TOBってなあに? もうかるの?②

2016年08月07日 06:00

>>第1回はこちら

TOBってなあに?

TOBの価格は色々な面で論点があります。今日は、「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」と「のれん」についてお話しますね。なにやらちょいむずの予感?!

TOBの論点その1「善管注意義務」って?

まずは買い手側の経営陣の「善管注意義務」からいきます。

例えば公開買付価格が、仮に「明らかに高く、買い手会社に損害を与えた」となれば、買い手側の経営陣が買い手側会社の株主に損害賠償請求などをされる可能性はあり得ます。

前回ご紹介した「イオンディライトのプレスリリース 」には、こんな内容が記載されていました。

『独立した第三者算定機関としてのファイナンシャル・アドバイザーである野村證券株式会社に対し、対象者の株式価値算定を依頼し、平成 27年10月27日付で株式価値算定書を取得しました。』

野村證券の算定
市場株価平均法 332円から336円
類似会社比較法 262円から585円
DCF法 697円から993円

一方、買収される側の白青舎は、大和証券に株価算定を依頼しています。

大和証券の算定
市場株価法 332円から336円
類似会社比較法 437円から565円
DCF法 723円から832円

このような場面での株価というのは、一般株主同士の売買ではなく、企業支配の場面なので市場株価法(マーケットアプローチ)だけでは各関係者を説得できるには足りず、類似会社比較法(これもマーケットアプローチのひとつ)やDCF法(インカムアプローチ)などの複数の方法が採用されることが多いです。

もちろん、「本当に正しい株価」なんて誰にも分かりませんし、それを算出する手法はまだ開発されていません。将来的には開発されるんでしょうか・・・。(今回は企業評価の手法についてふれませんので、別のコラムを参考にしてくださいね)

ですから上記のように、野村證券も大和証券も「ずばりコレ!」という株価はピンポイントでは出せないのです。

「大体こんな感じじゃない?」というレンジ(幅)を出して、最終的に取締役会などが決定するのです(実際の実務はいろいろと同時並行であるはずですが、タテマエ上はそういうことです)。

イオンディライトのプレスリリース の16ページ(下記リンク)には、結局ナゼ取締役会が「800円」と決めたのか、ちゃんと書いてあります。(モヤモヤっとですけどね・・・)
https://www.aeondelight.co.jp/news/%E6%A0%AA%E5%BC…

なお、このような場面は税法の話は基本的に関係ありませんから、税法通達の株価算定方式は一切関係しません。

一般論ですが、M&Aの場面で税法通達の算定方式の話を持ち出しても、通常は利害関係者が納得しません。(白青舎さんの場合は、たまたま1株純資産は800円前後のようですが。)

純粋なビジネスの場面での株価については、税務は干渉しないことになっているのです。(純粋なビジネスの場面で税務がいちいち干渉するようなことがあっては経済がおかしなことになってしまいますから。)

上記の野村證券さんや大和証券さんの採用方式を見ても、税法が重視する純資産法(コストアプローチ)は最終的には全く採用されていませんね(一応、検討はしているという建前はあるはずですが)。

このように、税法通達のような計算方法(純資産方式や類似業種比準方式、少数株主の株主配当還元方式)が採用されることは、まずないといえると思います(それは仕方がないのです。税法通達は「課税」が目的ですから、客観性や課税の安全性が重視されます。それに対して、M&Aの実行時には、各関係者が納得する株価でビジネスを成功させることが優先されるからです)。

概要についてご興味がある方は、日本公認会計士協会の「企業価値評価ガイドラインhttp://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/32.htm…」をご参照ください。とは言っても、ここには概要的なものしか書かれていません。個別案件で事情が異なりますので。

では、次の論点に移ります。

TOBの論点その2 「のれん」って?

買収価格は「のれん」とも裏腹の関係にあります。買収価格が売買対象の純資産時価よりも高ければ「のれん」が大きくなりますし、その後、買収側の会社の業績にも与える影響が大きいのです。

参考:「企業結合に関する会計基準 」
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/ket…

もしも償却する方法を採用するならば、営業利益を押し下げかねませんし、買収した後に業績が下がれば、のれんの減損の問題も出てきます。

東芝のように償却をしない方法であっても減損の問題は出ますし、株主さんから「あの、のれん、大丈夫?」と思われたりもしますしね。

参考:「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 」
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/imp…

いずれにせよ、イオンディライトの例では、300円台の株価が800円になるというのですから、これらのプレスリリースがされる前の「企業価値算定」や「打ち合わせ」などの作業は、インサイダー情報なのです。

もし「800円で売れる」と分かっていたら、フツーは買っちゃおう! と思いますよね。作業に携わる人たちは、ずっと・・・周囲にばれないように・・・情報が漏れないように・・・(フゥ)計算しなければなりません。

それに通常、このような案件は何カ月も前から進行しています。もちろん会計面や税務面だけでなく、資金の検討も必要ですし、場合によっては公正取引委員会 の審査などが必要なケースもあります。ですから、無事にプレスリリースが出てホッとしたことでしょう。このような事案には、必ず陰で頑張っている裏方さん達がいるのです。

本日はここまで。次回は「全部買い取ってもらえないバージョン」についてお話しますね。

[著]節税ヒントがあるかもブログ メタボ税理士さん
[編集]M&A Online編集部
本記事は、「節税ヒントがあるかもブログ」に掲載された記事を再編集しております。
原文をお読みになりたい方は、こちらから
http://ameblo.jp/h-k-tax/entry-12090046068.html


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年8月5日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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