トランプ勝利は大手新聞と世論調査の敗戦

2016年11月11日 06:00

予想困難な非連続の時代

米大統領選に勝ったトランプ氏に敗北したのはヒラリー氏ばかりでなく、ヒラリーを支持した米大手新聞であり、結果を完璧に見誤った世論調査です。当初は泡沫候補扱いされたトランプ氏が勝ち、米国政治の王道を歩いてきたヒラリー氏が負けるとは、多くの日本人も考えなかったでしょう。

EU(欧州連合)からの離脱か残留かをめぐる英国の国民投票(6月)でも、世論調査は国民の意思の把握で間違えました。新聞、テレビの大手メディアは、世論調査で時代の流れを測定しながら、自らの主張、紙面のあり方を考えます。大手新聞とテレビという既存のメガメディアは、国民全体がかかわる国家的なテーマでの敗北が目立ちます。

恐らく過去からの流れの延長戦では、世論や民意を測定できない「非連続の時代」、あるいは「不連続の時代」に入ったのでしょう。既存メディアはどうしたらよいのか。ネット上に流れる無限に近い情報・メガデータをつかみ、分析・解析し、伝統的な手法を補強することが不可欠になると思います。

民意を追いきれない世論調査

米国における有力紙などによる世論調査は、圧倒的にヒラリー氏の当選を予想しました。「世論がそう予想しているということにすぎない」ではすみません。世論が違うことを予想しているのに、つかみ損ねたとなれば、メディア側の敗北です。なぜ民意をつかみそこなったのかが問題です。原因は様々でしょう。

社会の流れの変化が加速しています。世論調査のデータをみて、有権者が投票態度を修正する頻度が増していると思われる。投票日という最後の瞬間の予想をつかみ損なう。つまり投票行動を追いきれない。ニューヨーク・タイムズ紙は投票締め切り直前の段階で「84%の確率でヒラリー氏」と速報し、何時間後かに「トランプ氏」と修正した。

過激、誤った認識、無知が多いトランプ氏の言動をテレビや新聞が流すと、面白がられ、視聴率を稼げる。トランプ人気をメディアの報道自身が底上げしている。この場合も最後の瞬間動きがつかめない。トランプ人気に報道自体が加担していることに対するメディア側の反省は聞かれない。

伝統メディアとネットメディアの相互補完を

技術的な問題も多い。「固定電話への調査が主体で、携帯電話の所有者まで手が回らなかった」、「固定電話と携帯電話とでは、所有者属性が異なる」という原因はある。さらに、「地域、人種、所得で民意の違いが大きくなり、それを正確に把握するには、サンプル数をもっと増やす必要がある。回答率も低い。改善するには費用も時間もかかる」などの問題点も。

伝統メディアの新聞記事、社説、解説などが多くの読者に読まれていれば、民意に反映されたでしょう。ネット中心のライフスタイルをとる世代、所得層が増えています。私がよく行くスマホ・ショップで、新製品を購入した際、「試しに社説を見てみたい」と頼むと、「社説ってなんのことですか」と若い店員さんに逆に聞かれ、「えっ」と絶句しました。

米大學の調べでは、新聞が社説で「クリントン支持」と表明したのはニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど57紙でした。「トランプ支持」はわずか2紙だったそうです。主義、主張としては「クリントン支持」が正しいと思います。それなら有権者に大きな影響を与えたかなると、そうはなりませんでした。トランプ氏は有力紙にも勝ったわけで、メディアは自らの敗北の意味をどう考えるか、ですね。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年11月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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