キャリア教育が「貧困JK」を生んだ

2016年08月28日 13:13

自分のキャリアを考えたことのない人たちによるキャリア教育

人事コンサルタントの増沢隆太さんは「NHKで話題の「貧困JK」を生み出すキャリア教育の問題」で、キャリア教育の充実を訴えています。しかし、現場の教員からしてみると、キャリア教育を始めてから、アニメーターになりたい、声優になりたいという子どもが増えた気がします。

これは2003年に刊行された13歳のハローワークの影響もありました。編者の村上龍さんのいう、「自分の「やりたいこと」に合った仕事を見つけることがいちばん大事です」というメッセージじたいは否定するべきものではないですが、この本が全国の小中学校に配架されてあたかも仕事に対する絶対的な基準であるかのような印象を与えてしまったのが、そもそものボタンのかけちがいだった気がします。ここに仕事=自己実現という定式が不動の地位を占めるに至りました。

このような極端な考えに振れてしまったのは、そもそもキャリアについて考えたこともないように見える先生たちが、キャリアについて教えをたれているからです。だからどうしても無責任に「やりたいとこをやりなさい」と言ってしまうのです。いちばんやってはいけないパターンではないでしょうか。

20160404-300x180

キャリア教育は道徳教育

小学校で、キャリア教育といえば高学年から始まりますが、お金を稼いだことがない先生たちがいちばん最初に注目するのが商店街やスーパーです。わかりやすいから。ここに子どもたちと大挙しておしかけ、忙しい店員さんにインタビューします。子どもたちは、将来のお客さま候補ですので、丁重にあつかわれます。そして、店員さんたちは、「お客さまの笑顔を見るためにがんばってます」といった毒にも薬にもならない(でもそう言わざるを得ない)ことを教えてくれます。こんなことをおっしゃるのだから、実際に少なからぬ子どもたちは、利益度外視で自己実現のために営業活動していると勘違いしてしまいます。感想文で、「笑顔を見るのが自己実現なんだから、仕入れ値より安い値付けで売ってくれているはずだ」と勘違いしてしまう子どもも出ます。

 外部の人材を活用したいが

教育機関の人間は、初等中等教育の先生だけでなく、大学教授、教育委員会、文科省ふくめて世の中のしくみを知らない人が多いと思います。世の中の大多数は、民間企業に就職して、勤め上げる人、転職活動をしたことのある人、個人事業主や経営者の人などです。こういった方々を活用するのがいちばんいいと思うのですが、学校にゲストを呼ぶのは謝礼や手続きの面からもハードルが高いのです。(学校は教員の安くない給与は保証しますが、それ以外のコストはとにかくケチなのです。)それに先生方は、そのような人材がいるということすらも知らないのです。

先生にもキャリア教育がある

これは、子どものこない夏休み期間等におこなわれるのですが、これが企業からの評判がとにかく悪いのです。企業は善意で受け入れているのに、先生方はお客さま気分で、寝ていたり話をまったく聞いていなかったりと態度がとにかく酷いのです。おまけに会社のオフィスや受付だけ見て「企業って学校とちがって立派でいいのね」という誤った学習をしてきてしまう先生方がほんとうに多いのです。これならやらないほうがいいかもしれませんね。

はたして、学校におけるキャリア教育は、可能なのかというそもそも論になってしまいました。これでも学校はキャリア教育をつづけるべきなのでしょうか。それとも、進路塾や進路コンサルタントといった新しいビジネスに期待した方がいいのでしょうか。少なくともキャリア教育はじっさいに働いたことのある人に聞かないととんでもない方向に進んでしまうということだけは言えそうです。

井上晃宏さんが「貧困女子高生は貧困を訴えるだけで、何もしない」でおっしゃるように貧困子女が自分で貧困を克服するように努めることはとても大切です。けれども、現場の先生方が現実とは逆方向のバイアスをかけているということに、もっと意識的になるべきです。

中沢 良平(元小学校教諭)

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