二面性のG20、その成果は?

岡本 裕明

G20が閉幕しました。名だたる国家元首が中国に集まり、議論を繰り広げたその声明にメディアの注目は集まります。議長の習近平国家主席は「世界経済は力強さを欠きリスクは依然大きい。G20首脳会議は各国が一緒に努力することで豊富な成果を得られた」と述べていますが、これなら私だって言える最も無害で平凡なステートメントとも言えます。

世界経済は力強さを欠き、目標の世界2%成長が達成しえない状況となっている中、「質の高いインフラ投資など『財政政策を機動的に実施する』と強調。為替安定の重要性にも言及した」(日経)とありますが、これもどの程度の実行力があるのか、疑念を持つ専門家も多いことかと思います。

もともとG20の首脳会議は2008年スタートでオバマ大統領の呼びかけであります。1999年より財務大臣、中央銀行レベルでのG20があったもののを拡大させたものです。両方のG20ともなぜか日本での開催は一度もないのですが、そろそろ順番が回ってくるのではないでしょうか?

このG20は参加国の経済レベル、経済、国家体制が様々であることから統一された力強いステートが出にくいとされています。ですので冒頭のような誰でも言えるような当たり障りのない声明しか出てこないともいえます。むしろ、このG20は経済の議論の場というより政治の場である意味合いが強い気がします。特に今回のG20では様々な二か国間会談が行われそれぞれの意見交換を通じて立場がより一層、見えやすくなったとも言えます。

米中の会談は特に注目でした。オバマ大統領が空港に着いた時点からタラップにレッドカーペットが準備されておらず、エアフォースワンに搭載しているタラップを使うというハプニングは意図的な嫌がらせではなかったのかとも噂されました。米中会談もCOP21の同時批准以外、双方の言い合いに終わっています。

プーチン大統領も国際会議でのアピアランスが少なくなっている中で一応、中国の肩を持つような発言もしていますが、今回は日ロの関係強化のほうが注目でいろいろな波紋を呼んだ気がします。特にオバマ大統領は日ロ接近に関して厳しいコメントを発していますが、これは数日前の私のブログにも指摘したようにアメリカは同盟国日本がロシアと仲良くしてもらっては困る、ついては妥協的北方領土解決案も困る、と暗に言っているようなものです。

これ以外にも様々な外交が繰り広げられたG20はコミュニケーションの場としての存在価値は高いと思います。特に国連の機能がこのところ不十分である中でその小型版でトップがトップ判断を下し、展開が早く、サクサク動く点では経済的議論の場というより政治的議論の場としての重みが増してきていると思われます。

一方、「トップの賞味期限」というのもあります。レイムダックどころかすでに半身がリタイア状態のオバマ大統領をはじめ、最近は声が聞こえなくなってきたドイツ メルケル首相やフランス オランド大統領、更には国内経済問題山積の上にやはり任期がちらちら見えてきた韓国の朴大統領の発言力は十分ではなくなっています。

これを考えると確かに毎年コロコロ変わっていた日本の首相は外交という点では最悪のパフォーマンスだったわけで安定した安倍政権だからこそ推し進められる外交政策と発言力は注目に値するといえるでしょう。また、先日訪日したサウジのサルマン副皇太子は31歳と若い上に自国内権力闘争で勝ち抜くチャンスがあり、将来の国王の可能性を秘めています。だからこその天皇陛下との会見であり首相主催の晩さん会が可能だったわけです。

安倍首相がこのところ異様なパワーで地球の隅から隅まで飛び回っているのはその外交的優位を利用して布陣を行う戦略といえます。少なくとも安倍首相のリオ五輪の閉幕式から今回のG20までの一連の外交は相当評価できると思います。

G20では経済的にパワフルな声明は出ないものと覚悟してよいでしょう。むしろ、二国間外交を通じた力関係を見るのには絶好の会議だということです。そういえば日本海のほうで花火が何発か上がったようです。金正恩氏もG20に招待状が欲しいのでしょうね。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 9月6日付より