正社員という既得権

2016年07月28日 09:39

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最近、若手を含めた非正規社員が疲弊しているという話を聞いた。この理由は明白で、正社員の既得権が非正規社員を追いやっているということだろう。

●守られている正社員という既得権

正社員は、期限の定めが無い雇用契約である。よほどのことが無ければクビにならない。会社は次の解雇の4要件を満たさない限り裁判で負ける可能性が高い。

1.人員整理の必要性
2.解雇回避努力義務の履行
3.被解雇者選定の合理性
4.手続の妥当性

この中で、トラブルが多いのが「4.手続の妥当性」ではないかと思っている。整理解雇に当たって、手続の妥当性が問われるが、説明、協議、納得させるための手続きを踏まない限り無効とされるケースも多い。

そのため、企業はアリバイづくりに腐心することになる。なかには、アリバイづくりに腐心して強引に懲戒解雇を悪用した人員整理をおこなう会社も少なくない。

2年ほど前に取材記事としてBusiness Journalから「懲戒解雇を悪用した人員整理、中小企業で横行?事件を捏造、敗訴でも賃金支払わず」を投稿した。実名報道の賛否を含めて話題になった記事なので紹介しておきたい。

懲戒解雇とは、違法行為や重大な違反行為を犯した社員に対して、会社から課せられる制裁罰である。整理解雇や職務能力欠如を理由とする普通解雇とは異なり、労働者にとっては社会的死刑ともいえる。

まず履歴書の賞罰は「有り」になる。離職票によって離職理由が転職先に知られるので、懲戒解雇をされた人が再就職をすることは極めて困難になる。失業給付や税制面でも制約を受けることになる。最近では、秋田書店の「景品水増し訴訟」が記憶に新しい。

会社経営の経験があれば、経営の難しさや厳しさは分かるはずだ。上場企業でない限り、経営責任は経営者に帰するものである。安定的な売上が保証されることもなく、業績が低迷すれば、最初に経営責任が問われる。

失敗した経営に対しては「経営者は無能だ」「社員の生活を守れ」と批判が集まる。しかし、経営者が無能だから失敗するのではない、経営という仕事の難易度が高いのである。

現状は、正社員と非正規社員が同じ仕事をしていても、正社員は給料が高く解雇もされない。さらに、非正規社員は給料が低く解雇のリスクもある。それは、能力云々の問題では無く制度上の課題である。

病気や障害などでハンディを背負っている人たちは、セーフティーネットで救済制度を作っておく必要性はあるが、正社員の既得権はじわじわと企業を蝕んでいく。

正社員の権利(本稿では既得権と称した)を守ることは法令順守の観点では重要なことである。しかし自らの立場が優遇されていることを理解することも大切ではないかと思う。

尾藤克之
コラムニスト

PS

7月26日開催の「第2回著者発掘セミナー」は無事に終了することができました。多数のご参加有難うございました。なお、次回以降の関連セミナーは8月末頃に公開する予定です。

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尾藤 克之
コラムニスト/経営コンサルタント

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