【映画評】健さん

2016年08月22日 06:00

健さん2014年に他界した、日本が誇る名優・高倉健。生前は限られたインタビューしか受けなかったため、その素顔はほとんど知られていない。本作では、日本だけでなく海外でも活躍した高倉健とゆかりの人物の証言、身近な人々の言葉、家族が語る秘話を紹介。さらに貴重な映像を通して、日本映画界の希代のスター、高倉健の人生哲学と映画美学を明らかにしていく…。

ドキュメンタリー映画「健さん」の案内人は、中国映画「単騎、千里を走る。」で高倉健を案内したチューリンだ。日本、そして海外の俳優、監督たちの証言が数多く登場する。「ブラックレイン」で共演したマイケル・ダグラスは最初はまったく知らなかった健さんの強いプロ意識や演技に感激し、マーティン・スコセッシやジョン・ウーなどの監督たちもまた健さんと彼の映画に敬意を抱いている。中国では「君よ憤怒の河を渉れ」の大ヒットぶりから健さんの人気は知っていたが、韓国の俳優もまた健さんをリスペクトしていたとは。高倉健という俳優は、アジア映画の顔でもあったのだ。

だがCMで有名な「不器用な男」とは少し違う、人間性も見えてくるのが面白い。実妹が語る家族しか知りえない秘話や、かつて結婚していた江利チエミとの甘い私生活などからは、まるで少年のような健さんが目に浮かんでくる。最大の見所は、40年以上、健さんの付き人を務めた西村泰治さんが語るエピソードの数々だ。ほとんどが本作で初めて知ることばかりで、大スターの健さんがいかに温かい人柄だったかがにじんで魅力を感じる。

高倉健、本名、小田剛一。改めてその存在感の大きさを感じてしまう。高倉健の軌跡をたどることは、1960年代からの日本映画と日本の近代史をたどる旅路なのだ。60年代プログラム・ピクチャーの時代の映画愛、70年代の政治の季節だからこそ際立つ“古風なタイプ”の任侠精神。「漠然と生きる男ではなく、一生懸命な男を演じたい」。この言葉が胸に残る。

【70点】
(原題「健さん」)
(日本/日比遊一監督/高倉健、マイケル・ダグラス、ジョン・ウー、他)

(男気度:★★★★☆)


編集部より:この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年8月20日の記事を転載させていただきました(画像はアゴラ編集部で「健さん」映画ポスターより引用)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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