給付型奨学金や企業インターンシップよりもe-国立大学を

2016年08月13日 06:00

大学生のインターンシップ制度が注目されている。夏休みなどに学生が実際に企業で働き、リアルな就業経験を持つことでミスマッチを防ぎ、若手社員の早期離職やメンタルヘルス問題を予防するとされている。さらには、有給職業教育の一環として、学生が企業から給料をもらいながら長期間働く新たな実習(=有給インターン)も始まったそうだ。

また、先の国政選挙でも給付型奨学金は大きな争点となった。「進学したい子供が家庭の貧困で夢を諦めるのは可哀相」との主張がある一方で「無理して低レベル大に行っても、高卒レベルの就職しかできないのだから金と時間のムダ」「認可保育園の保活みたいに偽装離婚とか流行しそう」との主張もある。

さらに、アベノミクスの混迷の一因として「日銀幹部の低学歴」を挙げる人も存在する。たしかに、先進国の中央銀行で「総裁が学士どまり」「幹部も同レベル」なのは日本ぐらいであろう。ただし、これは「総裁に向学心がない」というよりは「(特に団塊以前の文系管理職は)キャリアの途中でも必要があれば大学で学びなおす」という習慣がないのも一因だろう。

これらの諸問題を一気に解決する方法として「e-国立大学」の創設を提案したい。あるいは、現在の放送大学を拡充させるのでもよい。向学心はあるが経済的に厳しい若者は、親元で働きつつweb授業で安価に単位をそろえることができる。法学や経済学は就職後の方が興味深いだろうし、レポートも臨場感が出るだろう。

数学や語学やプログラミングなどは、習熟度別クラスにして自分に合ったレベルで学ぶ方がお勧めである。実力派講師のビデオ授業(後にオンライン授業)に力を入れた「東進ハイスクール」の躍進と、大教室での対面授業が主体だった「代々木ゼミナール」の衰退は記憶に新しい。

パートタイム受講生も受け入れて、社会人が必要に応じて「インドネシア語」「LINUX」などを学ぶのも良い。「ホントは文学部に行きたかったんだけど、就職を考えて断念」した大人が「西洋美術史」やら「インド哲学」を学ぶのも楽しそうだ。

理系学部でも「1~2年次はWeb中心、3~4年次は実験・論文・制作」にすれば、低学年の生活コストが節約できる。「女性が喰える資格」の代表格である正看護師免許には最低でも3年間の課程が必要だが、これも「1~2年次はWeb、3年次は実習」で対応できると思う。

広大な敷地は不要だし、一度プログラムを制作すれば数年は使いまわしできるし、日本中(いや海外からも)から生徒を集めれば単位あたり授業料はかなり下がるだろう。いっそ、東京大学を拠点にe-東大でも始めれば、学歴ヒエラルキーへのインパクトも大きいだろう。

私の知人はオンラインで海外有名大のMBAを取得した。東京で仕事を続けながらの通学だったので総学費は「数百万」レベルだったそうで、バブル期かつMBA留学全盛期の「学費+生活費+休業(退職?)による収入途絶=数千万の資金準備」とは雲泥の差である。また、現在の転職市場では「働きながらオンラインMBA取得=セルフマネージメント力が高い」と判断されるそうで、その効果なのか有名外資系企業の管理職に転職している。

「都内の文系大学でサークルとバイトに明け暮れて、授業は代返、レポートはコピペ、試験は過去問とカンニング」という人材と「スーパーで契約社員として働きながらコツコツ単位を揃え、卒論は“労働法とブラック企業”」という人材、次の日本を託せる若者はどちらだろうか。

画像は放送大学Hpより

フリーランス麻酔科医

1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。某国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、2012年から、「ドクターX~外科医・大門未知子~」など医療ドラマの制作協力に携わる。近著に「フリーランス女医が教える 「名医」と「迷医」の見分け方」。

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筒井 冨美
フリーランス麻酔科医、医学博士

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