再燃する、クリントン候補のeメール問題

2016年10月30日 22:00

ヒラリー

バロンズ誌、今週のカバーはメディア業界の再編に焦点を当てる。通信大手AT&Tによるタイム・ワーナーの850億ドルに及ぶ買収は大衆寄りなクリントン政権誕生を予想するウォールストリートから実現性が低いとして好評価を得られずに終わった。タイム・ワーナー株は、28日に3%安の88ドルで引け、AT&Tの買収額に相当する106ドルを18ドル以下にとどまる。とはいえ、投資家は今後もメディア業界を舞台にした買収劇が続くと予想。巷ではウォルト・ディズニーがネットフリックスを、コムキャストがTモバイルを買収するトの観測が流れている。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は米連邦捜査局(FBI)があらためて動き出したクリントン候補のeメール問題を取り上げる。抄訳は、以下の通り。


「抜けられたと思ったら、すぐに引き戻される」とは、名画”ゴッドファーザー III”の台詞だ。民主党のヒラリー・クリントン米大統領候補をめぐるeメール問題を再び捜査すると明かした書簡を米議会指導部に送った共和党のコミーFBI長官の胸にも、同じ思いがよぎったのかもしれない。

選挙まで約1週間半、クリントン候補の側近であるフマ・アベディン氏の夫、アンソニー・ウィーナー元下院議員と15歳の少女との間の性的なメッセージに関する調査で新たに発見されたeメールが何を明らかにするかは分からない。選挙結果がどうなるかも、不透明だ。少なくとも市場は失望したようで米株は下落し、メキシコ・ペソも売りで反応した。

コーエンズ・ワシントン・リサーチ・グループのクリス・クルーガー氏は、eメール問題発覚を受けて「トランプ候補はフロリダ州とオハイオ州で勝利する可能性を残すが、それ以外にノースカロライナ州をはじめアリゾナ州、ジョージア州、ユタ州といったミット・ロムニー前米大統領候補が獲得した州で全て勝たなければならない」と振り返る。しかもeメール問題が再燃する前に、不在者投票で既に1,400万人が投票を終えた

定評のある選挙予測サイト、ファイブサーティエイトではクリントン候補が優勢。

538
(出所:Ficethirtyeight)

映画”イヴの総て”の名台詞「シートベルトを締めなさい、今夜は荒れるよ」さながら、11月8日を前に金融市場が乱高下する可能性がある。しかし、市場は常に3つのポイントにフォーカスするものだ。すなわち経済、財政、金融である。

両者は、政策としてインフラ支出の拡大を掲げる。ただし、実際は簡単に進められそうもない。11月8日の選挙を経てホワイトハウスと米上院は民主党、米下院は共和党が獲得する可能性が高く、実現すれば共和党が抵抗しないとも言い切れない。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのストラテジスト、デビッド・ウー氏によると、ねじれ国会の間で財政拡大が日の目を見たのは1回のみ。それも地滑り勝利を果たしたロナルド・レーガン政権1期目の1981年のみだったという。また今回は、債務上限引き上げ交渉が再び暗礁に乗り上げる公算が大きい。

金融政策はどうか。11月1〜2日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では81%の据え置きが織り込まれ、12月13〜14日が本命視され利上げ確率は70%。この日であれば米大統領選の決着がついており、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見も予定する。

経済指標は、米7〜9月期国内総生産(GDP)速報値は前期から2倍近い伸びを示した一方で最終消費は2.3%増と前期の2.6%増から鈍化した。個人消費の鈍化が響いたためで、非自動車のモノをみても小売の失望を誘う決算で明らかなように0.6%増と6.5%増から大幅に減速している。

同時に、インフレには芽吹きがみられた。これは、シティグループのエコノミスト・チームがメーガン・トレイナーのヒット曲”It’s All About That Base”に掛けたように、ベース効果によるものだ。原油先物価格が50ドル台を回復するなかで、弱含んだ前年と比較すれば当然であり、シティは2017年2月には消費者物価指数(CPI)が前年同月比で2.7%へ急伸すると見込む。コアCPIでも、2.2〜2.3%で推移する見通しだ。

マーケットは12月の利上げを経て、2017年のFF金利誘導目標は1.1%を織り込む状況だ。つまり、来年は1回の利上げしか予想していない。それでも米10年債利回りは1.847%と、BREXIT後まもない7月8日の1.366%から大幅に上昇した。ジェローム・レヴィ・フォーキャスティング・センターのスリニバス・スルバダンサイ氏は米10年債利回り2%超えは経済や金融市場に打撃を与えるため持続的ではないと指摘するように、米株の上昇は低金利があってこそである。


米大統領選まであと1週間に控え、クリントン候補に浮上した新たなeメール問題はツイッターで大いに話題になりました。CNBCがスプレッドファストの調査を基に伝えたところ、コミーFBI長官の書簡が伝わった後で同問題を取り上げるツイッターは米東部時間の午後1時20分にピークを迎え、1分間に5,700件に至ったとされています。6時間では13.6万件ものツイッターが配信されました。では、トランプ候補の女性侮蔑発言を網羅した動画が暴露された10月7日当時はどうかというと、6時間で16.1万件に及びました。

コミーFBI長官の再調査開始をめぐる書簡送付に、ビル・クリントン元米大統領との会話が取り沙汰されたロレッタ・リンチ米司法長官、並びにサリー・エーツ米司法副長官が連名で批判しました。クリントン候補自身は、フロリダ州のラリーにて「選挙直前に情報に乏しい状況でこのような事態を引き起こすとはおかしい」と発言。さらに「前例がない上に、非常に問題だ」と不当性をアピールしています。ニューヨーク・タイムズ紙の予測ではクリントン候補が91%、トランプ候補が9%。選挙予測で定評のあるファイブサーティーエイトでもクリントン候補が81.1%と、トランプ候補の18.9%を大幅に超えていました。果たして、大どんでん返しは起こりうるのでしょうか。

(カバー写真:Marc Nozell/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年10月30日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