閑散相場の行方

日本の株式市場に元気がありません。活況かどうかを占う心理的バロメーターの一つに一日当たり売買代金2兆円がありますが、10月はまだ一度も超えていません。日経平均のチャートを見ると典型的な三角もちあいがほぼ3カ月続く状態になっています。そのもちあいは相当煮詰まっていますので近いうちに上か下にパーンと放たれるとみています。

では、NYはどうか、といえばこちらも持ち合いに近い状態になってきています。ダウで18000ドルプラスのレンジで比較的小動きとなっています。

市場は何を待っているのか、といえば大統領選挙の行方ということだろうと思います。あと3週間ですのでやむを得ないでしょう。投資家の頭にあるのは英国のEU離脱のように想定外の展開が頭にあるため、思い切った動きができないのだろうとみています。

一般的にはトランプ氏が大統領になったら株は売り、と言われています。ではクリントン氏なら買いなのか、といえばここは誰もコメントしていないところにまた微妙な含みがありそうです。

日本の株式市場をみると更に面白みに欠ける原因が日銀とアベノミクスにありそうです。日経は「黒田総裁の日銀は死に体(レームダック)か?」とまで書き上げました。9月の政策会議の決定事項である短期金利を低め誘導、長期を高めにするという方針転換が関係者の間で議論となり、日銀はスタンスを変えたのでは、とまで言わせました。総裁は「必要ならば何でも」という例のセールストークポジションは崩していませんが、一方で「今は金利を下げる時期ではない」と明言するなど金融政策で大きなアクションを起こさないだろうという気配が濃厚になっています。

アベノミクスについては首相が経済は良くなっている、雇用も回復していると力説しますが、第三の矢である構造改革が進んでいないことに日本市場の7割程度を占める外国人投資家が業を煮やして長期に渡り売り姿勢を継続しています。一方、日銀のETFが下値を買い支えする完全なる官製相場と化し、値動きは緩慢でごく一部の中小型株が散発花火のごとく話題をさらうという展開であります。

また、日本の株式相場を占うもう一つの大事なファクターである為替についても104円台までつけたのち、足踏みしているのもほぼ予想されていた展開であります。これは105円近辺に円買いドル売りの分厚い壁があるとされ、チャート的にも節目となっています。

では市場はどこに向かうのかですが、個人的にヒントは11月3日の英国中央銀行の金融政策会議の結果にかかってくるとみています。この会議で英国が利下げする確率は7割になっています。インフレ率も低く、ポンドも歴史的安値圏にあるにもかかわらず利下げを目論むその理由は中央銀行が高い水準の景気刺激策を維持する必要であると考えているからであります。

実は同じことがアメリカのFRBでも検討される気配があります。イエレン議長が10月14日に述べたのは「ヒステリシス現象」を避けるため、「ハイプレッシャー経済」が効果的と語っています。。これは難解な言い回しです。ヒステリシス(=履歴現象)は総需要不足は供給側も停滞させるということのようですから景気を圧力なべのなかに閉じ込めるようにして体力をもっとつけるべきと取れます。これは従来の「そろそろ利上げ時期」というトーンとは大分違っていることになります。

米英で突然言われ始めたこの景気弱気論が何を意味するのか、ここの読み方なのですが、個人的には英国のEU離脱に関してメイ首相が割と強硬手段に出るかもしれないという政治的背景、及び、アメリカの大統領は良くてもクリントン氏という期待感の薄さで景気刺激策を金融当局が継続しなくてはいけないという先読み且つプリベンティブ(予防的)な見方が可能なのかもしれません。

そうだとすれば目先この三角持ち合いは上放れするという見方が妥当な気がします。個人的には中期的に日本のファンダメンタルズは再び見直される時が来ると思います。英米の将来のリスクファクターを考えれば安全資産への資金移動もあるでしょう。外国人投資家の売りもだいぶ進んだ今、下値不安は少なくなっているように感じます。

以前のブログでもお伝えしたように日本の陽はまた昇るとみています。(いや、上りつつあるでしょう。)株価もそれに呼応して来れば景観もずいぶん変わると思います。今の日本は時としてあまりにも悲観的で暗すぎる時がありますが、秋祭りのようにムードが良くなればと思っています。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 10月19日付より