JAPAN革新継承基金がファンドではなく基金である理由

2016年08月22日 06:00

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一般的に、M&Aにおいて、いわゆる投資ファンドは、譲渡する側のオーナーから敬遠されやすい。買収した企業の価値を短期間に高め、数年後にその株式を売却して高い利回りを獲得する、そんなバイアウト・ファンドに対して、大切に育ててきた会社や従業員を知らない会社にモノのように転売されてしまうといった印象を持つからだ。

しかし、そのいわゆるファンドではなく、日本ならではの、そして日本でもこれまでになかった画期的な事業継承のためのM&A基金の在り方に挑戦しているのが「JAPAN革新継承基金」である。年金基金などの公共性の高い資金を「基金」として、日本の優れた中堅中小企業をM&Aし、短期的な売却ではなく長期の株式保有により、株主として積極的に企業成長を支援する。

その新しい取り組みについて、同基金を運用するACA革新基金運用の代表取締役社長・近藤 Nick 直樹氏、代表取締役・松井香氏にお話を伺った。

日本ならではの、
日本でもこれまでになかったM&A基金の在り方とは何か――
事業承継の第三の選択肢を作りたい

JAPAN革新継承基金立ち上げの背景や基金の特長について教えてください。

近藤氏:私たちは、元々、日興コーディアル証券グループで中堅中小企業へM&A投資を専門に行う部門におり、現在は住友商事が出資するACAグループでM&A基金運用を行うグループです。バイアウト・ファンドの黎明期からバイアウトを含むさまざまなM&A投資を手掛け、実際に企業に役員や時には経営陣としてかかわり会社の皆さんと共に企業の成長支援をしてきたのですが、その一方で、純粋に短期的なリターンを追及する現在の金融の在り方と、長期視野で成長を考える日本的な経営観はそぐわないと感じていました。その違和感から、目先の利益だけでなく、企業経営者のビジョンや社会的使命、歴史、従業員達——そういった日本的な経営において必要とされることを重視した、これまでにないファンドの在り方はないかと考えるようになりました。そこで、短期的な売却を前提とせず、長期保有による継続的な企業成長の実現をご支援し、基金の出資者へは運用益を長期間に渡る配当金でお返しするモデルのM&A基金としてJAPAN革新継承基金を設立したのです。

ファンドではなく「基金」という形態にしたのには、どのような意図が込められているのでしょうか。

近藤氏:今お話ししましたように、私たちの基金運用は株式の長期保有を基本としています。事業承継においては、従来は親族内承継、M&Aによる外部承継の2つが主な手法でしたが、新たに第三の選択肢として、私たち長期保有の事業継承基金による会社の預託という考え方を展開していきたい。会社のDNAや従来の経営方針を重視し、よいところは残して不足部分を補うようなイメージで会社を長期間預けていただく——そんな事業承継の選択肢を増やしたいと考えています。

ただ、これまでも私たちがお会いする際に「ファンド」と聞かれると、即座にハゲタカファンドのようなマイナスイメージを持たれる経営者も多く、本質的な話の前に忌避されてしまいます。そこで、出資者の基金を運用しているという意味ではファンドと同様なのですが、従来のファンドとは根本思想が異なり、資金に期限が存在せず永続する基金で、M&Aする企業のDNAや経営方針を継承することと、その企業をさらに成長させることとを目的に設立されており、その資金は日本企業と社会の健全な発展を願う日本の年金基金などが出資する新しいM&A基金であることを理解していただきやすいように、あえてファンドではなく「基金」というかたちにしました。

ポイントは永続的な成長ができるビジョンや土壌があるかどうか
短期的に企業価値が上がらなくとも
堅実に価値が上がっていく企業も投資対象に

基金の出資者のお金を預かり運用されますが、出資者から短期的なリターンを求められることはないのですか。

近藤氏:私たちは企業年金基金などから資金運用を依頼されています。年金ですので、ハイリスク・ハイリターンではなく、優良な企業に対する堅実で安定的な運用を求められます。特に、私たちが実現しようとしている日本企業にマッチした投資、M&A、企業成長支援、そしてその結果としての長期的なリターンを得るという運用方針については、強くご賛同いただいています。

長期保有だと、数年での売却を前提としたバイアウト・ファンドに比べて
投資対象の業績変動リスクが高くなりそうですが……。

松井氏:バイアウト・ファンドに比べると、企業選定の基準は厳しくなりました。今後ずっと経営に寄り添う立ち位置になりますので、永続的な企業成長ができるビジョンや土壌といった本質が会社にあるかどうかを見極めなければなりません。その点に関しては私たちもこれまで経営に携わってきましたので、経営者の目線で目利きするようにしています。

一方で、短期勝負のバイアウト・ファンドであれば対象にならない、短期的に企業価値が上がらなくとも堅実に価値が上がっていくような企業に投資させていただくことが可能です。その意味では、投資対象の間口は確実に広がりました。

今後の方針について教えてください。

近藤氏:ACAグループはアジア諸国への投資活動を数多く行ってきましたので、私たちは日本の中堅・中小企業と海外をつなぐご支援をしていきたい。以前、「自分は大阪弁をしゃべれるけれど、外国語ができないからビジネスチャンスをつかみきれない」とおっしゃった社長がいましたが、今は私たちと一緒に世界市場へ参入し飛躍しているところです。

また、相続対策として、後継者が育つまで創業家から一時的に株式を預かり、ご一緒に経営力も強化したうえで、数年後にもう一度創業家にお戻しさせていただく、そのようなリリーフ的な保有による後継者不在対策もできると考えています。

本日はありがとうございました。

お話:JAPAN革新継承基金(ACA革新基金運用)
代表取締役社長 近藤 Nick 直樹氏、 代表取締役 松井 香氏

M&A情報誌「SMART」より、2016年1月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年8月21日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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