やがて哀しき小学校英語 ―小学校英語必修化によせて―

2016年09月19日 11:39

2020年度に英語が小学校高学年で正式教科化

学習指導要領の改定に伴い、2020年度に英語が小学校高学年で正式教科になります。現状でも意識の高い(ほぼ全て?)の自治体で、低学年からの英語教育が行われて久しいです。

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毎日新聞の記事 小学英語 半数近く反対…教員、授業増を懸念 によると、

英語の正式教科化には半数近い45人が「反対」と答えた。「賛成」は29人、「どちらでもない」は26人だった。

反対理由で多かったのは教員の負担増だ。

と書かれています。これだけ読むと負担増を理由に反対するとはけしからんと思われるかもしれませんが、現状で小学校教師は週29コマの授業をさばいています。一週間の勤務時間が40時間ということを考えると、かなり無理なコマ数だということは、授業をしたことがある方ならわかると思います。もちろん、子どもたちもこれだけ長時間座らされていると、学級崩壊でもおこしたくなるはずです。

個人的には小学校から英語教育はやるべきだと思っています。けれども、教室での授業を見ているととても悲しくなってくるのです。

現在でも授業は混乱のうちに行われている

現在の小学校でも、5・6年生で週1コマは必修、自治体によってはすでに1年生から実施しています。私が勤めていたK市も、教育委員会の熱意で1年生から実施していました。

カリキュラム(教育過程)は学校の手作りです。忙しい中手探りで作られているため、1年生でも6年生でも同じように歌ったり、踊ったりしています。だから、思春期の高学年が「ハロー♪ハロー♪」と歌わされたり、踊らされたり、あまりにも簡単な日常会話をロールプレイさせられているのを見ていると、英語嫌いを生まないか心配になってきてしまいます。

さらにおかしな自主規制が働き、児童の負担にならないようにと、ライティングやリーディングは禁じられています。(これは本当に現場の自主規制です。)文科省の方がたが、自分たちがしゃべれないというコンプレックスを子どもたちに投影したのでしょうか。

さいきんは小中で連携を密にするということで、中学校の先生とお話しすることも多いです。そこで「アルファベットとローマ字くらい書けるようにしてから中学校に送ってほしい」と言われます。ぼくも練習させようと思うのですが、管理職や他の教員から「学習指導要領のどこにのっているんだ」と厳重に注意されます。(国語にアルファベットの単元はなくて、4年生で4コマくらいローマ字の時間があることを指しています。ちなみに小学校教員は、学習指導要領に書いてないことを教えることは、コンプライアンス上?相当の抵抗があるのです。)

ALTもいるけれど

ALT(アシスタント・ラングエッジ・ティーチャー)と呼ばれる外国人の先生も授業にいるのですが、彼らの多くは英語が母語なだけで、日本語が話せないことも多く、べつに教職経験があるわけではないので、外国語活動時、一時的に無法地帯になっている学級も見かけます。また、経費の関係上、派遣会社との契約によって派遣されてくるので、コンプライアンス上派遣会社にしか指示を出せません。そのため、ALTにその場で指示や提案ができないという状況になっています。もちろん、まれに日本語も流暢で、びっくりするくらい優秀なALTがくる場合もありますが、それはたんなる幸運です。

また、英語が授業に加わることによって、親御さんの英会話スクール熱が高まり、スクールに行っている子どもととALTとのやりとりが高度化する一方で、行っていない子どもはALTと目をそらしてさらに沈黙するという二極化の事態もあらわれてきています。

小学校英語を考えるとき、英語学習の必要性と、実際の小学校英語の現場での残念さとは、分けて考えなくてはならないと思いました。必修化により教育現場にさらなる混乱を生まないか祈るばかりです。

 

中沢 良平(元小学校教諭)

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