【ベネッセHD】通信教育依存脱却と進むM&Aによる多角化

2016年08月31日 06:00

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ベネッセホールディングス<9783>は「国内教育」「生活」「シニア・介護・保育」「語学・グローバル人材教育」「その他」と大きく分けて5部門、41の子会社および5社の関連会社(2015年3月時点)からなる企業グループだ。基幹事業は「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」など国内の教育部門で、売り上げの半分以上を占める。

1955年に福武書店として創業、69年には進研ゼミの前身となる高校生向けの通信教育講座を開始、72年に中学生向け、80年に小学生向け、88年には幼児向けと成長を遂げ、通信教育講座では不動の地位を築いてきた。

主力事業の不祥事

00年から12年頃までは、ベネッセの主力事業であった「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」などの通信講座は国内会員数400万人前後を行き来し、会員数は頭打ちとなっていく。少子化の影響もあるだろうが、塾などの開設に伴う教育市場の競争激化が大きな要因であろう。とはいえ通信教育部門において、規模では不動の地位を築いてきた同社であるが、14年7月のベネッセ個人情報流出事件の影響で大きな打撃を受け、翌15年4月には会員数271万人、16年4月には243万人と減少に歯止めがかかっていない状況になっている。

さらに16年5月の決算発表においては、14年6月にベネッセの会長兼社長に就任した原田泳幸氏が退任することを発表。15年10月に示された「2016-2020年度 中期経営計画」の実現を、代表取締役副社長の福原賢一氏に託す形となった。

事業の多角化

ベネッセが事業の多角化を図ったのは90年代に入ってから。当時、ベネッセの前身である福武書店は上場もしていない地方の企業だったが、93年にニューヨーク市場に上場する世界最大の語学学校、ベルリッツインターナショナルの買収で語学事業への進出を行った。同93年に妊娠・出産に関する情報を提供する雑誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」を創刊し、生活関連事業への進出を果たす。また00年には、介護事業を運営するベネッセケアを設立し介護関連事業へも進出、02年には関西で学習塾を展開するアップに出資して学習塾事業へも進出した。また、10年に譲渡しているが、05年には産業支援機構よりパソコンスクール運営の最大手アビバジャパンの営業権を一部譲り受けて、事業の多角化を推し進めてきた。

潤沢な資金を元手にし、ここ10年程度でM&Aに特に力を入れてきたのが、予備校や個別指導塾などの買収である。02年にアップに出資したことを皮切りに、06年6月には、首都圏を中心に個別指導塾を展開する「東京個別指導学院」の株式51.89%を127億円で買収、同10月には現役高校生向けの進学塾のお茶の水ゼミナールを約3億円にて買収、07年10月には明光ネットワークの株式を一部取得、09年には難関大学受験指導塾の「鉄緑会」事業を取得、14年11月には子供向け英語教室の運営を行うミネルヴァインテリジェンスを買収と、通信教育に代わる事業への投資を行ってきた。

さらに15年10月末に発表した中期経営計画では、少子化を見越して5年間で2000億円という過去最大規模の投資枠を設け、今後の成長を見込める分野へ積極的に投資を実施することを明言している。

一方で、既存の事業の進研ゼミにも改良を加えた。16年4月からサービスが開始になった「進研ゼミプラス」は、紙とタブレット端末を用いるものであり、地方学習塾と提携し、既存のビジネスに広がりを持たせようとしている。

