米大統領選もさることながら、議会選挙に注目

2016年11月07日 06:00

米議会

バロンズ誌、今週のカバーはアクティブ・ファンドの希望の星をフィーチャーする。パッシブ・ファンドが好成績を上げもてはやされされてきたが、突如としてアクティブ・ファンドが盛り返し7月1日以降は同ファンドの60%がS&P500を上回るパフォーマンスを遂げ、過去20年間で最高に至る。大手ファンドも上々で、年初来のリターンは運用資産768億ドルを抱えるAmerican Funds The Investment Company Of America(AIVSX)は年初来で9.2%、運用資産562億ドルのDodge & Cox Stock(DODGX)も9.5%を遂げた。他、詳細のリストは本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週はもちろん米大統領選並びに米議会選挙をテーマに掲げる。抄訳は以下の通り。


米大統領選におけるトレードの役割—Trade’s Big Role in the Presidential Election

ジェラルド・フォード元大統領の言葉を借りるなら、「米国がみてきた悪夢はもうすぐ終わる」。米大統領選は11月8日に投票を迎え、狂騒の年が幕を下ろしつつある。悪夢と言えば、共和党のトランプ候補と民主党のクリントン候補との差が縮小するに合わせS&P500は4日に9日続落(36年ぶりと1980年以来で最長、ダウは約3ヵ月ぶりの7日続落)した。何より絶望すべきは、8日の結果次第でどちらかが米大統領に就任するということだ。

いずれにしても、ホワイトハウスの住人は税制や政府支出を決定する権限を有しておらず米議会の承認が必要となる。その米議会といえば下院で恐らく共和党が過半数を維持し、上院は民主党が共和党から多数派を奪回するだろう。

ただしルーミス・セイレスのブライアン・ホリガン主席エコノミストによると、貿易問題は別だ。自由貿易に対し共和党も民主党も反旗を翻し環太平洋パートナーシップ協定(TPP)には両候補が反対を唱え、トランプ候補は北米自由貿易協定(NAFTA)の破棄を宣言し、同候補が米大統領に就任すればそれは可能だ。米大統領は関税、関税の割り当て、そのほか貿易障壁に関する裁量を持つ。

勝利に必要なマジック・ナンバー270に、トランプ候補がひたひたと迫る。

map

(出所:270 to win/Fivethirtyeight)

一方で、人民元は対ドルで6年ぶりの安値となる6.75元をつけ年初来で4%下落した。ただし、ドルはアジア諸国を含む他通貨で上昇中だ。中国の人民銀行が人民元安の方向へ誘導つまりドル買い・元売り買い介入を行っているかというとそうでもなく、逆に外貨準備高が9月末に前月比188億ドル減の3.166兆ドルに落ち込んだ通り、人民元の下落に歯止めを掛けるためドル売り・元買い介入を実施中だ。ブルームバーグによると10月には800億ドルものドル売り・元買い介入に踏み切ったとされ、同月24日週だけで190億ドルに及んだという。時を同じくして、NY連銀が管理する海外中銀の外貨準備高は11月2日までの4週間に300億ドル減少した。中国の動きを反映したかは定かではないが、米国債保有高ナンバーワンは中国である。

中国の貿易黒字や経常黒字を踏まえれば、人民元高に動く方が自然だ。しかし人民元から資金が流出中であり、中国では両替額が1人当たり年間5万ドルに設定されている事情を勘案するとどのようにして資金が流出しているのか想像をかき立てる。海外投資家がドル・キャリーで人民元を買っていたポジションを巻き戻した影響だろうか?。特に人民元を買い支えるため人民銀行がドルを供給する状況で、かつ米国の次回利上げが近いとなれば合点がいく。

もうひとつ、米大統領選の影響を受けている通貨がメキシコ・ペソだ。4月後半に1ドル=17.2ペソだったが、9月には20ペソにまでドル高・ペソ安が進んだ。 iShares MSCI Mexico Capped exchange-traded fund (EWW)も8月半ばから8%も沈んでいる。

S&P500は36年ぶりの9日続落を迎え、当時はFedがFF金利誘導目標を20%近くまで引き上げており今とは全く状況が異なる。仮に7日も下落すれば1975年7月以来の最長記録となり当時は10日間で7.5%沈んだ。最長記録は1966年の4月で、当時は6.6%落ち込んだものだ。

米10月雇用統計は12月利上げを正当化する内容だったが、RDQエコノミクスのジョン・ライディング氏とコンラッド・デクイアドロス氏は平均時給の上振れに注目し「賃金の上昇で利ザヤがさらに低下するのではないか」と懸念を寄せる。MFRのジョシュア・シャピロ氏は「積極的なコスト削減を加速させ、最終的に労働市場にも圧力が掛かってくる」と見込む。

今後は米大統領選より、政治に焦点を置くべきだろう。ルーソールド・グループのダグ・ラムジー氏が指摘するように、仮に米上下院のうちどちらかで与党が多数派を獲得すれば政策の実現性は40ヤードラインからのタッチダウンと同じくらい確率が高くなるだろう。しかし米上下院を野党が過半数を占めてしまえば、47ヤードラインに後退してしまい確率は格段に下がってしまう。いずれにしても、米大統領選が終われば視聴者はアメフトにチャンネルを合わせる機会が増えるだろう。


10月の為替報告書では、3つの項目(対米黒字が200億ドル超え、経常黒字がGDP比3%超え、年間の為替介入規模がGDP比2%超え)のうち1項目しか当てはまらなかった中国が残り2017年4月にも監視リストから削除される可能性が取り沙汰されています。筆者がお会いしたIHSの北京在住でアメリカ人の中国担当エコノミストも、監視リストから中国が削除される見通しを語っていました。

問題は、両候補とも中国には厳しい発言を繰り返している点。確かに選挙中は一部の国をスケープゴートにする傾向は高いものの、クリントン候補などTPPなどをめぐり明確に為替操作国への厳格な対応に言及済みであり、そう簡単にいくとは思えません。中国の人民元を下支えする介入を行っているとはいえ、米国債を売却されて米金利上昇を煽ってしまっては米国にとっても喜ばしくはないですよね。何より、エジプトが変動相場制ヘ移行しましたが、中国は引き続き管理相場制を敷いています。

民主党のハリー・リード米上院院内総務(ネバダ州)が引退を表明済みであり、チャック・シューマー米上院議員(NY州)が後任となるでしょう。シューマー議員と言えば、年季の入った中国強硬派で共和党のリンジー・グラム議員(アラバマ州)と連名で2005年に人民元を切り上げない場合の報復関税を盛り込んだ法案を提出していましたよね。

さらに今回の改選で両党の差は縮小すると想定すれば、2018年の中間選挙でそれぞれの多数派を獲得するチャンスが舞い降りる。民主党で改選数が多い(民主党が23議席に対し、共和党は8議席)事情を踏まえ、対抗する共和党も含め対中圧力を緩和しづらく、新政権がどちらでも中国への態度を軟化させるとは想定しづらいのではないでしょうか。対円以外で”ベンツェン・シーリング”が復活するのか、目が離せません。

(カバー写真:Roman Boed/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年11月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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