M&Aの株式価値評価と自社株の相続税評価の違いは?

2016年08月03日 06:00

 

Q:M&Aの株式価値評価と自社株式の相続税評価の違いは?

同族会社で30年以上、食品卸業を営んできました。一度も赤字にすることなく、それなりの規模まで成長させたことは自慢です。後は息子に会社を承継させるため、顧問税理士に相続税について相談していましたが、突然に息子が病気になってしまいました。回復に相当な時間がかかるため、外部の会社に譲渡することも考えています。顧問税理士に自社株式の相続税評価額を計算してもらっていますが、知人から「M&Aの場合はもっと高く売れる」とも言われています。両者はどう違うのでしょうか?

(福岡県 K・Nさん)

A: M&Aの株式価値評価は、
相続税評価の510倍になることも

一般的に、M&Aで株式を譲渡する場合の価額は、相続税評価額より高くなります。私が以前に担当したケースでは、相続税評価額の10倍で会社株式を譲渡したオーナー経営者もいます。また、債務超過の会社が5億円で譲渡されたケースもありました。どちらのケースも、オーナー経営者からは「想定外」という言葉をいただきましたが、実際には意外なことではありません。

そもそも、「相続税評価」と「M&Aの株式価値評価」には、決定的な違いが3つあります。

目安となる評価額を算定するベクトルの違い

→相続税評価は安く、M&Aの株式価値評価は高くなる

親族内で事業を承継する場合、相続税を低く抑えるため、株式価値を低くすることがよくあります。不動産や保険商品を活用し、自社株式の相続税評価額を下げる会社も少なくありません。

一方で、M&Aによって株式を外部に売却する場合、オーナー経営者は、売却金額の目安となる株式価値が高くなることを望まれます。

このように、相続とM&Aでは株式価値評価の向かう方向性が異なります。そして、その違いが評価額の差となるのです。

M&Aでは時価純資産に「のれん(営業権)」が上乗せされる

「のれん」とは会社の無形資産の一種で、会社の買収・合併時の「買収された会社の時価純資産」と「譲渡価額」との差額のことを言います。

図の赤い部分がのれんです。M&Aでは、目安となる時価純資産にのれんが上乗せされます。例えば将来収益の見込み、信用力やブランドイメージなど、目に見えない収益獲得能力となります。

のれんは一律ではなく、のれんが高くなる要素は多様です。これから市場拡大の見込まれる業種であった場合、他の業種に比べて、のれんは高くなります。業種に限らず、他では得難い技術やノウハウ、権益や有力な販路なども、のれんが高くなる要因となります。また、買収会社と譲渡会社の事業にシナジー効果(相乗効果)が見込まれる場合も、高いのれんが上乗せされる可能性があります。

M&Aで買い手候補が複数になると、価格が高くなることも

M&Aで買い手候補が複数になると、他の候補より高い金額を提示し買収を成功させようとする買い手が出てきますので、候補が1社の場合と比較して、高値で買収価額が提示されることが多くなります。

M&Aの株式価値評価は、評価者の経験や知識によって差異が出ますが、高すぎても安すぎても、現実味のない評価はその後の条件交渉にマイナスの影響を及ぼすことになります。M&Aの株式価値評価等については、ぜひ実績が豊富で、信頼のおけるM&A専門会社にご相談されることをお勧めします。

M&A情報誌「SMART」より、2015年4月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部


編集部より:この記事は「M&A Online」2016年8月1日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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