(前回の続き)3.海の森の評価(調査報告書より)

2016年10月22日 11:32

3、海の森の評価

前回からの続きですが、3は海の森を恒設で作る現行計画についての調査チームの見解(9月29日の都政改革本部会議の時点のもの)を紹介します。
材料は3つあります。
②①に沿って行われた当日のプレゼンテーションの議事録
③調査報告書の全体版
これは当日、会議で配布、公開されており、②よりも詳細な検討結果が掲載されています
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/kaigi02/olympic/01houkokusyo.pdf
当日は①の抜粋版にそってプレゼンテーションがされました。以下では全体版③)の冒頭部分にある全体の要約を(1)で引用紹介します。さらに(2)では②の議事録を紹介します。これは抜粋版を画面に映しながら行われたプレゼンテーションの議事録です。

(1)報告書に書かれた海の森の現状評価結果(47P=全体の要旨)
(以下、47Pの引用です)

海の森水上競技場 (ストーリー)

1.(概要)海の森水上競技場は海の森公園近辺に作られる水上競技施設で、ボート、カヌー(スプリント)競技に使われる。(都内において、必要水域、施設配置陸域の条件を満たす場所)

2. (特徴)湾岸エリアの水路に整備するため様々な課題が存在し、その対策のための整備費が予算の高騰を招いてきた。

3. (コスト面の課題)現地調査等の結果、1000億円を超える整備費が見積もられ、削減努力後も491億円が必要となっている。

4. (恒久施設の必要性)ボート協会(NF)は海の森水上競技場を恒久施設として整備することを訴えているが、一部のアスリート・首都圏のチームはその立地に疑義を持っている。レガシーとしての後利用についても収入、ランニングコストなど具体的な収支計画は現時点ではなし。

5. (レガシー自体の課題)競技会場として有用性・利便性について一部のアスリート・首都圏のチームから疑義が出ているため、レガシーとして利用されるか不透明な部分多い。IOC/IFも、これまでの協議でコスト縮減とレガシーとして活用されることを要望している。

6. (他の代替の可能性)国際大会が開催可能な河川、湖は国内他地域に複数存在し、これまでも他代替候補地の検討は行われたが、オリンピック要件を満たすためには高額の仮設費用が必要とされており。現在は海の森水上競技場がIF, IOCも認める開催地として妥当とされている。仮設費用の大部分が観客席やTVカメラレーン等を設置する仮桟橋工事等のためであり、競技団体との交渉次第では、他代替候補地がより低コストで整備できる可能性はあると思われる。

7. (課題)以上より、競技開催地については海の森水上競技場に加え、その他代替候補地も含めて再度検証すべきと思われる。


(2)当日のプレゼンテーション議事録

以下は、抜粋版の25Pから32Pに沿って、行われたプレゼンテーションの議事録です(担当は安川参与)。かならず資料を参照しながらお読み下さい。資料を見ながら議事録をお読みいただかないと正確に理解いただけません。
(以下、引用)


「海の森水上競技場」は、海の森公園付近に整備される水上競技で、ボートとカヌーのスプリントが開催される予定になっています。都内においては、2,000m×8レーンという国際規格を満たす広大な水域、また、陸域の条件を満たすのは、恐らくここしかないかと言われています。しかし、海上の水路を利活用して競技場にすることから、海からの横風、満潮・干潮の水位の問題、波の変動、そうしたものが競技にどのような影響を与えるのか、ボートの揚陸施設があったり、橋がかかっていたり、それらを改善することが必要となっています。その結果、様々な設備の改修・整備が必要となっております。

28ページに「競技場整備費の変遷」が載っております。まず、立候補ファイル時は69億円、これが何倍にも膨れ上がっているという報道が一部されていますが、立候補ファイル時は、競技施設についてはその時点で最低限見積もれるものを挙げています。その後、新たに、周辺設備の整備、観客席、建物が加わり、また、競技施設においても、国際競技団体やIOCとの競技の間で仕様が変更されていくことから、構造的に、ある程度上がっていくことはやむを得ないと考えております。

しかし、先ほど申し上げましたように、海上の水路を活用するという観点から、特に閉切堤、こうした臨時の海上設備が必要となっており、これが約400億円ということで非常に大きなコストになっています。また、建設コストや工事中のセキュリティ、消費税が上がる分、最大見積もって1,000億円を超えることになりましたが、あまりに過大であるということから、前都知事の時代に再度様々な検討が都のオリンピック・パラリンピック事務局でもされており、現時点で491億円となりました。大きなものは、閉切堤の距離を大きく見直して、1,000mから200mに削減するという観点から削減を行い、現時点は491億円となっております。ただし、これからレガシーとして残していくに当たって、どのくらいの年間費用がかかるかというランニングコストの点はこれからの調査になっています。

