SEALDsが教えてくれたこと --- 渡部 真平

2016年08月19日 06:00

アメリカ海軍の特殊部隊を思わせるそのネーミング、洗練れた「カッコいい」ロゴマーク、洗練されたデザインのホームページやSNSによる発信……

『政治に無関心な若者がこうして立ち上がるほど、危険な法案が成立しようとしている』そのことを喧伝するには、SEALDsという動きは格好のものであった。

「ア・ベ・は・や・め・ろ!」「戦争法案絶対反対!」太鼓のリズムに合わせて(ラップというのでしょうか)叫ばれる彼らの主張は、日々の授業、試験、レポート、アルバイト等々に追われるわたしたち若者を動かしたのだろうか。

「政治に無関心である」と糾弾され、SEALDsから啓発していただいた立場である、目の前の日々の授業、試験、レポート、アルバイト等々に追われる大多数の若者は、政治が「分からない」と感じているようだ。しかし、「分からない」政治であっても、次のようなことは分かっているのではないだろうか。

賛否の分かれる政治問題が、ラップでは解決しない

格式ある立派な国会議事堂は、何のためにあるのか。

少なくとも、その「ハコ」に向かって、自らの主張を短絡的なことばでまとめたラップを浴びせるためにあるのではない。その「ハコ」の中で、国民から選挙によって選ばれた代理人たちが、(本来は)政治生命を懸けた「ことば」と「ことば」を戦わせる。これが論戦であり、「言論の府」のあり方であり、「国権の最高機関」たる所以である。

しかし、その「ハコ」の中では、自分のことばではなく、「憲法学者」の威を借る論陣を組み、挙句の果てには、国会中継のためのカメラに向かって「アベ政治を許さない」などのプラカードを掲げてはばからないコッカイギインたちの姿がある。

また、口にするのも恥ずかしくなるような、「セクハラ作戦」なるものも決行された。

「ハコ」の外と内、それぞれの愚かな動きが呼応して、その意味では、たしかに、国会は死んだ。アベ政権の“強行採決”によって死んだのではない。

政治を動かすのは「デモ」ではなく「選挙」である

紛れもなく、政治を動かす唯一の手段は、「選挙」である。「デモ」ではない。

(支持率が高ければ何をしてもいいというわけではない、ということを大前提として)発足以降、高い支持率を維持してきた安倍政権に対して、「アベ政治を許さない」「ア・ベ・は・や・め・ろ!」などの罵詈雑言を浴びせることが、共感を呼ぶはずがない。

そもそも、安倍政権が発足するまでの過程を振り返ってみると、悪夢のような民主党(当時)政権への不満は限界、そして、自民党が政権を奪還する総選挙の「前に」、安倍総理は自民党総裁に選出されている。「政治に無関心」な国民は、無残な辞任劇を経て再び自民党の総裁となった安倍晋三という政治家が、いずれ内閣総理大臣に指名されることを分かっていて、民主党政権に終止符を打ったのである。

これが「選挙」の結果であり、無論、「アベ政治を許さない」は響かない。響かないどころか、安倍総理の再登板を、選挙によって「許した」国民と、その選挙への冒とくともとれるのである。

このようなことを述べれば、「ヒトラーも選挙によって選ばれた」という文句とともに、「アベ=ヒトラー論」が出てくるが、時代背景、憲法、国柄、民族、民意などが大きく異なっている上に、ヒトラーという存在に、ほんとうに尊厳と生命を脅かされたすべての人々に失礼であるので、与しない。

もし、安倍政権が「暴走」を始めたならば、わたしたちは、信頼できる野党、対案の出せる野党に、「国権の最高機関」たる国会における、生命を懸けた論戦において、それを諫め、あるときには、「選挙」によって政権そのものを奪いとることを期待するのみなのである。

安全保障法案への反対を旗印に、SEALDsが世の中に問うたこと、「市民が政治に関わっていこう」という啓発は、空振りに終わった。

政治に無関心でいるようでいて、いざとなれば、選挙によってバランスをとる、選挙をたいせつにする国民が、SEALDsが起こした「うねり」など及ばぬほど、全国津々浦々、どっしりと構えているのである。

毎日の生活、生きることそのもの、朝起きて、学校や会社へ行き、人間関係に苦悩し、悩みの中で眠る、そしてまた同じような日々が始まる……そのような日々をもがき生きる(struggle)わたしたち国民だからこそ、政治がそれほど「スタイリッシュ」なものではないことを、語らずとも知っている。

そのようなことを、SEALDsが教えてくれた。

渡部 真平 愛媛大学教育学部3回生

※写真はSEALDs公式サイトより引用

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