会場選定、次のステップ

2016年10月22日 11:31

会場選定について、いくつかの整理をしておきたい。

1、会場には恒設、既設の2つがある。

前者は大会後も使う。後者は大会後は撤去する。後者は一見、もったいないが機材をよそで使うこともでき、すべてが捨てられるわけではない。また、数年間は使えるから置いておくというものもある(ケースバイケース)。重要なのは維持費である。丸ごと残してつかう、つまり恒設とする場合は、人件費や光熱費を含む運営の費用、修繕費、大規模修繕費が発生する。

また堅牢に作るので解体の際の費用も大きい。一般にこれらの維持費は、恒設の規模が大きいほど大きくなり、モノにもよるが数十年で建設費と同じくらいの維持費がかかるといわれている(具体的にはケースバイケース)。それでオリンピックの場合、仮設会場がかなりある。例えばビーチバレーは公園をいったん壊して砂を入れ、会場とし、大会が終わったらまた公園に戻る。体操競技は新たに体育館をつくるが大会後10年くらいは暫定的に展示会場として使う予定である。

いずれにしても恒設で新たに作るというのはよほどの後利用の計画がない限り、たいへんな負の遺産をしょい込むことになる。

2.彩湖

数年前の候補リストには上がっていた。しかし、以前のブログで述べた理由と同じ理由により、当時の検討では候補から外された。そして海の森になったわけだが調査チームは都庁が過去に候補から外した理由に対して大きな疑義をもっていない。後利用を期待するアスリートの方が多いのはわかるし、今でも使われているのはわかる。しかし、確実に大会に使用できるかというとそうではない。もともと大雨の貯水地として作られた池であり、雨が降ると水位が最大10メートル近く上がり、ごみや流木、泥が入り込む。放水も始まると流れもきつくなるから競技がやりにくくなる。要は、後利用で期待する向きがあるのは重々承知はするが、肝心の大会当日に使えなくなる可能性がある場所である。

ただし、過去の都庁の資料のうち費用の試算については、妥当性に疑問なしとしない。長沼の場合の数値も同じだが、海の森のフルメニューと同じ内容を彩湖にも要求し、それで試算をしている。だから過大な数字となっている可能性はある。しかし、調査チームは、今回は彩湖は9月末の資料では比較検討の対象として全面否定はしなかったものの、その後は代替地として考えなかった。それは上記の洪水時に使えないという致命的な問題である。さらにいえば時間の問題もある。あと4年を切った段階でこれから新たに建設するというのは簡単ではない。これらを総合的に判断し、もちろん知事とも相談し、代替地として長沼だけを調査することとし、彩湖は調査対象から外した。

ちなみに調査報告書には彩湖についての記述がある。しかし、これは「海の森」以外にも候補地がありえる、という問題提起に関する参考資料として「過去の都庁の検討資料」を再掲したものである。

従って、「調査チームは、今週に入って彩湖を候補から外した」という報道は正しくない。調査チームはそもそも彩湖を当初から候補地に入れていない。従って埼玉県に連絡はしていないし、ご連絡もいただいていない。

なお一部メディアと愛好家の方が「彩湖もあるのではないか、考えたほうがいいよ」と問題提起はされていた。感謝する。戸田に近いし、レガシーになるという指摘にも反対しない。

しかし、上記の理由で今から代替地の候補にする意義は乏しいと調査チームは考えた。つまり彩湖は調査チームの報告書には「過去の比較検討の対象」として紹介はしたものの、代替候補地として長沼と並ぶ比較検討の対象となることはなかった。

調査報告書は、口頭による会議発表のための資料であり、あれだけを読むとわかりにくい。会議の中継の動画記録や議事録とあわせてお読みいただく方がわかりやすいと思われる。
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/kaigi02rokuga.html

次回に続く


編集部より:このブログは慶應義塾大学総合政策学部教授、上山信一氏のブログ、2016年10月22日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた上山氏に感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、上山氏のブログ「見えないものを見よう」をご覧ください。

 

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上山 信一
慶應義塾大学総合政策学部教授

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