会社を譲渡する場合、息子も退社すべき?

2016年09月09日 06:00

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Q:息子が会社にいたらM&Aはできない?

会社を社内にいる息子に継がせるのではなく、M&Aも視野に入れてよいかと考えるようになりました。私は長男を自分の後継者とすべく、5年前に入社させ育ててきました。息子は大手メーカーで武者修行をさせていたので技術力はあり、ある程度の役職にも据えました。しかし、親の目から見ても経営者としての覚悟や行動が伴っているようには感じず、従業員たちからの信頼もあまり得られていません。本人はこれまで「俺が跡を継がないならほかに誰がいる?」と申していましたが、腹を割って話したところ、本人の意向としては経営者よりも技術者として働いていきたいのが本音だったようです。

そこで質問です。もしM&Aで会社を譲渡する場合、創業者は退いて後継者に完全に譲るべきだと考えておりますが、息子も会社を去らねばならないのでしょうか?

(愛知県 自動車部品メーカー N・Tさん)

A:ご親族が在職していることはM&Aに影響を与えません

最近の傾向として、ご子息が会社内にいらっしゃるものの、会社をM&Aで譲渡したいというご相談が多数、寄せられています。今回のご相談のように、ご子息側から承継できないと言われるケースもあれば、父親である創業者から「息子に継がせないほうが息子や従業員のためだ」というお話を聞くこともあります。ご子息の側からすると、父親が会社を興し成長させてきたころとは時代が変わり、市場縮小・競争激化の環境でやっていける自信が持てなかったり、創業者である父親の苦労や苦悩を目の当たりにしてきたので重責に耐えられそうにないと感じたり……理由はさまざまです。

さて、M&Aで会社を譲渡する場合にご子息も会社を去るべきかというご質問ですが、ご子息を含め創業家のどなたかが在職していても、それがM&Aに影響を与えることはありません。なぜか親族も会社を去るべきと誤解される創業者の方が多いのですが、その必要はないのです。中堅・中小企業のM&Aは「人材」が大変重要な要素であり、買い手企業にとって、その人材が創業家の一人であるかどうかはあまり大きな意味を持たない、というのが率直な意見だと思われます。

以前、私がご支援したM&Aでも、譲渡後の会社に社長のご子息が残られたケースがありました。化学メーカーのM&Aで、ご子息は工業大学を卒業し、大手メーカーで修行された後に戻って来られ、研究者として活躍されていましたが、お父様である創業者社長がご子息に継ぐ意志があるか確認されたところ、「祖父の代からの会社で、親の期待や従業員たちのことを考えると、自分が継ぐしかないと思い込んでいた」とのこと。経営者には向かなかったようですが、非常に優秀な研究者であったため、M&Aの際には買い手側から「優秀な息子さんに残ってほしい」という条件が提示されたくらいでした。譲渡後は買い手グループの研究開発の責任者となられ、元気に研究に励まれているとのこと。後日、お父様である前社長も「息子を会社に縛り付けてしまっていた。息子のためにもM&Aをしてよかった」と話されていました。

一方で、あまり仕事をされていなかった奥様やご子息を役員から外された上で、会社を譲渡した企業もありました。いわく、買い手企業が息子の処遇に困るだろうから、譲渡する前に息子を説得した――とのことでした。

なお、ご子息が会社に残られた場合、その処遇については、基本的にはほかの従業員と同じ扱いになります。ご親族だからと言って、よくも悪くも特別扱いされることはありません。逆を言えば、ご子息だからと言って会社を去らなければならないということもないのです。少数精鋭の中小企業にとって、貴重な戦力が失われることは、買い手にとっても避けたいところです。

ポイント

  • 「親族が会社にいたらM&Aはできない」「会社を譲渡したら親族は会社を去るべき」というのは思い込みです。
  • 譲渡後、会社に残る親族の処遇はほかの従業員と同じ。ご本人の能力次第です。
  • 経営者がご親族(ご子息)を後継者にしたくとも、実はご本人は経営者になることを難しいと考えているケースも多くあります。その場合、急に後継者不在に陥る可能性もあるので、まずはご本人の意向を確かめておくことが重要です。
  • ご本人に会社を継ぐ意志があっても、主観的な意気込みだけでなく、会社を取り巻く環境や今後の市場動向などを鑑み、客観的にその覚悟の度合いを測ることが必要です。

M&A情報誌「SMART」より、2016年7月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年9月8日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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