ロシアが安倍首相に「期待」していることの意味

2016年10月06日 06:00

日本では北方領土問題に「進展」が見られそうだということでメディアが盛り上がっているようだが、ロシアのメディアの論調とは明白な温度差がある。

例えば、今月2日に出されたこの記事においては、以下のような記述が見られる。

О возможных очертаниях новой позиции Токио 23 сентября сообщила одна из самых авторитетных и осведомленных японских газет «Иомиури». По данным ее источников, правительство Абэ в качестве крайней уступки ради достижения прорыва на переговорах с Москвой готово согласиться на подписание мирного договора при условии реального получения только Шикотана и Хабомаи. При этом Токио якобы не будет отказываться от своих претензий на наиболее населенные и экономически развитые Итуруп и Кунашир. Там предполагается установить режим свободного въезда для японцев, наладить систему совместной хозяйственной деятельности. При ее развитии, приводит газета мнение своих источников в правительстве, в конечном итоге когда-нибудь создадутся условия для передачи Японии и этих островов.

 

Достоверность таких сведений мне сразу опровергли в японском МИДе. «Публикация не соответствует действительности, — заявил его представитель. — Правительство Японии в соответствии со своим прежним курсом будет вести с Россией упорные переговоры, направленные на решение вопроса о принадлежности всех четырех островов». В переводе на нормальный язык это означает: мы требуем все Южные Курилы и на меньшее не согласны.

簡単に要約すると、

『日本で最も権威ある新聞の一つである「読売新聞」によれば、安倍首相は色丹及び歯舞の二島を名実ともに返還することを確約するという条件のみで平和条約を締結する用意があるとのことだが、この報道の信頼性は実に疑わしい。というのも、日本側の出している文章を普通の言葉に翻訳すれば、「我々はあくまで四島全ての返還を要求する、それ以下は認めない」という意味だからだ。』

という趣旨である。つまり、ロシア側は日本側の意図も戦術も全て見透かしているし、十分警戒している。彼らが模索しているのは一貫して「色丹・歯舞」という、誰も住めないし価値も少ない二島で決着する手段であり、安倍首相が「他の保守的な政治家」とは違ってこの条件をのむかもしれないということを期待しているのである。

逆に言えば、ロシア側は初めから(見返りに開発投資が得られる前提で)仮に日本側に譲歩するにしても二島返還で決着をつけることを望んでいるのであり、それが実現しなかったのは日本があくまで四島返還に拘って(経済協力を渋って)きたからだ、と理解しているということだ。

私は日本の保守層がこれまでロシアに対して何を望んできたのかを知らないが、もし経済協力と引き換えの「二島返還」というプーチン流の「引き分け」が外交的成果として喜べるのであれば、それはロシアのメディアが言う通り鈴木宗男氏でもできたことだろう。

だが、あくまで「四島返還」に向けての交渉が「始まった」という前提で喜んでいるのなら、それはとんだ見当違いである。ロシアは四島全部を返還する気はさらさらないし、択捉及び国後島にはロシア人が既に住み着いているのでより慎重にならざるを得ない。それは露外務省ザハロワ氏の発言からも明らかだろう。

もし従来の保守政治家には見られなかった「柔軟性」を示す安倍首相にロシア側が「期待」していることを以って、北方領土問題が「前進」したと保守層が考えているのであれば、私としては安倍首相の人望の厚さ及び国内における人心掌握の巧みさに恐れ入るばかりである。

無論、こうして北方領土問題が「解決」すること自体は日本にとって良いことかもしれないし、平和条約の締結に繋がれば安倍首相は歴史的成果を上げたことになるに相違ない。だがそれは北方領土全部返還の達成という形ではなく、その大部分を体良く諦めさせられることで終わるのであるとすれば、安倍首相の成果は外交的成功というよりは国内の右派の不満を抑えることに成功したという点にこそ存すると言うべきだ。

だが、現行憲法下でこの問題を「解決」しようとするならば、これ以外の解決法は事実上無いに等しいだろう。その意味ではこの「解決」はやはり安倍首相にしかできないし、もし本当にこれが今すぐ「解決」すべき問題なのであればこのタイミングで解決してしまうのも素晴らしい成果であるかもしれない。

いずれにせよ、会談の詳細が明らかにならない以上はこれ以上は何も言えない。

ただ、プーチンがロシアの世論よりも柔軟であるというのは考えにくいとはいえ、もし本当に「四島返還への可能性を残しつつ二島返還」を未来に禍根を残すような条件をのむことなく実現できたとするならば、そこまでの譲歩を引き出した安倍首相は戦後史上最も偉大な大宰相と言えるだろう。

だがそんな奇跡は安倍首相の力を以ってしても起こらないとすれば、ぬか喜びする前にロシア側の提案に十分警戒すべきだと思われる。

その上で、安倍首相が得た成果を冷静に受け止めるべきだ。賄賂などの露骨な不正でもない限り、間違っても安倍首相個人を批判したり最悪「売国奴」扱いしたりして世論が冷静さを失うようなことだけはあってはならない。結果がどう出ようと、それが今の日本の政治に出来る外交の限界であるという事実を真摯に受け止め、国内改革を進める方向に議論が進むことを願いたい。

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