夢を失うファイナンス理論

2016年10月30日 06:00

金融業界ではマイナス金利が騒がれ、私達庶民の間でも長らくゼロ金利が続いています。私が旧長銀の新入行員だった頃の利付債の利率は8%で複利運用した5年もの金融商品ワイドの年間利回りは9.616%だったと記憶しています。10年で倍近くに増える、今から思えば夢のような商品でした。

また、割引債の”税引き後”の利回りは常時年5%を上回っており、元金1億円あれば毎年の利息が税引きで500万円以上になるので利息生活ができました(それを当時の支店長に言ったら、支店長に「元金2億はいるよ〜。荘司くん」と言われました。不労所得税引き後1000万円…これまた夢のような話です)。

ちなみに、この割引債。無記名で買うことができたので、税金を払いたくないお金持ちやヤクザ屋さんが資産運用をするのに最適な商品でした。だから、旧長信銀三行はあの手この手で守られて金融債は全額保障されたのでしょう。政治力がによって巨額の税金を投じられ、脱税者を保護するという恐るべきブラックジョークだったのかもしれません(根拠も確信もない単なる推測です)。

それはさておき、ゼロ金利に業を煮やした人たちの中には株式投資やFX投資に勤しんでいる人たちがたくさんいます。

では、ズバリ!投資の王道はあるのでしょうか?

ファイナンス理論によると、最も合理的な投資手法は、①最も効率的なフロンティアを作り出すのに必要な危険資産の組み合わせを選択し、②その効率的フロンティアの特定の点に相当するポートフォリオを選択し、③各自の効用関数に応じて、このポートフォリオと安全資産への分散投資を行うことが、最も合理的な投資ということになります。

危険資産を国内株式として安全資産を国債としましょう。すると、最も合理的な投資手法は、株式のインデックス投資と国債投資の2本立てにして、その割合は自分のライフスタイルや好みに応じて適宜組み合わせるということとになります。ぶっちゃけて言えば、日経平均やTOPIXに連動するETFと国債だけに投資し、ハイリスクハイリターンを求めるなら株式ETFの比率を高め、その逆であれば国債の比率を高めるということに尽きるようです。

チャート占いや業界分析をして個別株を狙うより、上記の実につまらなくも単純な方法が、高度なファイナンス理論によって導かれた最も合理的な投資なのです。う~ん、誠に夢のない話ですねえ…。

もちろん、10倍、20倍に跳ね上がる株も実際にはありますが、それを買うには宝くじに当たるような偶然性に運命を委ねなければなりません。将来の値上がりの理論値は現在の株価に反映されるので、それ以上の値上がりは予想不可能。つまり偶然姓のみに左右されるのです。

人間は自分が愚かであったことを宣伝するのを嫌うので、株式投資で失敗した話はあまり人には言わないものです。逆に、儲けた時は(自分の才を知ってほしくて)大声で宣伝します。その結果、私達の耳に入ってくるのは成功談がほとんどです。

つまり、夢を追うなら生活に支障のない範囲で株式投資を楽しもうということに行き着きます。生活に支障のない元金なんてたかが知れてるわれわれにとって、莫大な不労所得は夢のまた夢。宝くじに当たったような超幸運な人だけが、「投資の天才」として騒がれているのが現実なのです。

 

話し上手はいらない~弁護士が教える説得しない説得術
荘司雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2014-08-26

 


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2016年10月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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