ベネッセの行った主なM&A

年月 内容
1993.2 語学事業においてBerlitz International, Incを1株当たり19.5ドルにて約67%を取得
2000.1 低料金の高齢者介護施設を運営する「伸こう会」の株式51%を約20億円で買収し子会社化
2001.7 01年5月に公開買い付け(1株あたり16.5ドル)によりBerlitz International, Inc.(米国、現Berlitz Corporation=現連結子会社)の発行済み株式を約97.8%まで取得し、残りを株式交換により取得。100%子会社に
2003.12 介護サービス事業を行うためベネッセケア、伸こう会、ベネッセシニアスタイルを統合しベネッセスタイルケア(現連結子会社)を設立
2005.4 業績不振により産業支援機構に支援を申請した、アビバジャパンの事業(パソコン教育、ネットプロバイダー、衛星放送)を、ベネッセが95%出資するアビバが1円にて取得。(アビバは86億700万円の営業権を計上)
2006.6 公開買い付けにより東京個別指導学院の株式127億7200万円にて取得し持ち分比率51.89%にし子会社化
2006.10 首都圏を中心に予備校を運営するお茶の水ゼミナール(売り上げ8億7400万円)を3億円で子会社化
2007.10 純投資を目的に明光ネットワークジャパン株式を14.53%取得(10年4月に明光ネットワークが買い戻し)
2008.4 連結子会社でコンタクトセンターの企画・運営・コンサルティングを行うテレマーケティングジャパン(現TMJ)の株式の一部を、丸紅との連携強化のため44億6400万円にて譲渡
2009.4 連結子会社である東京教育研がアクティより難関大学受験指導専門塾「鉄緑会」事業を18億円にて取得
2010.3 高齢者介護施設を運営するボンセジュール(売り上げ43億7300万円)をジェイ・ウィルパートナーズより100%取得
2010.3 アビバの株式100%を1万円にてスリープグループへ譲渡(54億7200万円の貸付金及び未収利息については全額債権放棄)
2011.8 Berlitz Corporationがインターネットや電話を活用して語学教育サービスを展開するフランスのTelelangue(テレラング)SA株式100%を59億8300万円で取得し完全子会社化
2012.3 公開買い付けにより進学教育等を行うアップの株式73.06%を79億700万円にて取得
2012.3 40%出資を行っていた難関大学受験指導専門塾「鉄緑会」を運営する東京教育研の株式60%を41億5100万円で取得し完全子会社化
2013.7 TMJがITアウトソーシングサービスを行うバイオスを3億5500万円で取得
2013.10 Benesse Korea Co., Ltd.株式100%を韓国ヤクルトへ譲渡
2014.11 首都圏、関西圏を中心に約400教室(14年10月末)の子ども向け英語教室事業を行うミネルヴァインテリジェンス(売り上げ31億2400万円)の株式100%を13億5000万円で買収
2015.3 アップの株式10.26%を10億9200万円で取得し完全子会社化
2016.2 ベネッセグループのセキュリティー強化のため、ラックの株式1.87%を取得

売上高構成比

03年と06年の売上構成比を比較すると以下のようになる。

※03年は語学・グローバル事業関連にベルリッツの日本国内の事業が入っているが、16年では国内教育カンパニーに同事業が入っている。

現在のベネッセは国内教育カンパニー、海外事業開発カンパニー、介護・保育カンパニー、ベネッセUSAカンパニーの大きく分けて4部門からなる。03年と比べると、国内教育カンパニーが今でも売り上げの大半を占めるが、構成比は大きく変わっているように見て取れる。

特に、03年には4.7%とシェアの低かったシニア・介護関連の事業が、06年には21.4%と大きく売り上げに貢献し、ベネッセを支えていることが分かる。事実、15年対比で8.8%の伸びを見せていることから、今後さらなる強化が見込まれる。

また、新たに出てきた海外事業カンパニー部門は、15年対比で29.1%も伸び、一方で国内教育関連は比率を大きく下げている。

主力事業売り上げの伸び率

海外事業関連カンパニーの伸びは、中国における「一人っ子政策の緩和」によるところが大きい。日本国内では情報漏えいの影響を大きく引きずるも、海外ではグラフの通り大きな伸びを示している。

国内教育カンパニーにおいても、主力の通信教育である「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」は減少傾向にあるものの、学校向け教育に関しては昨年対比で3%の伸びを見せており、堅調なことが伺える。いまだに売り上げの大半を占める通信教育部門依存からの脱却は急務である。

自己資本比率の推移

ベネッセの自己資本比率は低下傾向にある。16年3月では37.7%となっている。長く減少傾向にあるものの、ある程度の自己資本比率は確保している。また、同業の学研ホールディングスの41.3%と比較しても大きな隔たりがないことから、問題は見受けられない。流動比率も51.2%であり、現金および預金に関しても918億円と、M&Aへの拠出は十分と考えられる。

16年3月での連結最終損益は82億円の赤字と、昨年の107億円から縮小はしている。来年の業績見通しでは赤字回避を目指すものの、国内教育で55億円の売上減とUSA部門で110億円の売り上げ減を見込んでいる。成長している海外事業と介護事業をさらに伸ばすことはもちろんだが、20年までの中期経営計画で目標に掲げる売上高6000億円(現在4441億円)まで伸ばすには、投資額として計上する2000億円の使い道が重要となろう。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年8月30日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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