【映画評】溺れるナイフ

2016年11月07日 06:00
小説 映画 溺れるナイフ (講談社KK文庫)

東京で人気のティーンモデルだった美少女・夏芽は、ある日突然、父親の郷里である浮雲町に引っ越してくる。刺激のない田舎町で夏芽は、自分が欲する「何か」から遠ざかってしまったと落ち込んでいた。だが、その土地一帯を取り仕切る神主一族の末裔で、跡取りである美しい少年・航一朗、コウと出会い、強烈に惹かれていく。気まぐれでエキセントリックなコウだったが、彼もまた、夏芽の美しさに惹かれ、二人は付き合うようになる。「一緒にいれば無敵!」とさえ思っていた二人だったが、火祭りの夜にある悲劇が起こり、二人の心は離れてしまう…。

10代の男女のヒリヒリするような恋愛を描く青春ラブストーリー「溺れるナイフ」。原作はジョージ朝倉の人気コミックだ。閉塞的な田舎町を舞台に、他人とは違う何かになろうともがきながら生きる、夏芽とコウが、一生に一度の激しい恋に落ちるのは、まさしく運命だ。東京のティーン誌の人気モデルだった夏芽は田舎町で、自分の将来への入り口が閉ざされてしまったと感じているが、独特の輝きを放つ美少年コウの中に未来への可能性を見ることになる。夏芽とコウは、刹那の恋に身を焦がすが、外部からの予想もしない悪意があり、大きな試練にさらされていく。物語も魅力的だが、何しろキャストがいい。夏芽を演じる小松菜奈の少女特有の危うい美貌と、傲慢なまでの美しさと孤独感を漂わせる若き演技派の菅田将暉の化学反応が素晴らしい。さらに上白石萌音や重岡大毅(意外なほど好演!)も上手さをみせる。

あくまでも少女漫画原作のきらきらしたティーン映画なのだが、舞台は和歌山の熊野。神が宿るその特別な場所で、夏芽とコウの恋は、神話へと昇華していき、映画は唯一無二の作品になっている。インディーズ映画で経験を積んできた山戸結希監督は本作がメジャーデビューだそう。“壁ドン、顎クイ学園青春もの”とはまったく次元が異なる本作は、胸が苦しくなるほどのまっすぐな青春恋愛映画の秀作だ。

【70点】
(原題「溺れるナイフ」)
(日本/山戸結希監督/小松菜奈、菅田将暉、重岡大毅、他)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年11月6日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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