターの危機を取り上げる。これまで医療保険関連のコスト拡大に合わせ、恩恵を受けていた。しかし企業側は上昇を続ける医薬品価格や医療保険費用の削減を狙い、非表示の医薬品値上げや医療保険契約の見直しを求めタッグを組んだ。アメリカン・エクスプレスやキャタピラー、コカコーラ、IBM、シェル、ベライゾン・コミュニケーションズなどその数は米大手30社に及ぶ。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週はトランプ候補の公約が与える影響についてまとめている。抄訳は、以下の通り。


「予想というものは難しい、特に未来についてはね」とは、往年の名選手ヨギ・ベラが残した名言だ。その言葉通り、英国民投票の直前での世論調査は、欧州連合(EU)残留を75%が予想していた。蓋を開けてみれば、BREXIT派が過半数を上回ったのは周知の通りである。現状、民主党のヒラリー・クリントン候補が勝利する確率は71%だが、不確実性の世界では何が起こるか分からない。ひとつ明白なのは、メラニア夫人のスピーチ問題テッド・クルーズ上院議員の反乱を経て、民主党全国大会がフィラデルフィアで開幕するということだ。

本選で誰が勝利しようが、ホライゾン・インベストメントのグレッグ・バリエール氏にしてみれば「トランプ候補は政策討論を制した」という。予算、財政などは結局、共和党が勝利しようがしまいが緩和の方向へ動いている。その裏で、トランプ候補が公言するように膨れ上がるエンタイトルメント(給付金制度を指し、失業保険や年金、高齢者向け医療保険であるメディケイドなど含む)には手を付けない見通しだ。

貿易ではトランプ候補と民主党の大統領候補に立候補したサンダース上院議員(バーモント州)が北米自由貿易協定(NAFTA)が米成長を押し下げると主張したおかげで、自由貿易への反感が募る状況。移民問題ではヒスパニック層の80%がクリントン候補を支持するだけに勝ち目はないものの、焦点は移民制度改革より国境間の壁に移っている。

地政学的リスクをめぐって、トランプ候補は北大西洋条約機構(NATO)体制を支持する主流派を震え上がらせた。しかし、戦争に疲弊したアメリカ人の本音に沿う内容だ。テロ問題でもクリントン候補がニュアンスに富んだ声明を発表した一方で、トランプ候補は報復を呼びかけた。ミュンヘンでの銃乱射事件を受け、こうした見方を強めただろう。

トランプ候補は、サンダース候補やエリザベス・ウォーレン米上院議員(マサチューセッツ州)に共鳴したのかグラス・スティーガル法の復活さえ受け入れた(筆者注:トランプ候補独自の考えではなく、2008年の共和党大統領候補だったジョン・マケイン上院議員とウォーレン議員などがグラス・スティーガル法の再導入を目指す法案を提出済み)。また、トランプ候補はウォール街から米連邦準備制度理事会(FRB)批判をトーンダウンするよう要請を受けた可能性があるものの、引き続き声高に低金利が貯蓄者の利益を奪ったと非難し続ける。

共和党の党大会は、「Make America Great Again」と「Trump Pence」のプラカードが舞う。
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(出所:Youtube

そのFedは、26〜27日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。JPモルガンのマイケル・フェローリ主席エコノミストをはじめ、無風で終わるとの予想が大勢。ブルームバーグによると、FF先物でみた年内の利上げ織り込み度は50%に過ぎない。しかしエコンタリアンのブログを執筆するレガシー・プライベート・トラストのポール・カシリール氏は、7月FOMCで利上げの狼煙を上げると予想する。9月20〜21日開催のFOMCへ向け、「米経済の80%は良好」と指摘。米6月雇用統計をはじめ米6月小売売上高米6月鉱工業生産など、経済指標が改善しているためだ。元FRB理事のケビン・ウォルシュ氏がFedについて「経済指標より、資産価格次第で政策を運営しているように見える」と分析していた事情もあり、米株が最高値を更新する過程で利上げサインを点灯する可能性は否定できない。

もうひとつの名物コラムは、米株の勝ち組だった公益セクターに警鐘を鳴らす。抄訳は、以下の通り。

チキン・レースがお好みなら、公益セクターの買いを維持すべきだろう。配当利回りという魅力を携え、年初から輝く星だった。公益事業 セレクト セクター SPDRファンドは年初来で20%以上も上昇し、2009年以来のリターンを遂げている。配当利回りが3.1%と過去最低を更新した米債利回りを2倍近く上回るのも魅力のひとつだ。BREXITの悪影響が世界経済を下押しかねないなかで、安全資産として人気を集めていることは否定できない。しかし、株価収益率は19倍と1990年代以来の水準へ上昇している。また、超低金利を受けてリスク資産へ資金が流入しており、配当利回りの長所を奪いかねない。公益セクターが今すぐ下落するとは言わないが、利益を確定するタイミングは見計らっておくべきだろう。


共和党のトランプ候補と民主党のクリントン候補は、そろって副大統領候補に白人の主流派を指名しました。その反動と言うべきなのか、グラス・スティーガル法の復活や現代版の導入を目指すなど、サンダース票に配慮した政策に偏っています。共和党側の場合、基本的にドッド・フランク法に反対の姿勢を取りながら不思議ですよね?

結局のところ、銀行規制の章で取り上げておらず、規制に関する権限を米大統領ではなく米議会に移すべきとする章に盛り込んでいるため、どこまで真剣に取り組むかは不透明。民主党の場合はクリントン大統領時代に葬られたグラス・スティーガル法ではなく、「現代版」の導入を目指し、クリントン候補の面目を保ちます。解釈を広げれば、民主党が掲げる「現代版」が大手銀解体につながるような内容になるかは未知数です。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)など政策綱領では明確化を避けている節もあり、選挙戦のパフォーマンスにとどまる可能性を残します。

(カバー写真:GOP


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年7月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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