マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、佐々木玲子氏 インタビュー

2016年10月13日 06:00
マーサージャパン 佐々木玲子氏

マーサージャパン 佐々木玲子氏

1990年代以降、右肩上がりで増え続けてきた日本企業による海外企業の買収。長い時を経て、多くの経験を積んできたことで、M&A戦略は徐々に 熟練度を増してきた。それとともに、全体の事業構造最適化に向けて、買収だけにとどまらず売却する側のM&Aを手掛ける日本企業も増えてきてい る。組織・人事面を中心にクロスボーダーM&Aの支援を行ってきたマーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル、佐々木玲子氏が語る、日本企業が目指すM&Aの新たなステージとは何か。そして、売 り手としての日本企業のM&A戦略のあり方について短期集中連載する。

活況が続き、売り手優位に傾いているM&A市場

――今年も、企業の潤沢な手元資金や国内市場の縮小を背景に、日本企業が海外企業を買収するアウトバウンド型M&Aが非常に活発です。

マーサーが今春に発表した「M&Aにおける人事リスク」についての調査レポートで は、回答者の50%が最近クロスボーダーM&Aを行った、また24%が複数国にまたがるクロスボーダーM&Aを検討する可能性が2014 年1月時点よりも高くなった、と答えています。M&Aはグローバル共通の課題として、ますます高い関心を集めていることを示していると言えるで しょう。

一方で、この2~3年のM&A市場は、買い手企業同士の競争が激しくなり、売り手の立場が優位になる傾向が強まっています。強気に なった売り手側からは、必要な情報や協力が得にくくなっています。また、入札する企業が増えることで、買収価格も上がりやすいという印象があります。

このように日本企業は海外に活路を見いだし、積極的にM&Aを行っているわけですが、今年前半に関していえば、英国のEU離脱に関する一連の騒 動、いわゆるブレグジット(Brexit)をはじめ、世界情勢が不安定だった影響もあり、一時的にスローダウンした感触がありました。しかし、後半に入っ た今は再び勢いが戻ってきており、当面は活発な取引が続くと思われます。

――最近の日本企業のクロスボーダーM&Aに何か変化は見られますか。

数年前、まだ「M&Aは初めて」という日本企業も多かったころは、とにかく買った事業を当面は従来通りの形で安定的に経営したい、というのがわれ われに寄せられる主たるニーズでした。われわれコンサルタントに寄せられる相談も、現地経営者をどのようにリテインして、経営を続けてもらうべきかといっ た所が多かったと思います。

しかし、日本企業の中にも、M&Aを経営戦略の柱に据え、既に大型案件を含めて数度にわたり外国企業の買収を手掛け、積極的に海外事業展開を図る ケースが珍しくなくなってきました。それに伴って、現状維持の方策を聞きたいという従来の相談が多かった状態から、事業の強化・効率化を前提とした相談が 増えるようになってきました。

たとえば「自社の既存海外拠点と、新たに買収した企業の拠点をうまく組み合わせて事業を効率化したい」「自社が強みを持つ領域を生かして、 買収先の企業を強化するにはどんな方策があるのか」「買収した企業の経営者には、どのような形で本社の事業戦略に関与してもらうべきか」といったもので す。よりレベルの高い課題意識を反映するようになってきたと言えるでしょう。

インタビュー・編集:M&A Online編集部

d21798f1-69fa-4b93-ac90-7e80a7d82021佐々木 玲子(ささき・れいこ)略歴
マーサージャパン グローバルM&Aコンサルティング部門プリンシパル
SAP ジャパンを経て現職。国内外の企業のM&Aに伴う組織・人事全般のコンサルティングに従事。 近年のクロスボーダーM&A案件ではデューデリジェンス、経営者報酬・リテンションおよび報酬ガバナンス、従業員コミュニケーションやグローバル 人材マネジメントに関わる支援多数。著書に「人事デューデリジェンスの実務」中央経済社(共著)、「M&Aを成功させる組織・人事マネジメント」 (日本経済新聞社、共著)、「合併・買収の統合実務ハンドブック」(中央経済社、共著)がある。
国際基督教大学教養学部卒、London School of Economics and Political Science (LSE)組織心理学修士(MSc.)

グローバルM&Aコンサルティング マーサージャパン


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2016年10月12日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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