「トランプ大統領」は誕生しないと言える客観的理由

2016年10月22日 20:30

このは大変わかりやすく現在の各州を支持政党別に色分けしている。

10月21日(米国時間)の時点では、民主党(ヒラリー氏)が優勢とされている州の選挙人数合計は308, 共和党(トランプ氏)優勢地域の選挙人数合計は174と、圧倒的にヒラリー氏が優勢である。

一部には英国の国民投票と今回の米大統領選を同列に語る論調もあるようだが、投票者全員の意思がそのまま選挙結果に反映される国民投票と、ほとんどの州が”winner takes all”(一般投票で過半数の選挙人を獲得した方がその州の選挙人枠を全部獲得する)原理を取る州別のアメリカ大統領選挙は性質が全く異なる。

まず、共和党(トランプ)支持層は圧倒的に内陸部の過疎地域に偏っており、割り当てられている選挙人(electorals)数も少ない州が多い。その中で最も選挙人数の多いテキサスは一応共和党優勢とされているが、上のリンクでは”strongly”ではなく”likely”となっており、共和党が必ず勝つとまでは言えない様子だ。

対して民主党側はカリフォルニア(55 electoral votes)とニューヨーク(29 electoral votes)の二つを確実に押さえており、ニューヨークと同数の選挙人数を持つフロリダも民主党が若干優勢となっている。

この状況では共和党側が勝つのは絶望的に難しいだろう。南北ダコタやテネシー、サウスカロライナなどの田舎(redneck)地域でどれほど熱烈に支持されようと、カリフォルニアやニューヨーク、及びフロリダのような大都市を押さえなければ選挙には勝てない。

英国民投票を引き合いに出すならば、この地図からも明らかな通り、ロンドンやケンブリッジ、オックスフォード、リーズ、マンチェスター、ヨーク及びスコットランド全域に関しては残留派が過半数を超えている。それ以外のイングランド全域では概ね離脱票が過半数を占めたのだが、スコットランドやアイルランドを除けば大都市においてしか過半数を超えなかったにも関わらず、残留派は48.1%にも昇っていることからしても、如何に大都市において「左派」の影響力が強いかということがわかる。

そもそも、西欧(特に英語圏)の大都市は文字通り「国際」都市であり、必ずしも白人が多数派だとは限らない。例えばカリフォルニアの人口詳細を見ると、「白人」は全部で57%しかいない。つまり43%は非白人であり、この層がトランプ氏を大統領にしたいとは考え難いとすれば、トランプ氏が勝つためにはこの57%しかいない白人の最低87%の支持を集めなければならない。87%の支持というのは安倍首相が地元の山口県における小選挙区選挙でやっととれるかどうかという得票率だ。(ちなみに2012年の選挙における安倍首相の得票率は78.2%)しかも、大都市に住む白人は通常は有色人種以上に「政治的に正しい」(politically correct) 傾向にあるので、もはやカリフォルニアで勝つのは人口比を見るだけで「人種差別主義者」(racist) のレッテルを貼られた候補にとって絶望的だということがわかる。

同じことがニューヨークにも言えるし、他の東西の海岸線沿いの州の多くにも言えるだろう。批判の対象を「外国人」、特に「イスラム過激派」あるいは最悪の場合でも「ムスリム」のみに限定していればまだ可能性はあったかもしれない。アメリカの「同性愛者」に対してテロ事件を起こした「イスラム過激派」から、同性愛者を含む「アメリカ国民を守る」の一点張りで攻めていればもっと支持が集まったかもしれない。だが、ヒスパニックや黒人、さらには女性にまで罵倒対象を広げてしまった時点で、都市部の「行儀の良い」エリート意識の高い若者やビジネスマンの支持を集めることは大変難しくなっている。

これまでの「私が負ける選挙など認めない」という強硬姿勢を軟化させ「全力で戦った結果負けるのならそれでも良い」と弱腰になってしまった今のトランプ氏に、この状況を覆すことはできるのだろうか。

総合的に国民の半数以上から支持されたとしても、その半数が田舎に偏っていて大都市で多数派を形成できないのであれば大統領選挙には勝てない。

ただ、都市部の若者の大半がヒラリーに満足しているわけでもないだろう。そこを踏まえて残りの期間でトランプ氏がどこまであがけるか、今後の動向を注視したい。

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