仏教会神父殺害テロ事件の衝撃

2016年07月28日 16:29

フランス北部のサンテティエンヌ・デュルブレのローマ・カトリック教会で2人のイスラム過激派テロリストが神父(86)を含む5人を人質とするテロ事件が発生したが、2人は特殊部隊によって射殺された。フランス警察当局によれば、神父は首を切られ殺害されたほか、1人が重傷、他の3人は無事だったという。

事件の報告受けたオランド大統領はカズヌーブ内相を連れて現地に飛び、「恥ずべきテロ事件だ」と激しく批判し、フランスは目下、イスラム過激テロ組織「イスラム国」(IS)と戦争状況にあると強調した。ヴァルス首相は「野蛮な行為だ」と、教会内の蛮行を激しく批判している。

フランス革命記念日の日(7月14日)、フランス南部ニースの市中心部のプロムナード・デ・ザングレの遊歩道付近でトラック突入テロ事件が発生したばかりだ。慣例の花火大会が終了した直後、チュニジア出身の31歳の犯人がトラックで群衆に向かって暴走し、少なくとも84人が犠牲となった。

ローマ・カトリック教会の総本山、バチカンでは、フランス教会のテロ襲撃事件が伝わると、大きな衝撃と憤りが広がっている。バチカンのロンバルディ報道官によると、ローマ法王フランシスコは、「憎悪に基づいた如何なる行為も認めることはできない」と批判し、犠牲者のために祈ろうと述べたという。

テロ襲撃時、教会は慣例の朝拝中だった。2人のテロリストは教会の後ろ入口から侵入すると、礼拝中の神父をひざまずかし、アラブ語で何かを喋った後、神父の首を切り、殺害した。教会には神父、2人の修道女、そして3人の礼拝参加者(信者)がいた。1人の修道女が逃げ、警察に通報したため、テロ対策の特殊部隊が1時間半後には教会に到着し、教会から出てきたテロリストを射殺したという。

ISは過去、ローマ・カトリック教会を批判し、ローマ法王の暗殺を示唆してきた。ISのテロリストがカトリック教会の礼拝中を襲撃し、聖職者を殺害したのは欧州教会では初めてだ。それだけに、バチカン法王庁だけではなく、欧州のカトリック信者たちにも大きな衝撃を与えている。

当方はこのニュースを聞いた時、「教会の朝拝には本当に数人の信者しかいなかったのだろうか」と考えた。多分、事実だろう。フランスは欧州の代表的なカトリック国家だが、地方教会の平日の朝拝に参加する信者は多くはいないのだろう。同じカトリック国のオーストリアでも平日の朝拝となれば、大都市ウィーンでも10人を超えることはめったにない。

それでは、なぜイスラム過激派テロリストは朝拝参加者が少ない地方の教会をわざわざ選び、襲撃したのか、という疑問が浮かんでくる。テロリストの誤算だったのか。

看過できない事実は、2人のテロリストは神父をナイフで首を切って殺害したことだ。拳銃で射殺できたはずだ。刃物で首を切る殺害は異教徒への憎しみがあるはずだ。すなわち、イスラム過激派テロリストは神父の首を切って殺すことで、異教徒への憎悪を表現したと受け取るべきだろう。テロリストは、地方の信者の少ない教会の朝拝時間が最も確実な犯行時間と考えたのかもしれない。
ちなみに、テロリストの一人、19歳の男は昨年、シリアに行ってISの聖戦に参戦しようとしたが、トルコで拘束され、フランスに戻された。男の足にはGPS監視装置が着けられていたという。

昨年4月、チュニジア出身の青年がカトリック教会を襲撃するテロ計画を企ていたことが発覚した。イスラム過激派テロリストは今回、世界最大のキリスト教会、ローマ・カトリック教会に「次はお前たちだ」というメッセージを発信したわけだ。

殺害された神父が所属していたルーアン大教区のLebrun大司教は、「宗教戦争にしてはならない」と警告を発し、イスラム教徒とキリスト教信者の和解・共存をアピールしている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年7月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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