【M&Aインサイト】ホテル・旅館業界のM&A動向

2016年08月14日 06:00

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インバウンド需要で活況を迎えホテルの出店やリニューアルが増加

2008年のリーマンショックや11年の東日本大震災の影響から、長らく低迷が続いてきたホテル・旅館業界。ここにきて震災からの復興が進んだことに加え、景気の回復傾向を受け、再び活況を迎えている。国内観光需要の復調だけでなく、国策として取り組んできた海外誘致や円安傾向により、海外からの訪日外国人観光客が増大。「爆買い」という言葉が流行語大賞に選ばれるほど、観光業だけにとどまらない盛り上がりを見せている。

国内外の旅行者の宿泊需要は増大しているものの、施設数はホテルと旅館で状況が異なる。厚生労働省「衛生行政報告例」によると、14年度末のホテルの営業施設数は9,879軒で、2年前の9,796軒より83軒増加(0.8%増)した。東京、大阪、京都、またリゾート地では外資系高級ホテルの出店ラッシュが起きており、それに対抗するように国内資本ホテルも新規出店に加えて主力ホテルをリニューアルしている。急速に店舗網を拡大してきた宿泊特化型のビジネスホテルにおいても、一時出店を控えていたものの、近年のホテル市場の復調を受けて、アッパーミドルクラスを中心に出店を再度積極化させている。

その一方、施設数が圧倒的に多い旅館は41,899軒と、2年前の44,744軒より2,845軒減少(6.4%減)と減少傾向になっている。旅館の減少はホテルの増加を大幅に上回っており、ホテル・旅館を合わせた宿泊施設全体で見ると、施設数は減少傾向にあることが分かる。

宿泊は好調に推移しているものの、婚礼・宴会部門や飲食(レストラン)部門の回復は遅れている。宴会は企業のコスト削減や個人消費の節約対象となりやすく、また婚礼は婚姻数の減少に加えてゲストハウスウェディングなどとの競合により受注が減少していると見られている。このため、新規出店するホテルの大半は、宴会場やレストランを最低限に絞った宿泊部門主体の宿泊特化型ホテルとなっている。

リゾート地・温泉地などを中心にM&Aは活性化。売り手市場が続く

近年の市場動向から、ホテル・旅館を対象としたM&Aの動きは活発化しつつある。近年のホテル・旅館業界の中堅・中小企業におけるM&Aを分析すると、次のような3つの特徴が浮かび上がってきた。

1つ目はリゾート地および温泉地でのM&Aだ。特に訪日外国人に人気が高い北海道内や各温泉地でのM&Aが目立つ。経営不振の温泉宿をM&Aで譲り受け、事業を拡大させる事業会社も複数存在する。〈例〉鶴雅グループ、ホスピタリティオペレーションズ、ヒューリック、キョウデングループなど

2つ目は、経営不振に陥った地方のビジネスホテルを買収し、事業の拡大を進めるホテルチェーンである。地方の小資本ホテルのM&Aは、さらに活発化するだろう。〈例〉呉竹荘、ホテルマネージメントインターナショナルなど

3つ目は20年東京五輪開催を見据え、訪日外国人の取り込みを目指すブランドホテルがらみのM&Aで、今後も大都市圏を中心に活性化することが見込まれている。〈例〉オリエンタルランド、オリックス不動産など

このほか、異業種によるM&Aを活用したホテル事業の拡大も見逃せない。14年には鉄道会社の相鉄ホールディングスがJTBの100%子会社のサンルートホテル(国内63拠点)を買収。以降も、不動産大手のヒューリックが東京ディズニーリゾートのオフィシャルホテル「東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾート」を買収するなど複数の事例が見られる。

売り手市場かつ異業種からの買収希望もあることで、譲渡金額が他業界のM&Aに比べ自ずと高額になるケースが増えている。中堅・中小のホテル・旅館業にとっては設備投資が重い負担となることもあり、大手資本の傘下に入ることは未来を切り拓く成長戦略、生き残り戦略となり得る。そうした企業にとっては、今の売り手市場はM&Aのベストタイミングと言えるだろう。

M&A情報誌「SMART」より、 2016年4月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年8月12日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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