「エネルギー自立」― 過疎自治体が生き残るための活路 --- 高橋 淳志

2016年10月08日 06:00

今日本全国の自治体の政策担当者が頭を抱えている問題といえば、過疎化や少子高齢化でしょう。
都市への人口流出は、東京の郊外ですら起きています。私が聞いた話では、都心回帰が進み、多摩ニュータウンでは駅から10分以上離れている古い集合住宅で空き家が増えているといいます。

ではどうすれば人々を地域に繋ぎ止めておけるのでしょうか? 都心よりも魅力的だと感じてもらい、住み続けてもらうためには何が必要でしょうか?

一つの解決策として提案出来るのが、エネルギーの使い方を変えることによって、お金の流れを変えることです。
そして地域内のエネルギー需要を100%地域内でのエネルギー供給で賄う。この「エネルギー自立」の究極の目標です。

日本のエネルギーの80%以上は化石燃料でつくられています。
それらは地域や自治体にとって、ほとんど全て地域外から買っているものです。
そのようにガソリンや電気としてお金が地域外に流れる仕組みを辞め、省エネと地域内でのエネルギー生産によって、お金を地域で循環させる仕組みを取り入れることが解決策になり得ます。

ジャーナリストの村上敦は、著書の中で「エネルギー支出による富の流出」が、地方自治体にとって大きな影響があることを指摘しています。3万人規模の自治体の電力による富の流出は年間およそ20から25億円程度で、ガソリンによる富の流出も年間およそ20から25億円程度と推定しています。私の父の出身地である秋田県湯沢市は、人口が約3万人いて年間予算は約450億円です。予算の1割の額が毎年地域外に流出していて、それを止める手段があるのだとしたら、やらない手はないですよね。

地域がエネルギーを自ら生産することによって、自立に近づくことを後押しする制度も出来ました。再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度(フィード・イン・タリフ:FIT)」です。これは補助金の一種で、再生可能エネルギーによって生産した電力を、20年間電力会社が買い取る義務を課した制度です。

2012年に「FIT」が導入されたことによって、国内ではリードタイム(計画着工から営業開始までの時間)の短い太陽光発電導入量が飛躍的に伸びました。

しかしそれらのプロジェクトの中には、地域住民との関係が希薄で、地域には固定資産税しか落ちないようなプロジェクトも少なくありません。このようなプロジェクトは「植民地型」と呼ぶことが出来、従来の発電所運営となんら変わりがありません。

それに対するのが、「世界風力エネルギー協会」が考案し、日本では「環境エネルギー政策研究所(ISEP)」が提唱している「コミュニティ・パワーの三原則」です。

「地域の利害関係者がプロジェクトの大半もしくはすべてを所有している」
「プロジェクトの意思決定はコミュニティに基礎をおく組織によって行われる」
「社会的・経済的便益の多数もしくはすべては地域に分配される」

の三つの原則のうち二つ以上を満たすプロジェクトを、彼らは「コミュニティ・パワー」と呼んでいます。

私がボランティアで手伝っている「八王子協同エネルギー(はちエネ)」も、このようなコミュニティ・パワーの取り組みと呼べます。

「はちエネ」は市内に太陽光発電所を三か所設置しています。設置費用などは全て市民から出資によって賄い、売電収入を用いて出資者に返します。発電した電気は、東京電力ではなくPPS(新電力)である「みんな電力」に売電しています。

運営者の方々は、「東電に代わる選択肢をつくりたい」という思いで事業を始めたと言います。それが結果的に地域に投資先をつくり、地域でお金を還流させる事業になりました。現在は太陽光発電以外の手段での地産地消のエネルギーの開発や、省エネルギーの取り組みを進めています。

このようにエネルギーの流れを変えることは、お金の流れを変え、地域の持続性にも貢献します。地域および自治体が打てる策として、「エネルギー自立」はとても魅力的です。

高橋淳志
早稲田大学政治経済学部学生

※アイキャッチ画像は「八王子協同エネルギー」サイトより(編集部)

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