一生安泰な会社を探すのはやめよう --- 宮寺 達也

2016年11月11日 11:30
リストラ苦悩

ある日、突然のリストラ宣告も。大企業とて安泰ではない時代だ(編集部)

ニコンとリコーがリストラを発表、キヤノンが業績を下方修正というニュースを見て悲しい気分になった。日本の精密機器メーカーはライバルが簡単には真似できない高い光学技術を武器に、デジカメ・複合機の分野で世界シャアのトップを長年走っており、業績も比較的好調であった。しかし、いよいよ落日が始まったと感じる。

なお、労働政策研究・研修機構の調査結果によると2016年の若者は87.3%が「終身雇用が素晴らしい」と考えており、日本の精密機器メーカーに「終身雇用を期待」していた今年の新入社員や来年入社の内定者は「入る会社を間違えた」と後悔していそうだ。

私も今年まで同業の精密機器メーカーに勤務していたので、他人事とは思えない。あのままメーカーに残っていたら、私もリストラされることになったかもしれない。

そこでふと思ったのが、もし、大学生(正確には大学院生)の私が違う会社に就職していたらどうなっていただろう?

もしかしたら、今も終身雇用を期待しながら、安定したサラリーマンエンジニアをしている未来があったのだろうか?

2004年の就職を振り返る

私が就職活動を行ったのは就職氷河期終盤の2004年である。理系の大学院であったので、就職は学校推薦の枠を学科内で勝ち取ることがメインであった。その当時は特に電機メーカーが絶好調であったので、何とか学校推薦を勝ち取れば一生安泰だとみんなが思っており、倍率は高かった。

あいにく私は高倍率の人気企業の学校推薦は勝ち取ることができず、当時は比較的倍率が低かった精密機器メーカーへ入社した。

では、もし2004年の私が思いのままに人気企業を就職先に選ぶことができたら、今の私はどうなっていただろう?

なお、2004年の理系男子:就職人気企業ランキングは以下の通りである。

  1. トヨタ自動車
  2. ソニー
  3. パナソニック
  4. ホンダ
  5. 富士通
  6. 日産自動車
  7. キヤノン
  8. シャープ
  9. NEC
  10. サントリー

2004年の人気企業は、それ以降どうだった?

今になって2004年の人気企業を眺めるとずいぶん違和感を感じる。それもそのはず、2017年の理系男子:就職人気企業ランキングのトップ10に残っているのは「トヨタ、ソニー、パナソニック」の3社だけである。特に2016年に債務超過に転落し、鴻海に買収されたシャープが名前を連ねているのは隔世の感がある。

なお文系のランキングを見ると、2010年に経営破綻したJAL、現在過労死自殺が問題になっている電通がランキング入りしているので、さらに隔世の感がある。

では、この人気企業に私が入っていたら、順風満帆なサラリーマン生活であっただろうか?

その1 ボーナス・賃金カットを回避できたか?

2008年のリーマン・ショックにより、人気トップ10企業はもれなく業績悪化を経験している。調べると、実に8社が「賞与カット」を実施したことがわかった。

さらに深刻な「賃金カット」はどうか。調べると、5社で賃金カットを行ったことがわかった。特にシャープは一般社員2%(2015年8月から継続中)、NECは一般社員5%(2012年の9ヶ月間)と、管理職・一般社員を含む全社員の賃金カットを実施している。

人気トップ10企業に入れたとしても、簡単に「高収入でウハウハ」とはいかなかったようだ。

その2 リストラを回避できたか?

人気トップ10企業が2016年までにリストラ(早期退職や配置転換による人員削減)を実施したか否かを調べたところ、実に6社が実施していたことがわかった。現在も業績好調な自動車メーカーはまだ良い方だが、電機メーカーは全てでリストラを実施していた。

もし私が入社したとしても、実施時はまだ若いのでリストラ対象外であった可能性は高い。しかし、「この会社は定年まで雇ってくれる」という期待は裏切られ、「自分もいつかリストラされるかもしれない」という恐怖を感じながら現在も働いている可能性は高そうだ。

終身雇用が人気みたいだけど、この会社に入ったら一生安泰とか無い

というわけで、私は自分の希望のままに人気企業に入社できたとしても、順風満帆で安定したサラリーマン生活を送ることは難しかったようだ。

しかし、正直には不本意ながら入社したメーカーで師匠と仰ぐKさんの教えを受け、特許を10年で100件取得できるまで成長できたのだから、独立した今となってはあの就職で良かったと思える。

そして現在、2018年の新卒採用に向けて大学3年生・大学院1年生の君たちは企業の情報収集を始めている頃だろう。君たちの多くは「終身雇用希望。どこの会社に入れば60歳まで雇ってくれて、退職金を一杯もらえて、一生安泰だろうか」と優良企業を探していることだろう。

そんな君たちに私の経験を踏まえてメッセージを送りたい。

「この会社に入ったら一生安泰」というものは、昭和の幻想だ。今好調な会社に入ったとしても、ずっとそのままの可能性は低い。

むしろ「一生安泰」と思える会社に入社したら、精神的に追い込まれた時に「ここから逃げても、もっと悲惨な人生が待っている」と無理な我慢をしてしまう恐れがある。まさに電通がその例だ。

就職はゴールではなく、あくまでスタートだ。好奇心と向上心を持ち続け、変化を恐れず立ち向かう姿勢を維持することが、あなたの人生を安泰にするだろう。

 

宮寺達也 パテントマスター/アゴラ出版道場一期生
プロフィール
2005年から2016年まで大手の事務機器メーカーに勤務。特許を得意とし、10年で100件超の特許を取得。現在は、特許活動を通じて得た人脈と知識を駆使しつつ、フリーランスエンジニアとして活動中。

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