親子上場の問題(その1)

2016年07月27日 06:00

親子上場

今回は、親子上場のメリットとデメリットについて紹介します。

1. 親子上場の多い日本

日本は親子上場している会社が多い国です。

ソフトバンクとヤフー、日立グループ、NTTとNTTドコモ、キヤノンとキヤノンマーケティングなど有名企業が多く親子上場しています。新規上場でもGMOインターネットグループのように、親子までいかなくとも関係会社を多く上場させているところもあります。

日本以外では、ロシアのガスプロムのように親子上場しているケースはありますが、少数派です。

米国では親子上場の弊害が現実となったケースもあり、特に親子上場への警戒心が強いようです。

有名な事例としてはTransamericaという会社がMBAコースのケーススタディなどにも使われているようです。(Transamericaという会社が、子会社化した会社が持っていた含み益のある資産を自社に売却させ、さらにその子会社を清算してしまったために少数株主から訴えられたそうです。この事例に詳しい方は是非ご教示を!)

日本は伝統的に銀行による間接金融の役割が大きく、加えて株式の持ち合いで安定株主を作る経済システムを長く続けてきました。親子上場は子会社にとって究極の安定株主といえます。日本の親子上場が多いのは、資本の論理よりも経営の安定を歓迎してきた結果と言えそうです。

とはいえ、日本の親子上場も減りつつあります。少数株主への配当が企業グループからのプラスアルファの資金流出となること、内部統制対応など上場維持コストも増加傾向なこと、重要な意思決定に大規模な株主総会が必要で子会社の意思決定が迅速化しにくい、といった背景があるようです。

2. 親子上場の問題点

東京証券取引所は、「親会社を有する会社の上場に対する当取引所の考え方について」という文書を発信しています。一部を抜粋します。

子会社上場には独自の弊害があることが指摘されています。例えば、親会社と子会社の他の株主の間には潜在的な利益相反の関係があると考えられますので、親会社により不利な事業調整や不利な条件による取引等を強いられる、資金需要のある親会社が子会社から調達資金を吸い上げる、上場後短期間で非公開化するなど、子会社の株主の権利や利益を損なう企業行動がとられるおそれが指摘されています。

要するに、親子上場の子会社では少数株主が保護されない懸念が高く、株主の平等に反するということです。親会社の利益を優先させて少数株主の利益を損なうなら、確かに不特定多数の少数株主が想定される上場企業としてはふさわしくありません。

親子上場の問題点は少数株主の利益に関わるものだけではありません。2005年、堀江貴文氏率いるライブドアがニッポン放送を買収しようとする有名な事件が起こりました。そのターゲットはニッポン放送というよりも、ニッポン放送が当時子会社に持っていたフジテレビでした。

堀江氏自身の人物像もあってスキャンダラスな報道をずいぶんされましたが、企業防衛の観点からはフジテレビ側もずいぶん脇が甘い話です。ニッポン放送のほうがフジテレビより時価総額が小さければ買収ターゲットになるのは当然です。

2014年、長野日本放送という会社の株価が、1ヶ月で4倍に跳ね上がりました。長野日本放送は日清紡グループの子会社として親子上場しています。真実は分かりませんが、仕手戦に使われたと見るのが妥当でしょう。ただし、親子上場は解消に向かう、つまり親会社がそのうちTOBを行うと考えた投資家が大量に株を買い付けたと推測する人もいます。

親子上場の子の場合、多くの株式を親会社が押さえているため、市場に流通する株式がそもそも多くありません。このため少しの売買で株価が荒い値動きをしがちで、仕手戦には好んで使われてしまうと言われています。このように、投資という視点から見ても親子上場は歪みが生じがちです。

3. 親子上場の良い点

一方で、親子上場には良い点もあります。まず、親子上場によって親会社の株価は上がることが経験則で知られています。

子会社の株主も親子上場であることは知ったうえで投資しており、自己責任と言えます。そもそも多くの株主は株価が上がればハッピーなのですから、親子上場で株価が上がれば誰も不幸にはなりません。

子会社の従業員からすれば、晴れて上場企業本体の従業員になればモチベーションも上がるでしょう。福利厚生が良くなったり、個人レベルでは住宅ローンが組みやすくなり、人材採用もやりやすくなります。いい人材が士気の高い状態で仕事に取り組めば、企業価値上がるのは言うまでもありません。

また、親会社が経営を長い目で見ることにより、短期利益を求める株主からの防波堤ともなります。オーナー企業は長期的な視点で経営しやすいと言われることがありますが、そうした経営の安定と上場企業としての知名度や資金調達を両立させる妙手が親子上場であるとも言えます。

次回も引き続き親子上場をテーマとします。

文:株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.026 2016.04.13)より転載

三木

執筆者;三木 孝則(みき・たかのり)

株式会社ビズサプリ CEO 公認会計士
会社概要はこちらから http://biz-suppli.com/

 


編集部より:この記事は「M&A Online」2016年7月25日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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