BREAK THE BORDER(垣根を壊せ)

2016年09月20日 18:40

企業は経営者の器以上には成長しないとよく言われますが、スポーツでも、球団経営はオーナーの器以上には成長しないと言えるのではないかと思います。

僕は米国で球団やリーグの経営者や幹部と話をすることが仕事の一部としてありますが、例えばCRMのベストプラクティスを調査していると、全く同じCRMソフトを使っていても、成功する球団と思い通りにうまく行かない球団がでてきます。これなどは、マネジメントの違いが経営の成果に違いを及ぼす端的な例だと思います。同じツールを使っても、社内の位置づけやマネジメントの違いで結果に大きく差が出るのです。

球団のオーナーシップルールの話をすると、NFLでは法人による球団保有が禁止されていますが(個人、あるいは投資家グループでしか保有できない)、これは法人が持つ組織目的と球団経営に利害相反が起こる可能性を排除するためです。球団を保有する企業と、球団経営に主従関係ができてしまうと、健全な球団経営が行えないと考えているためです。MLBも、法人保有は認めていますが、個人保有が奨励されていますし、実際に法人に保有されているのは、マリナーズやブレーブス、ブルージェイズなどごく僅かです。

例えば、オーナー企業の意向により、本来球団がやるべきことができないなどが、この利害相反に当たるところです。あるいは、オーナー企業の収益を伸ばすために、本来球団がやるべきでない仕事を行わざるを得なくなるケースもそうでしょう。

もちろん、法人が球団を保有することにより、逆にシナジーが生まれる可能性もあります。NBAやNHLなどはこちらを志向しており、オーナーにメディア企業が多いのはこれが理由でしょう。球団単体でできなかったことが、オーナー企業のサポートで可能になるケースです。

日本では、基本的に球団は法人に保有されているケースが大多数ですが、日本のスポーツビジネス界の歴史的発展経緯を考えると、これが必ずしもプラスに働かなかったケースが多かったようです。日本のプロスポーツをけん引してきたのはプロ野球ですが、1954年の国税庁通達により、球団の赤字は親会社の宣伝広告費として処理できるようになりました。

戦後の高度成長期で企業の業績が良かった時代は、球団を保有している企業にしてみれば球団経営で30億円の赤字が出ても、30億出してラジオや新聞、テレビで自社の名前が露出されればそれだけで良かったわけです。これは30億払って広告枠を買っている感覚に非常に近い。つまり、少し前の時代まで球団経営はMedia Buyingとほとんど同じだったわけです。

日本球界でも2004年の球界再編騒動を境に球団経営の近代化が急速に進み、後発リーグもプロ野球の悪い点や欧米スポーツリーグの進んだ経営施策を勉強しており、さすがに今では球団の顧客ときちんと向き合った経営を志向するようになってきていますが、球団を取り巻くビジネスには、過去の経緯を引きずったモデルがいまだに色濃く残っています。

例えば、球団経営の根幹とも言うべきチケット販売の業務はプレイガイドに丸投げしています。複数のプレイガイドやコンビニを販路に抱える現行モデルでは、販売情報をリアルタイムに把握することが難しく、球団のチケット販売計画の精度を上げたり、新たなテクノロジーを導入することを難しくしています。また、日本の個人情報保護法は世界一厳しく(基本的に情報取得者しか活用できない)、プレイガイドが取得した顧客情報を球団が活用できないという本末転倒な状況が起こっています。

スポンサーシップも広告代理店に強く依存しており、基本的には代理店が一度枠をすべて買い切り、代理店がリスクを負って企業に営業するケースが多いです。ただ、代理店には代理店の仕事の慣習や都合がありますので、それが必ずしも協賛企業の顧客満足度最大化につながらないケースがあります。

日本の広告代理店は、広告主とメディアをマッチングする媒体介在企業ですから、どうしても露出前提の対応になってしまいます。露出から包括的なアクティベーションに企業側のニーズがシフトする中、この代理店依存モデルでは柔軟な対応が難しくなってきています。

ビジネスで儲ける原則は、自分が胴元になってリスクを負うことですから、リスクを取らずに主な収益源を外注化してしまう今のプロスポーツのモデルでは、アップサイドはどうしても限定的になってしまいます。こうした過去の常識の元に立脚したビジネスモデルをどう変えていくかが、今後の日本スポーツ界の長期的なチャレンジになるでしょう。

さて、いよいよ今週木曜日(20日)に、新バスケットボールリーグ「Bリーグ」が開幕します。Bリーグでは、僕も顧問として関与させて頂いているのですが、まだまだ日本のバスケ界には伸びしろがあるため、守りに入るフェーズではなく、「BREAK THE BORDER」(垣根を壊せ)をスローガンに積極的に日本のスポーツ界にイノベーションを起こしていこうと経営幹部の皆さんと話しています。

今週末にこんなセミナーもやりますので、もしよかったら遊びに来てください!

B.LEAGUE”ビジネス”開幕!次世代スポビズモデルを探る ~Bリーグは何を壊し、何を創るのか?~


編集部より:この記事は、ニューヨーク在住のスポーツマーケティングコンサルタント、鈴木友也氏のブログ「スポーツビジネス from NY」2016年9月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はスポーツビジネス from NYをご覧ください。

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鈴木 友也
スポーツマーケティングコンサルタント

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