老後向け貯蓄ゼロ、米大統領選で協議されず

2016年10月16日 06:00

老後

バロンズ誌、今週のカバーは半期に一度の「ビッグ・マネー調査」を掲げる。調査結果によると、追加利上げの時期が迫りドイツ銀行の財務不安がくすぶるなかでも強気派が優勢。2017年半ばにかけ「強気」、「非常に強気」との回答は45%と、調査が開始して20年間での最低近くだった前回の38%から改善した。株価予想も楽観寄りへシフトし、2017年半ばの予想は強気派で19,184ドルと前回の18,756ドルから上方修正。2017年末は19,687ドルだった。

米大統領選では民主党のヒラリー・クリントン候補が勝利するとの予想が60%と前回の64%から低下、共和党のドナルド・トランプ候補は40%と前回の20%から上昇した。

FF金利誘導目標予想は2016年末に0.25〜50%が52%と据え置き派が優勢で、0.50〜0.75%と1回の利上げ予想は41%にとどまる。2017年6月では0.50〜0.75%が43%、同時期までに2回の利上げを見込む回答は0.75〜1.0%が30%に過ぎない。中国が年内に人民元を切り上げるとの予想は74%と、前回の75%とほぼ変わらず。2020年までの米成長率は2.0%が46%、3.0%は44%だった。一方で、海外株での不人気は日本。向こう12ヵ月で最悪のパフォーマンスになるとの回答では日経225が36%でワーストであり、次いで欧州STOXX600指数が23%、中国(上海総合)とエマージング株式市場が18%と並ぶ。詳細は、本誌でご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は老後の生活に向けた貯蓄をテーマに取り上げる。抄訳は、以下の通り。

米国人、大半は退職後の貯蓄がゼロ—Many in U.S. Have Zero Retirement Savings

ノーベル文学賞の栄誉に輝き、”フォーエバー・ヤング”を歌ったボブ・ディランは75歳にしてツアーに出ている。ブルース・スプリングスティーンは67歳でマラソン並みの4時間ライブを敢行し、ビリー・ジョエルはマディソン・スクエア・ガーデンで月に一度、売り切れご免のコンサートを繰り広げる。トニー・ベネットは90歳の誕生日を迎え、歌うことへの愛を込めてGreat American Songbookを元気よく歌い上げる。ベビーブーマー世代はと言えば、職に愛情を感じているかは別として労働力としてとどまる状況だ。

ベビーブーマー世代の一部は、必要だからこそ仕事を続けている。マクロメイブンスのステファニー・ポンボイ氏が指摘するように、65歳以上の労働参加率は20%付近と、ビートルズがブレークする以前の1962年の水準で推移し1980年代の2倍に及ぶ。しかし、驚くには値しないだろう。子供たちが実家の地下でブログしている環境で、親であるベビーブーマー世代が引退しづらいためだ。経済的に引退できない事情もある。米国老後保障機関(National Institute on Retirement Security)の調査では、労働力の世代4,000万世帯の45%は老後のための貯蓄がゼロという状況だ。

65歳以上の労働参加率は、預金金利が低下し始めた1990年代から上昇が顕著となる。米連邦公開市場委員会(FOMC)が金利を引き下げたため(ITバブル崩壊後に2001年1月から2003年6月まで13回にわたり利下げし金利を1%まで引き下げ)で、その頃から労働者は減少する金利収入を補うため貯蓄を増やし始めた。

65歳以上の労働参加率、2000年代から右肩上がり。

65

(作成:My Big Apple NY)

公務員は老後の生活保障への不安に無縁にと思われたが、今は違う。テキサス州ダラスの警察官・消防隊員向けの年金は12億ドルの不足を受け、給付額の削減を検討中だ。7%のリターンを目指していたがウルグアイ産木材、ハワイのヴィラ、アリゾナ州の不動産投資の失敗を受けて2015年のリターンがマイナス12.6%、過去3年でマイナス0.7%に至ったためだ。これは極端な例かもしれないが、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスによると全米の州において年金準備額は2015年度末に1.25兆ドル不足し、州の歳入の119%に及ぶという。2017年度の不足額は、1.75兆ドルへ膨らむ見通しだ。なおイリノイ州の格付けは”Baa2”でジャンク債の2つ上に過ぎず、ニュージャージー州では”A2”で、ともに見通しは”ネガティブ”だ。

年金不足が深刻な状態にも関わらず、2016年の米大統領選では一向に話題に上がらない。2020年になれば、事態は変わるのだろうか?

米大統領選と言えば、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁(今年の投票権なし)は11月8日を控え金利据え置きの一因としてその不透明性を挙げた。同総裁は「選挙結果とその後の動向次第で政策が負の効果を与える状況を懸念しており、我々は対応しなければならずそうするだろう」と発言。その上で「不透明性が払拭されるまで、様子見姿勢が賢明」と語った。次回のFOMCは米大統領選からわずか1週間前の11月1〜2日であるだけに、FF先物で見た利上げ織り込み度は12月13〜14日会合で67%となっている。

一方で人民元は対ドルで6.7元と、前週に6年ぶりの安値をつけた。進行中のドル高と中国からの資金逃避を踏まえれば、合点がいく。外貨準備高をみると、ドル売り・元買い介入で元安を抑制してきた形跡がみられるが、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは2017年末までに7.25元まで元安が加速すると見込み、従来の6.8元から修正した。人民元と言えば、共和党のトランプ候補の攻撃材料のひとつ。仮に(トランプ候補が誕生し)元安が政治的な議論を巻き起こすなら、ドル高・他通貨安の影響を鑑みFedは利上げを先送りしかねない。早く11月8日がきて、こうした不安を消し去ってほしいものだ。


米大統領選や追加利上げを前に、ビッグマネー・ポールでは強気派がカムバックを果たしていました。利上げペースがゆるやかで景気を阻害しないと判断し、米大統領選ではクリントン候補の勝利で現状維持が確実と見込んでいるのでしょう。向こう12ヵ月先でリセッションを予想する回答は16%と前回の12%を超えたとはいえ、リセッション入りへの不安が小さい事情も垣間みれます。11セクター別(生活必需品、裁量消費財、エネルギー、金融、ヘルスケア、素材、産業財、不動産、テクノロジー、輸送、公益)では金融株の期待値が大きく、次いでテクノロジーが22%でした。ディフェンシブ銘柄の公益が1%であることと、対照的です。

アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートで取り上げられた人民元問題をめぐって、米財務省は現状の姿勢を維持しました。為替報告書では前回に続き日本や台湾、韓国、ドイツと合わせ”監視対象”としています。変更点としては、今回スイスが加わった程度。トランプ候補は自身が米大統領選に就任すれば「財務長官に為替操作国と認定させる。数年前にそうすべきだったように」と豪語していましたが、米財務省はお構いなし。新たな米大統領の下でまとめられる2017年4月公表の為替報告書がどんな変化を示すのか、回数は半期に一度を保つのか、熱い視線が注がれます。

(カバー写真:401(K) 2012/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年10月15日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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