M&A用語の歴史 その1

2016年09月03日 06:00

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ソフトバンクが英国ARMホールディングスを3.3兆円で買収と、久々に話題の大型M&Aが報じられた。いつもは企業買収(M&A)に無関心な人たちも今回は新聞やネットの記事に目を通したことだろう。

この機会にM&Aの用語を知りたいと興味を持った人たちに向けて、メガディールの多かった1980年代のアメリカの実例を引きながら紹介したいと思う。

1980年代アメリカのM&A

アメリカでは、過去に何度もM&Aブームが起こっている。1960年代は合併が主流のM&Aが盛んであった。そして次にブームとなったのが、1980年代の巨額な資金調達がもたらした案件の大型化と敵対的買収である。

図表1 1980年代の主な米国M&A

公表年 企業 スキーム 金額
1981年 デュポン/コノコ 買収 78億ドル
1984年 シェブロン/ガルフオイル 合併 133億ドル
1984年 テキサコ/ゲッティオイル 買収 101億ドル
1988年 コールバーグ・クラビス・ロバーツ/RJRナビスコ 買収(LBO) 245億ドル
1988年 フィリップ・モリス/クラフト 買収 131億ドル
1989年 スミスクライン・ベックマン/ビーチャムグループ 合併 160億ドル
1989年 ブリストル・マイヤーズ/スクイブ 合併 120億ドル

(筆者作成 金額は概算)

コールバーグ・クラビス・ロバーツ/RJRナビスコの買収に代表されるように、80年代後半のアメリカでは、LBO(レバレッジド・バイアウト)による企業の再編活動が極めて活発に行われていた。

LBOという手法は多額の借入金をすることが必要で、買収時に背負った借金がターゲットとなった会社に押し付けられる結果となる。

運悪くターゲットとなってしまった会社は事業に必要な投資ができなくなり、もっぱら借入金の返済と利払いに資金が吸い込まれていく。なかには買収後に会社を解体し、「バラ売り」して資金回収を図る投資家も出てきた。このため、LBOは少なからず社会的な批判を受けた。

このため、90年代に入って株式交換制度という、財務を傷めないで済む手法が制度として本格的に導入されると、LBOは買収手法の主役の座を降りてしまうことになる。

買収手法は変わっても、アメリカでは企業買収・企業統合は引きも切らずメディアを賑わせ続け、30年経たいま、日本もアメリカの後を追うように企業買収が行われている。

【M&A用語解説】

LBO(Leveraged Buyout;レバレッジド・バイアウト)

企業買収の際に、買収対象企業の資産を担保として、金融機関融資を受けるなどして買収資金を捻出する買収手法。
一般的にリスクが高い買収手法であるため、高金利であることが多い。レバレッジとはテコの意で、手元に資金がなくても大きな買収が可能となることからこの名前がついた。

TOB(Takeover Bid;株式公開買い付け)

大量の株式を短期間に取得するために、新聞公告などを行い、株式市場外で対象企業の株主から直接株式の買い付けを行うこと。
株式の買い集めについて対象企業の経営陣の了承を得ているかどうかにより、友好的TOBと敵対的TOBに分かれる。テンダー・オファー(Tender offer)ともいう。

(次回に続く)

文:株式会社ストライク 鈴木伸雄
編:M&A Online編集部

鈴木

鈴木 伸雄(すずき・のぶお)

株式会社ストライク 取締役副社長
1948年新潟県生まれ。
協和銀行(現りそな銀行)入行。シカゴ支店勤務時代にボルグワーナー、オーエンズイリノイ等、数多くの買収案件に携わる。
その後、協和フィナンシャルフューチャズ(シンガポール)社長、あさひ銀行シカゴ支店長、あさひ銀事業投資(現りそなキャピタル)取締役等を経て、2003年より現職。


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年9月2日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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