ビルメンテナンス業界のM&A動向

2016年08月05日 06:00

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生き残りのため事業を多角化、FMSへのシフトチェンジを図る

ビルメンテナンス業は、主にビルを対象として清掃、保守、機器の運転を一括して請け負い、これらのサービスを提供する業と定義されている。経済状況に左右されにくく、安定収益が見込みやすいことから、M&Aにおいて非常に人気が高い業種の1つだ。

業界全体の傾向を見ると急拡大はしていないものの、2012年以降は拡大が見られる。12年は東日本大震災からの復興需要、13年以降はアベノミクスによる景気改善効果が売り上げを押し上げた要因と推測される。

しかしながら、今後も市場の右肩上がりが続くとは考えにくい。現在も、都心部ではオフィス需要が旺盛で新規物件が増えているものの、市場全体では多くの物件で空室率が上昇、賃貸料が低下する傾向にあるからだ。人口減少が続く国内状況を考えれば、オフィスや店舗、病院、公共施設などの管理物件が増え続けることは期待できない。市場全体が縮小して、限られたシェアを多くの企業で奪い合う状況に陥ることは避けられないだろう。

こうした市場傾向を見据え、各社が力を入れているのが「ビルメンテナンス」から「総合ファシリティマネジメントサービス(FMS)」へのシフトチェンジである。総合FMSとは、従来型の施設管理の枠を超えた総合的なサービスを提供することで、施設の効率的利用やコスト削減を図り、入居者(テナント)の満足度を高め、資産価値を向上させるサービスである。各社はFMS事業への転身を目指し、これまで外注していた資材調達や営繕工事などの周辺業務を取り込んだり、入居テナントに対してセキュリティやBPO(ビジネスの間接業務委託)などの付加価値サービスを提供したり、物件内での小売りや飲食などを自ら手掛けるといった経営の多角化に取り組み始めている。

業界トップのイオンディライトは、総合FMSへの転身を宣言し、すでに4期連続の売上高増、10期連続の増益という結果を出している。ほかにも東京ガス都市開発がインターネットを通じて空調温度変更や夜間・休日在館申請、作業届の申請、管球交換などを利用できるサービスの提供を始めるなど、各社が総合FMS化に向けた事業拡張に取り組んでいる。

総合FMSへの転身、ストック収入の拡大に加えて
海外展開を目指したM&Aも増加

新規物件の減少に伴うシェア獲得競争が激化する中、大手事業者はストック収入の拡大を目指し、地方の中小事業者とのM&Aを進めている。13年12月には日本ハウズイングが札幌および東京で事業を展開する山京ビルマネジメントならびに山京商事の株式を取得、同年6月には日本管財が関西地区を基盤とするエヌ・ジェイ・ケイ・ホールディングスを子会社化している。

一方、国内市場の縮小を見越して、M&Aにより海外市場の開拓を進める事業者も目立つ。2012年9月、イオンディライトは中国に子会社を置き、企業から間接業務のアウトソースを受けるBPO事業を展開するジェネラル・サービシーズ(東京)を子会社化。この提携を生かし、同社は中国大連でBPOをメニューに加えた総合FMS事業を加速させる方向だ。日本管財は、13年3月にオーストラリアの区分所有住宅等管理会社Prudential Investment Company of Australia Pty Ltd(PICA社)の株式を取得、オーストラリア全体で8%のシェアを誇るPICA社の基盤を生かして同国でのサービス拡大を目指す。また、日本ハウズイングは13年5月に連結子会社を通じて、台湾の企業と合弁会社を設立、台湾でマンション管理事業の強化を進める。

ビルメンテナンス業界におけるM&Aは、ストック収入の拡大を目指す国内のM&Aと、総合FMSを目指して周辺事業を取り込むためのM&A、そして海外展開を推進するためのM&Aという3つの形で増加していくことが予想される。

M&A情報誌「SMART」より、 2015年7月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部


編集部より:この記事は「M&A Online」2016年8月4日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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