ベンチャーとIPO、そしてバイアウトによるイグジット③

2016年09月28日 06:00

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自らのベンチャー起業家になりたいという思いを出発点に、IPOを目指す起業家のサポートをする日本でも有数の法律事務所を設立・運営するフォーサイト総合法律事務所代表パートナー大村健弁護士。大村氏はIPOも増加する一方で、バイアウトによるイグジットも増えているという。最近のベンチャー事情を聞いた。

――今後、IPOは増えていくのでしょうか

一昨年が77社、昨年が92社。今年は最終的に100社弱に収まると言われています(いずれの数字もTOKYO PRO Marketは除く)。残念ながら、かつてのように年間200社も上場するといった状況は訪れないでしょう。というのは、IPOに際して証券会社が主幹事を引き受けるキャパシティーに限りがあるからです。以前のように、どの証券会社でも主幹事を引き受けるという時代は終わり、主幹事をできる証券会社は限られてきました。現状で証券会社が主幹事として上場を手掛けられる限界値が年間100社程度だといわれています。

ただ、年間100社が上場するということは、その予備軍は常に200~300社はいると見るべきでしょう。上場が狭き門となれば、途中でIPOをあきらめ、バイアウトに切り替える企業も出てくるはずです。実際、シリコンバレーでは、20年ほど前からIPOの減少が起こり始め、代わってバイアウトが増えていきました。日本のベンチャー市場はシリコンバレーより15~25年遅れているといわれているので、日本でも、今後はバイアウトが増えていくと予想されています。

買い手は大手IT企業が最右翼です。IT企業は少人数で大きな売り上げをつくれる可能性があるので、市場の期待も非常に大きなものになります。たとえば通常の不動産会社はPER(株価収益率)が10倍程度なのに対して、IT企業なら50倍ということもあり得ます。仮に1億円の最終利益が出れば不動産会社の時価総額は10億円、IT企業なら50億円。そのくらい化け方が違うので、IT会社はけた違いに資金力があります。そのために不動産×ITみたいな会社も出てくるわけですし、大手IT企業が、IPOを目指すような新しいビジネスを手掛けている会社を見つけると、「うちのグループに入って新規事業としてやりませんか?」といった具合に声を掛けるわけです。

懸念材料は、ここ数年一種のIPOバブルが続き、バリュエーション(企業価値評価)が膨らんでいることです。その結果、売り上げがほとんど上げらておらず、利益も出ていないのに100億円のバリュエーション(企業価値評価)が付くような企業が出てきてしまうわけです。すると大量の資金を投資した株主たちは、100億円以上でなければ売らないということになりますが、高すぎれば売れません。現在、この問題がバイアウトを妨げています。

一方、ベンチャー企業経営者にとってもバイアウトは魅力的です。仮にIPOをすれば、新たなスタート台に立ったことになり、さらに死にもの狂いで経営していかなければなりません。また、持ち株のせいぜい数パーセントしか売ることはできないので、手にするお金も限られます。それに対してバイアウトなら経営から解放されるし、一気に大金が入ってきます。本音ではバイアウトに魅力を感じる経営者は少なくないはずです。ただ、個人的にはこれからも「社会を変えたい」「そのためは上場するしかない」とエネルギーを持って突っ走る経営者を、こちらも熱意を持って応援していきたいですね。(完)

まとめ:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年9月26日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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