巽 震二の国内株式TOBマーケットレビュー①

2016年08月26日 06:00

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こんにちは、マーケットアナリストの巽 震二(たつみ しんじ)です。
今回から四半期ごとに国内株式TOBマーケットレビューを連載させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

2016年第二四半期(4-6月)の国内株式TOBの概況

2016年第二四半期に公表された国内株式を対象とするTOBは11件でした。
直前四半期の公表件数は9件でしたので、2件の増加、前年同期の公表件数は10件でしたので、1件の増加となります。国内株式を対象とするTOBの件数は、おおむね横ばいで落ち着いた推移をたどっているといえるでしょう。

11件のうち、6件が親子上場会社における親会社が上場子会社に対して実施したもので、2件が持分法適用関係会社に対して実施したものでした。コーポレートガバナンスの強化の流れで親子上場の問題が指摘されて久しく、親子上場の解消に取り組む動きは着実に継続中と考えられます。

図表1  親子上場会社によるTOB

買付企業 対象企業 TOBプレミアム
富士通 ニフティ 46.4%
エヌ・ティ・ティ・データ エヌジェーケー 50.0%
大崎電気工業 大崎エンジニアリング 116.8%
ハウス食品グループ本社 ギャバン 20.5%
光通信 ウォーターダイレクト 2.4%
コロプラ エイティング 11.0%

(TOBプレミアムの数値は、TOBプレミアムデータベースhttps://maonline.jp/tob/2016より引用)

 

残り3件は、TOB以前に資本関係のない主体によるTOBで、うち2件はファンドによる買収、残り1件は同業他社による買収でした。
各事例のTOB発表時のプレスリリースによれば、いずれも、事業再生的なニュアンスの買収であるものとみられます。

2016年第2四半期のTOBプレミアムの動向

2016年第2四半期のTOB全11件のTOBプレミアムの平均は、34.68%でした。前年同期は40.0%、直前四半期は46.12%でしたので、やや低下しています。

低下の要因としては、市場全体の株価水準が高値を維持していることや、円高・資源安などから景気の頭打ち感が強まったことなどの影響から、TOBの買い手側が見込む将来業績予想とマーケット参加者のコンセンサスベースの将来業績予想の差が縮小し、その結果、TOBの買い手側が独自の業績予想に基づいてDCF法などにより算定した理論価格に基づく買取提示価格と実際の市場価格との乖離が縮小したことが大きいと考えられます。

また、連結グループ内のTOB取引全8件の平均は37.89%、その他のTOB3件の平均は25.4%でした。

前段で書きました通り、今四半期の連結グループ外のTOBはいずれも事業再生色が強かったことから、TOBプレミアムが相対的に小さく設定され、その結果全体の平均を押し下げていると評価できます。

今後のTOB市場予測

引き続き、グループ再編型のTOBは一定の取引量を維持するものと考えられます。
親子上場会社の子会社に注目です。

特に、連結グループ頂点の会社が比較的キャッシュリッチであったり、上場子会社の業績に頭打ち感が強く株価が割安であったり、上場子会社の大株主にいわゆるアクティヴィスト系の投資家がいたりする場合は、TOBの対象となる期待がより高いと考えられます。

プレミアムについては、為替や商品市況、現状の景況感からは、買収サイドの将来業績期待が市場のコンセンサスを大きく超えて強気化していくシナリオは当面難しいのではないでしょうか。
現在の水準程度での推移をメインシナリオとして考えたいと思います。

巽 震二のTOB注目銘柄

連結グループ会社の組織再編型TOBに引き続き注目したいと思います。
特に、総合商社は積極的に事業投資の見直しを行いますので、総合商社子会社などは期待できると思います。

図表2  注目したい総合商社子会社銘柄

親会社 上場子会社
8001 伊藤忠商事 8133 伊藤忠エネクス
4739 伊藤忠テクノソリューションズ
3754 エキサイト
9422 コネクシオ
8053 住友商事 9719 SCSK
3738 ティーガイア
8058 三菱商事 2003 日東富士製粉
2393 日本ケアサプライ
2892 日本食品化工
7895 中央化学
7451 三菱食品

(※筆者作成)

文:マーケットアナリスト 巽 震二

分析レポートのバックナンバーはこちらからどうぞ
2016年第1四半期TOBプレミアム分析レポート
2016年第2四半期TOBプレミアム分析レポート

巽 震二(たつみしんじ)プロフィール紹介
フリーランスマーケットアナリスト。
証券会社調査部勤務後、専業個人投資家に転身。
アベノミクスの波に乗って2015年、目標資産残高を達成し、トレーディングもめでたく卒業。
現在、フリーランスマーケットアナリストとして活動中。

アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年8月25日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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