まだ厚生年金で消耗してるの? --- 宮寺 達也

2016年11月01日 06:00
小泉会見

社会保障改革提言を発表する小泉進次郎氏(小泉氏のFacebookページより引用:編集部)

先日、小泉進次郎氏が主導する自民党「2020年以降の経済財政構想小委員会」が提言を発表した。「解雇規制の緩和」や「年金支給開始年齢の引き上げ」といった、これまでの政権が躊躇してきた改革案が盛り込まれており、非常に期待の持てる内容だ。

だが一点、「ちょ、待てよ」という内容があった。それは「企業の厚生年金や社会保険を全ての非正規労働者に拡大する」というものだ。小泉氏は「厚生年金の異次元の適用拡大だ」と表現しており、労働者のためを思っての提言なのだろうが、私から言わせれば、むしろ「異次元の迷惑」なのでどうか考え直して欲しい。

年金国民年金で生活が楽になった

私は2005年から2016年まで11年間サラリーマンとして厚生年金に加入し、2016年4月からフリーランスとして国民年金に加入している。

会社員時代から薄々気づいていたが、厚生年金は本当に高い。国民年金保険料は月額1万6260円であるが、私がサラリーマン時代に収めていた厚生年金保険料は月額10万5185円であった。

フリーランスになって6ヶ月、収入はサラリーマン時代に及ばないものの支出が9万円減ったので生活は全く苦しくない。今さら厚生年金に戻るのは嫌だ。

小泉氏に「厚生年金の異次元拡大」を再考して欲しいので、厚生年金の問題点を指摘しつつ「厚労省や企業が本気になれば今すぐできる、簡単な改善策」を提案したい。

ここがヘンだよ厚生年金

その1 会社負担というトリック

厚生年金保険料は、会社と本人が半分ずつ負担するということになっている。だから、サラリーマンは自分が負担するのは保険料率(2016年9月から)18.182%の半分の9.091%と思っている。

私の場合、サラリーマン時代の月収が60万円程で、5万2592円が天引きされていた。

なお総額は10万5185円なので、残りは心優しい会社様が私の代わりに支払ってくれていた・・・そんな馬鹿な話は無い。

私の給料も会社負担の厚生年金保険料も、両方とも会社が私の労働価値に対して支払っている。実際は、私の本当の月収が65万円程度で、そこから10万円を支払っていただけだ。これに騙されては、朝三暮四の猿以下だ。

この話は人事コンサルタントの城繁幸さんが度々指摘していたため知っていたが、フリーランスになるまでは実感できなかった。

提案 → 厚生年金の会社負担を給与明細に記載する。

サラリーマンは自分がどれだけの保険料を支払っているか、ちゃんと知る必要がある。今の制度は、真面目に政府を信じているサラリーマンのお財布から保険料をこっそり盗んでいるに等しい。

その2 消費税18%に相当する値上がり

小泉氏の父、純一郎氏が総理だった2004年の年金法改正により、それまで13.58%であった厚生年金料率は2017年まで毎年0.354%引き上げられ、18.3%になる。はっきり言ってこれはとんでもない値上がりだ。月収の5%増とは、月収40万円なら2万円の負担増だ。月の消費額が20万円とすれば、これは消費税10%増に相当する。安倍政権で消費税8→10%の増税を2回先送りしたが、全国のサラリーマンはとっくの昔から消費税18%だったのだ!

もちろん、この値上がりは続く。年金法では2017年に値上がりは止まることになっているが、また法改正すれば幾らでも値上げできる。そう、消費増税を再延期したようにね。

小泉氏に伝えたい。あなたの提言は「お金持ちの起業家・資産家が安心して暮らせるため、正社員だけでなく、派遣労働者やパート、アルバイトの方も含め、頑張って働く人だけ消費税を18%にします。」という残酷なものだ。

提案 → 厚生年金の保険料率は、消費税に換算して表示する。

これによりサラリーマンは自分がどれだけの保険料を支払っているか実感が持てるだけでなく、消費増税の議論がスムーズになることが期待できる。

その3 理不尽な標準報酬月額

厚生年金保険料の算出ベースとなる月給額を「標準報酬月額」と言い、これは4〜6月の給料で決まる。この算出には問題が多い。

・各種手当が含まれている。なんと非課税の通勤手当まで

・4−6月の月収の平均ということは(多くの方にとって)繁忙期の3−4月の残業代が含まれる

・62万円で上限に達するため、年収1000万円を超える高収入なサラリーマンほど負担が少ない

以上のように、実際の年収より高めに設定される上、高収入な人ほどお得になる不公平な制度だ。

なお、私はメーカー時代に特許の件数で毎年4月に表彰を受けており、ちょっとした賞金を貰っていた。しかし、賞金は5月の給与で課税清算されていたため厚生年金保険料のUPに相殺されてほとんど残らなかった上、しっかり奢らされたためマイナスだった。

提案 → 厚生年金の保険料率は、確定申告後の年間所得で決定する。

これにより保険料率の不公平感が解消され、また標準報酬月額の計算を行う事務が不要になり、日本年金機構や厚生労働省の残業が減る。

その4 貰えるのは月に1円?

ここまで書いたように厚生年金保険料はとにかく高い。しかし、これが大問題になっていないのは「将来、払った以上の年金が返ってくる」という期待による。しかし、本当だろうか?

確かに私の父親(69歳)は、月3万円程度の保険料負担の結果、現在は月額20万円強の支給を受けている。しかし、30年後の私は幾ら貰えるだろう?

河野太郎氏のブログによると、「厚労省は、制度に基づいて年金が支給できていれば、年金額が月に一円になったとしても、それは制度がしっかりと維持されているといえる。だから破綻ではない」らしい。

つまり、私はこれまでに厚生年金に月額10万円納めてきた結果、老後に月額1円の支給を受け取ることができる、と。これは酷い。

流石に1円は大袈裟にしても、1000兆円を超える政府債務、2015年の合計特殊出生率1.46、年間1兆円を超える社会保険費の増大等々を考えると、私が65歳になる2045年には雀の涙しか貰えないのは間違いない。

つまり、今の厚生年金は月額10万円の掛け捨て保険だ。どうせ掛け捨て保険だったら、月額1万6千円の国民年金がまだましだ。

提案 → 厚生年金と国民年金のどちらを支払うか、個人の意思で選択できるようにする

これならば、厚生年金は将来返ってくるからお得だと信じている人と、そうでない人で不公平が生じない。

厚生年金が本当にメリットがある制度なら、加入者が増えて保険料収入が増大するだろう。厚生労働省は「厚生年金は100年安心」と言っているのだから、まさかこの加入者増大につながる制度に反対するはずが無い。

 

以上が、私の考える厚生年金の今すぐできる改善策だ。

そして、この程度の簡単な改善ができないならば厚生年金はあまりにも不安な保険商品であり、とても加入をお勧めできない。サラリーマンは何とかして国民年金に移行すべきだ。

そして、給与明細の厚生年金額を見て溜息を付いている全てのサラリーマンに改めてこの言葉を送りたい。

「まだ厚生年金で消耗してるの?」

プロフィール
宮寺 達也
2005年から2016年まで大手の事務機器メーカーに勤務。特許を得意とし、10年で100件超の特許を取得。現在は、特許活動を通じて得た人脈と知識を駆使しつつ、フリーランスエンジニアとして活動中。

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