また、都立の恒久施設として、まさにレガシーとしての重要性ですが、先ほど上山顧問から幾つかの観点があったかと思いますが、現行計画では、今後、国際大会は誘致していきたいと考えられています。国内大会も、全国大会79大会のうち30大会を開催するということで、全国大会のうちの4割をここで開催したいという野心的な計画が挙げられております。また、今後の存在価値も、利用者として31万人、スポーツ・レクリエーションという形でほかのスポーツを楽しむ場として4万人が見込まれていますが、具体的な収支計画は確認していません。

調査チームとしては、レガシーという形で残すわけですが、一部のボート競技者の間では、海上で競技を行うことに対して根強い反対意見が聞かれていますし、首都圏のボートチームやカヌーチームは、現時点でここをメインの拠点に移すという意向は確認できていません。また、今後レガシーとしてどう活用されていくかの利用計画・収支計画の詳細検討は施設ができてからと伺っております。

もう一つレガシーについての見解として、都とボート協会は、必要な設備はこれまでもボート協会、国際ボート連盟との協議を通じて様々な積極的な議論、詳細な議論をされて措置が講じられていますので、大会開催に関しては問題がないだろうということで、IOC、IF(国際競技連盟)も、今の段階では「海の森」がベストであろうということは言われています。レガシーとしても、国内の大会をたくさん見込んで31万人の利用を見込んでいます。しかし、アスリートチームとしては、やはり海での国際大会について疑義がある、また、アクセスが悪い。荒川などのように近くに広域の水域がないので練習については確保できるのかと。一旦、外に出ると海ですので、2,000m×8レーンの外での、いわゆる通常の練習ができるのかなど、様々な疑念は、アスリートチームの一部の方のヒアリングを通してですが、聞かれております。

それでは、改めて分散開催を検討した場合、他の候補はないのかということを31ページ、32ページ目で参考資料として挙げております。例えば、2,000m×8レーンという広域な水域を必要としますが、候補としては、宮城の長沼が挙げられます。戸田の彩湖は掘削等の工事が必要ですが、水域としてはあると言われています。また、長良川は既に大会が実施されている実績もあります。こうしたところが検討可能な河川としてあるのではないかと言われていますが、宮城の場合は分村が必要となっていますし、今後、実際に開催することになったときの用地の買収など課題があります。戸田についても、今後、掘削工事が実際に可能なのか、費用負担はどこが担うのかといったことが課題になります。長良川については、水流があるため、過去の国際大会の実施経験からFISAが一部懸念を表明していると聞いております。

コスト試算についてです。現在の会場のコスト試算は、実は、過去において都のオリンピック・パラリンピック準備局でも、幅広く「海の森」以外の候補地を検討しようということで、都の試算がされています。都の試算としては300億円から500億円かかることになっていますが、その多くが仮設設備費用で、その半分の大きく占める部分が観客席やカメラレーン設置のための仮桟橋工事です。長沼も戸田も、そういった意味では大きな貯水池というか湖ですので、カメラレーンや、横に走る道の整備が必要となり、これが140億円と試算の大部分を占めていますが、こうした場所も、IOCやIF(国際競技連盟)との交渉によって了解が得られればコスト削減の余地があるのではないかと考えております。

ですので、現時点で「海の森水上競技場」のコストダウンの可能性を見つつ、また、今後レガシーとしてどの程度の収入が見込めるのかということも確認しながら、代替の候補地を確認することが妥当ではないかと、「海の森水上競技場」については考えております。


(3)調査報告書(全体版)

http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/kaigi02/olympic/01houkokusyo.pdf

(1)(2)を読まれたうえで、当日配布された全体版47pから57pもお読みください。なおこのうち56pは参考資料。ここに昔、都庁が行った他の候補地の試算結果が掲載されていますが、資料に明記してあるとおり過去の都庁による試算数値であり、今回、調査チームが試算した数値ではありません。またお読みいただくとわかるとおり、彩湖について「候補地として有望」とか「今後具体的に検討」といった記載は全くありません。


編集部より:このブログは慶應義塾大学総合政策学部教授、上山信一氏のブログ、2016年10月22日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた上山氏に感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、上山氏のブログ「見えないものを見よう」をご覧ください。

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上山 信一
慶應義塾大学総合政策学部教授

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