【M&Aインサイト】ヤマダ電機の企業力分析

2016年10月02日 06:00

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今回は、家電大手のヤマダ電機<9831>を取り上げた。実店舗で商品を確認してからネット通販で購入される方も多いと聞く。売上高1兆6000億円を超える巨大企業ヤマダ電機はこの危機を乗り切っているのだろうか。

2007~16年3月期の10年間を分析してみた。
やまだ1
今回は7つのグラフと売上高の推移を使い、同社に何が起こっているか推察してみる。企業力総合評価が直近、反転したが、長く悪化トレンドだった。各親指標を見てみると、安全性以外は青信号領域内を明確な悪化トレンドで、悪化に対する危機感は希薄であったと思われる。
やまだ2
営業効率(もうかるか指標)、資本効率(資本の利用度)は、15年に赤信号に近付き、16年反転した。「間に合った!」という感じだ。
やまだ3
生産効率(人の活用度)は、直近3年は下げ止まったものの、ほぼ反転することなく悪化している。生産効率は、主に売り上げと従業員数の関係であるから、従業員数が過剰になってきていると思われる。11年までは増収ですから、売上高の増加以上に従業員が増え、それ以降は概ね減収であるから、減収以上に従業員は減らさなかったのだろう。

資産効率(資産の利用度)も激しく悪化している。増収よりも総資産が増加し、減収になっても総資産が減らないなど水ぶくれが起きている。守りに注力しなければならない時に攻め続けると起こる現象だ。
やまだ4
流動性(短期資金繰り)は、14年まで悪化トレンドだったが反転した。安全性(長期資金繰り)は比較的安定している。営業効率が青信号領域であるため、利益剰余金が増えているのではないだろうか。
やまだ5
いかがだろうか。10年間という長い期間の企業力総合評価、親指標、売上高の推移を縦覧すると、ヤマダ電機の進んできた大まかな流れと、問題点が自然とイメージできたのではないだろうか。

増収を狙い、攻めの経営をすれば、従業員増加、資産増加になる。実際、そうなっている。グラフから読むことで、生産効率はどうなっているか、資産効率はどうかなど、通常気付きにくい指標を捉えることができるし、それが悪化の先行指標であることに気付く。

あなたは、攻めの経営とは具体的に何をしたのかについて気になっただろうか。後述する。

生産効率の各下位指標を見てみよう。
やまだ最後
数字を横に読む。

従業員数は07年と16年の比較では、13825人から29402人であるので、倍以上増加しているが、売上高は1兆4436億円から1兆6127億円とさほど増加していない。そのため1人当たり売上高は1億442万円から5485万円と半減している。あなたは1人当たり売上高から、どの時期に、この指標の悪化に危機感を持つだろうか。多くの人は12年と答えるのではないだろうか。左の生産効率の親指標の赤丸がこれに該当する。グラフの悪化の形状も危機感を適確に表していることが分かるろう。数字を横に読むことによって、数字の変動をいつ、どう評価すべきかが分かる。

店舗数は698店(12年)→972店→985店→1016店→947店(16年)と推移している。15年までは拡大・攻めの一途で、これが資産効率悪化の原因だ。16年に不採算店の撤退などに着手した。それが功を奏して営業効率改善に向かったわけだが、12年の生産効率に気付いていれば営業効率の青丸も悪化することはなかっただろう。12年から16年の4年の時間の経過は気付きの遅さいうことだろう。

財務分析はたくさんあり過ぎて重要指標を見逃してしまうリスクがある。

天才棋士が瞬時に勝てる手を思い付くのは、どうでもよい手を捨ててしまい、重要な局面のみを選択し、深く考えるからであり、決して全ての手を考えて選択しているわけではないそうだ。

重要な局面を抽出するには、イメージでズバッと把握することが有効なのだ。

まとめ

ヤマダ電機は16年から、改善の一歩を踏み出した。しかし、それより4年前の12年の段階の生産効率は悪化のグラフで、厳しい未来を予測できていた。

文:株式会社SPLENDID21 代表取締役社長 山本純子


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年9月29日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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