【法人税】組織再編税制のおはなし①継続保有見込要件とは?

2016年10月06日 06:00

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【法人税】組織再編税制のおはなし(1)継続保有見込要件とは?

今日は、法人税の組織再編税制の話です。

組織再編税制は、合併 (会社と会社がくっつく)、会社分割 (会社の一部事業部門を分離する)、株式交換 (A社がB社を完全子会社とし、B社株主にA社株式を交付する)、株式移転 (甲社と乙社が存在する場合に、親会社である丙社を新設し甲社と乙社を完全子会社とする。甲社と乙社の株主に新設弊社の株式を交付する)などが規定されています。

平成11年に当時の商法によって株式交換と株式移転が導入されるとともに株式交換と株式移転に関する税制も定められました。

その後、平成13年に後追いのかたちで、組織再編税制が制度化されました。(それ以前の組織再編税制は実務上、かなり曖昧な取り扱いでした。)

さらに平成18年に組織再編税制の大幅な見直しが行われ、株式交換・株式移転についても、単なる課税の繰延から組織再編税制への組み込みが行われました。

実務上、この平成18年の税制改正はかなりインパクトがあり、それまでの「上場企業が行う株式交換による企業買収」がパタリと無くなってしまいました。(個人的には、株式交換・株式移転については過去の税制が復活すれば、企業の組織再編も活発になると思うのですが。特に事業後継者が不在の中小企業も救えるチャンスが広がるはずです。)

組織再編税制の適格要件

まず、組織再編税制の判定は、完全支配関係50%超支配関係共同事業関係の3つに大別されます。

そして、この3つのそれぞれにおいて細かい適格要件を検討することになります。

例えば、共同事業要件の適格要件は
① 事業の関連性があること
② (イ)事業規模(売上、従業員、資本金等)が概ね5倍以内
又は
(ロ)特定役員への就任(株式交換・株式移転の場合は完全子法人の特定役員の継続)
③ 事業継続要件
移転対価である株式の継続保有(株主)
完全親子関係の継続(株式交換・株式移のみ)
などとなります。今回の記事は④(あるいは⑤)の継続保有要件について述べます。

合併・共同事業要件・株式継続保有要件の条文は法人税法施行令4条の3④五で定められています。

要するに、「被合併法人(消滅会社)の株主のうち、合併により交付を受ける株式の全部を「継続して保有することが見込まれている」者の所有株式の総数が被合併法人の株式総数の8割以上であること」ということですね。

もう少しやさしく説明すると、「被合併法人(消滅会社)の株主のうち、新株式を1株たりとも売る気がない(継続保有見込)人が持っている株式の割合が8割以上」ということになります。

組織再編税制の適格・非適格の判定の特徴として「見込」という言葉が何か所も出てきますが、これ、実務では結構大事です。

「継続保有要件」や「継続支配要件」などで実務上、論点となる事項の代表的なものは「継続して保有することが見込まれる」の定義です。

この場合の「継続して保有することが見込まれる」は文字通りです。判定時期は、その組織再編の時期です。

組織再編税制の適格・非適格の判定

では、実務上、どんなケースが論点となるでしょうか。極端な例を出してみます。

■判定の事例

ケース1:
被合併法人Bの株主甲は、合併法人Aの株式を取得するが、合併時点では、新株式Aをすべて保有する見込みだった。しかし、その後、突然、お金が必要となり、結果的に新株式Aを第三者に譲渡することとなった。

ケース2:
被合併法人Bの株主甲は、合併法人Aの株式を取得するが、合併時点で、新株式Aを外部に売却すべく、仲介業者に売却の依頼をかけていた。しかし、結果的には、新株式Aの売却には至らず、既に何年も継続保有する結果となった。

■判定結果

ケース1の場合は、結果的に継続保有はしていないけれど、少なくとも合併時には継続保有の見込みでした。
ケース2の場合は、結果的に継続保有しているけれど、少なくとも合併時には継続保有はしない見込みでした。
ですから、1は「継続して保有することが見込まれる」に該当し、2は「継続して保有することが見込まれる」には該当しないこととなります。
あくまでも、税制の方針は「見込み」でしか縛りがありません。もちろん、「見込み」は嘘ではいけません。その時点の真実である必要があります。

■判定理由

なぜ「見込み」とせざるを得ないかというと、現状では、未来のことまでは確実な予見技術がないからです。
もしもそのような条件を付すとするならば「タイムマシン」あるいは未来を確実に予測する技術が必要です。

ですから、未上場企業などの適格合併で被合併法人の株主が複数いる場合は、それぞれの株主に継続保有の見込みがあるかどうかの確認をする必要があります。

税制適格に持ち込みたく、かつ、後々、税務調査が入った場合のトラブルを避けるためには「継続保有見込申出書」(定まった形式の文書ではありません)などを作成することをオススメします。真実の継続保有見込の意思を表す文書が存在すれば、国税側は否定できませんからね。(もちろん、虚偽の文書はダメですよ)

なお、上記のケース1のように、あくまでも組織再編時において「継続保有の見込み」が必要なのであって、結果的に環境の変化で継続保有できなった場合でも、「継続保有要件」は満たされます。

逆に、結果的に継続保有していても、組織再編時において、株式上場の主幹事契約を締結していたり、M&Aの仲介業者と仲介契約を締結しているようなケースでは「継続保有見込」は満たさない、あるいは”疑義有り”となるかも知れないのでご注意くださいね。

「見込み」は大事

この「見込み」の考え方は、他の項目についても同様です。
例えば(法人税法施行令4条の3④三)では、従業員引継見込要件があります。

これも条文を読んだ通り、「合併時の見込み」であり、結果は関係ないのです。(実務上はそれらの結果も考慮されるでしょうが、法文上は関係ないこととなります)

ですから、例えば、「合併時は8割以上の従業者を引き継いで従事させる見込みだったんだけれども、結果的に事業がうまくいかなくなり、リストラせざるを得なくなった」とか、「合併時は8割以上の従業者を引き継いで従事させる見込みだったんだけれども、本人達が自分の意思で辞めてしまった」などのケースは、あくまでも「見込」要件は満たしていることになります。

前者のケースは会社が倒産するかしないかのギリギリの判断でやむを得ませんし、後者のケースは日本国憲法 22条で職業選択の自由が守られている以上、本人の意思を会社がどうこうすることもできませんからね。

組織再編の条文の適用に当たっては「見込」という文言がたくさん出てきますので、実際の適用場面では、ひとつひとつ丁寧に検討することが大切です。

また、実際に組織再編の適格・非適格の判定に当たっては、特に大きな案件を行うに当たっては、条文原文を確認することをオススメします。実質判定の前に、形式判定(条文に合っていない)なんて状態になればシャレにならない結果になってしまいます。

税務は青天井(上限無し)なので、案件によっては、数百万円、数千万円、数億円以上の損失に繋がることもあります。

条文を読んで事実に当てはめるのはそれなりにしんどい作業です。全体像を把握しながら、細かい文言やカッコ書きにも注意が必要です。しかし法律である以上、やはり確認は必要です。毎年のように改正もありますしね。

(参考URL)

国税庁HP
分割後に分割承継法人が上場する場合の株式継続保有要件について
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/33/06.htm

共同事業要件の場合の株式継続保有要件について
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/33/07.htm

関連条文
法人税法 第二条(定義)
法人税法施行令 第四条の三 (適格組織再編成における株式の保有関係等)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40SE097.html

まとめ:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年10月5日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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