主要国の中銀、緩和策からの脱却を開始か

2016年10月10日 07:30

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バロンズ誌、今週のカバーは地球や社会に優しいポートフォリオを組む投資信託ランキング200を取り上げる。上位50位は、9月末までの1年間でS&P500の15.4%を上回るリターンを達成。環境・社会・ガバナンス(ESG)に考慮した投資で高いパフォーマンスを遂げたリストのうち1位は Transamerica Large Cap Value(TWQAX)で、9月までの1年間のリターンは23.3%、資産は20億7700万ドルとなる。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は中央銀行の政策が経済や雇用に限定的な影響しか与えなかったと批判する。抄訳は、以下の通り。

真に恐ろしきピエロは、中央銀行——The Truly Scary Clowns: Central Bankers.

金融危機から8年を経て、金融政策は漸く危機モードから脱しつつある。中央銀行はゼロ金利を含む超低金利政策を編み出し、資産買入策を用いて魔法のようにドル、円、ユーロ、ポンドを押し下げてきた。金を創り上げようとした中世の錬金術師のごとく、中央銀行は政策を講じてきたと言える。

しかし中銀が紙幣を印刷するというトリックを使って築いた富は、生産や雇用にさほど影響を与えていない。サマーズ元財務長官は新たに危機が発生した局面で量的緩和(QE)策の選択肢を否定しないものの、反論が聞こえつつある。QEによるインフレは資産価格にのみ発生し、金融当局が予想したような利益をもたらしていないためだ。QE2を決定した直後、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長がQEによる株高や長期金利の低下が住宅市場と消費を押し上げると説明したことが思い出される。

QE2はQE3をもたらし、QE4の観測浮上にもつながった。しかし、政治家の間で懐疑的な見方が浮上している。メイ英首相は「悪い副作用」に言及。超低金利政策とQEは「必要な治療薬だった」と認めつつ、後遺症は予期していなかったと述べ「豊かな者はさらに豊かになり、貯蓄していた者(貯金しか資産を保有していない者という意味)は貧しくなった」と語った。英国の状況は、米国と一致する。

金融政策に対し、常に批判が巻き起こっていたわけではない。グリーンスパン元FRB議長は1999年2月15日号のタイム誌に”世界を救う委員会”の一人として表紙を飾り、同じくタイム誌は金融危機を経て2009年にバーナンキ前FRB議長を”今年の人”に選出した。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁はそのファーストネームから”スーパーマリオ”の異名を持ち、イングランド銀行のカーニー総裁はBREXIT後の政策決定でその手腕をみせつける。

グリーンスパン氏が表紙を飾る前、アジア危機からLTCM危機などが発生。

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(出所:TIME

しかし、共和党の米大統領候補であるトランプ氏はイエレン議長率いるFedが米大統領が引退するまで株高を演出するため低金利を維持していると槍玉に上げる。政治家の批判はさておき、主要国の中央銀行は基本政策の変更を検討しつつあるようだ。

日銀は長短金利操作付き量的・質的金融緩和を発表、インフレが2%という目標を達成するまで10年債利回りをゼロで推移させる方針を打ち出した。これは主眼を国債を買い入れる量ではなく、価格へシフトさせたも同然だ。つまり、日銀は金額を事前設定しゼロ%を割り込むような買い入れを行うわけではなく、ゼロ%で推移するだけの資産を買い入れることになる。

ECBに対しては、ブルームバーグが資産買入期間中に取得額を縮小する案を検討していると伝えた。ECB高官は報道を否定したものの、独10年債利回りは急伸しマイナス圏から脱却した。

世界中の国債利回りは、FRBが資産買入額を減額する方針を発表後の2013年半ばにみられたテーパー・タントラムの様相を呈しつつある。当時、米10年債利回りは3.0%を超え、他の金融市場に衝撃波を送ったものだ。

インタレスト・レート・オブザーバー主催のカンファレンスで、ダブルライン・キャピタルのガンドラック最高経営責任者(CEO)は金利は決して上昇しないなど誰もが「決して〜しない」と考える時に変化が生じるものだと語った。また同CEOは、マイナス金利は弊害しか生み出していないと批判する。例えばドイツ銀行の株価下落が象徴的で、利ザヤ縮小が業績不振につながったと指摘。BREXIT後に米10年債利回りは1.36%と、2012年の1.38%以下まで低下したものだ。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BOAML)のグローバル投資ストラテジスト、マイケル・ハートネット氏が指摘するように”流動性のピーク”を確認しつつあるのかもしれない。中銀が演出する過剰流動性の時代は終了したということだ。同氏の指摘は日銀の政策からECBのシフト、あるいはメイ英首相のQE批判とFedの利上げに通じる。また”格差のピーク”が終幕を迎える可能性も否定できない。財政政策により支出拡大と所得再分配が進むと考えられると同時に、ポピュリズムの台頭が資本や貿易、労働のディスインフレ・フリー状態を抑え込み”グローバリゼーションのピーク”を迎えうる。

投資家は、”リターンのピーク”に備える必要があるだろう。BOAMLは2017年に”ウォールストリートではなくメインストリート”ヘの投資、つまり小型株やコモディティ関連、不動産などといった実体のある資産への投資を推奨する。また、公益株や通信株など債券に近い性質を持つセクターからのシフトを勧める。これからは、低金利の恩恵を受けたセクターに冬の時代が到来しそうだ。

世界のマーケットに、ポンド版フラッシュ・クラッシュの衝撃が走った。ポンドドルは7日に1.26ドルから1.18ドルまで急落、1.24ドルまで回復したものの1日での下落幅としては記録的な水準だ。フラッシュ・クラッシュが米株を襲った2010年5月6日には、ダウが約1000ドル急落したものだ。

中国では9月に外貨準備高が188億ドル減少、7〜9月期では389億ドル減と4〜6月期の74億ドルを大幅に超えた。米大統領候補が理解するまでもなく米国債を売却し人民元を買い支えているためで、世界全体でのドルを吸収したとも言える。

そのような状況下、Fedは12月の利上げへ向け着々と準備しつつある。FF先物市場でみた12月利上げ織り込み度は64.3%で、米9月雇用統計の結果も利上げの障害となる内容ではない。中央銀行は、世界的に寛容ではなくなった。中央銀行は市場を笑わせる道化師から、恐怖を与える役割に変わりつつある。


長期金利の上昇は日銀の金融政策決定会合から進行していましたが、マーケットの読みは正しかったと言えるでしょう。ECBまでテーパリング観測が浮上するなど、中銀はFedの利上げを筆頭に正常化ヘ向けた一歩を歩み始めたようです。どれだけ金利を低下させようが資産を買い入れようが、インフレが生じないのであれば実際にマーケットの金利を引き上げるという劇薬を投じるしかなかったのか。

明確なポイントとして、米国は約10年ぶりの利上げに踏み切った2015年12月と違ってドル高を甘受しない姿勢を打ち出したと言えるでしょう。クリントン米大統領候補が為替条項に絡みTPP批准に反対するように、米国は為替に再び敏感になりつつあります。何より、原油安のほかドル高が上半期の企業投資押し下げに一役買ったとなれば、政権としてもドル高は歓迎できません。FOMC内でハト派寄りとされるブレイナード理事やタルーロ理事がビル・クリントン政権メンバーだった事情も加味すれば、クリントン政権誕生で再び円高の悪夢が展開するリスクも否定できません。特に、ブレイナード理事が財務長官候補であれば円高懸念が否が応でもくすぶります。

(カバー写真:Mark Hodson/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年10月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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