残業、カッコ悪い、と偉い人が言い出した時に読む話

2016年09月23日 16:20

今週のメルマガの前半部の紹介です。最近、「長時間残業は悪だから見直そう」というのが大流行ですね。安倍総理が長時間残業の抑制を働き方改革の目玉とする一方、小池都知事まで都職員の残業抑制を図るため一斉消灯などの対策をとるそうです。

筆者自身も残業の多い奴はただのバカとしか思ってないので喜ばしいことだとは思いますが、それにしてもなぜこのタイミングで残業抑制がトレンドになったんでしょうか?

そして、そもそもなぜ日本は“Karoshi”が英語になるくらい長時間残業の多い国だったんでしょうか?

キャリアを考える上でも重要な視点だと思いますので、今回はこれらを整理しておきましょう。

なぜ日本人は一杯残業しないといけないのか

理由は以下の3点です。

1. 終身雇用を守らないといけないから

これは筆者が常々言っている話ですが、日本は正規雇用の解雇が先進国中最も難しく、判例でも厳しく制限されているため、雇用者数で雇用調整出来ない→残業時間で雇用調整する、というシステムになっているためです。

具体的に言うと、年のうち3か月くらい「月100時間超の繁忙期がある職場」があったとします。もし残業時間に月45時間という上限があれば、会社は新しく人を雇って対応しないといけません。ただ、あくまでも一時的なものなので、暇になったら誰かがクビになるわけです。

「そんなのはイヤだ」と労組が言い、企業も熟練工(もう死語ですが…)を育てたいから長期雇用がいいやと考え、政府も三六協定に抜け道を作って後押しした結果、週に二日でも三日でも徹夜できて人を雇わずに済む現在のシステムが成立したわけです。別に経営がやらせてるわけではなくて、労使が一緒に作り上げてきた共同作品なわけです。

そういう背景をすっとばして誰かの都合で「残業だけやめさせろ」とやっても、終身雇用を見直さない限りはなかなか成果は上げられないでしょう。

と書くと「うちは中小企業だから終身雇用なんかないぞ」と思う人もいるかもしれませんが、こういうルールは大企業とかお役所を基準として作られているので仕方ないですね。要するに中小零細企業の人なんかはあるのかないのかわかんないような“終身雇用”のために青天井で残業させられてるわけです。はっきりいってなんの意味もないと思います。人生ドブに捨ててるようなもんです。筆者がよく「終身雇用なんて大企業と公務員以外にメリットないからさっさと潰せ」と言っているのはこういう事情です。

2. 担当業務の範囲が曖昧だから

さて、残業が多い理由2つ目は、日本企業では担当業務の切りわけが極めて曖昧で、効率化が図られにくいからです。

他国で一般的な職務給方式の場合、担当する業務に値札が付いていて範囲も明確ですから、ゴールも明確で裁量一つで効率化も図れます。一方、初任給から勤続年数に応じてちょこっとずつ上がっていく日本の職能給の場合、自身の裁量が振るえる余地はわずかです。
「早く終わっても帰りづらい」とか「早く終わらせてもどうせ仕事が降ってくるだけ」とか言う意見は、こうした事情を反映したものですね。

3. 時給で給料もらっているから

もう一つ、日本の残業が多い理由があります。意外と見逃されがちですが、実はこの3点目が非常に重要な意味を持ってたりします。それは「時給でもらっているから」です。

日本企業では東大卒のコンサルだろうが研究員だろうが、時給でばっちり管理され残業代も支給されます。ある程度のポジションに行けば年俸制や裁量労働制なんかも適用され始めますけど、一般の労働者は時給で管理されているので、労組もそちらに立って交渉するわけです。

ただ、ホワイトカラーの仕事は机に座っていた分だけ成果が上がるもんでもないので、一杯残業しても人件費の原資は横ばいなわけです。すると、どうなるか。単純に基本給とかが低く抑えられ、残業代に回されるわけですね。大雑把に言えば、月50万円貰ってる人に成果で支給しましょうかと聞いたら「イヤだ、時給で払ってくれ」というので基本給25万円にしてあとの25万円は残業代にまわすんでいくらでも残業してOKですよ100時間くらいすれば元取れるんじゃないですかね、みたいな感じです。朝三暮四のおサルさんみたいですね。

実際、同じような業種で同じくらいの規模の会社を比べてみると、残業代をばしっと払ってるA社の方が、サビ残だしまくりのB社より給与ベースが2段階くらい低いなんて話はよくありますね。

「我がA社は残業代100%支給の超ホワイト企業だ、ラッキー」なんて喜んでるんだけど、実際には月100時間以上残業しないとB社の給与水準に勝てないというバカも結構実在します。筆者からすればA社の方がブラック企業なんですが、まあ本人が幸せならそれでいいんでしょう。こういうシステムである以上、なかなか労働者の側からも効率化して残業時間を抑えようというインセンティブは湧いてきません。

とはいえ、時給で貰うメリットももちろんあります。それは「どんなバカでもとりあえず机に座ってればお給料がもらえる」というメリットです。で、労働組合も「成果じゃなく時給で払え」という立場に立ってきたわけです。そういう意味では、残業代というのは一種の既得権みたいなものですね。

以上の3点が、日本の残業が多い理由です。まとめると、終身雇用の看板を守るために、同僚と一丸となって部活の練習みたく働き、給料は働いた時間に応じて受け取る結果、世界に冠たる長時間労働の国が出来上がったわけです。

以降、
残業時間に上限つけたら何が起こるか
残業もサビ残も無くす方法

※詳細はメルマガにて(夜間飛行)


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2016年9月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。

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城 繁幸
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役

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