トランプ革命:恐怖が強すぎて世界は冷静に対処

2016年11月11日 10:00

世界を恐怖に陥れたトランプ大統領の悪夢。フランスの駐米大使は「世界が壊れていくのをいま見ている」とまで評した。もはやフン族の来襲のような反応だった。

しかし、世界は意外に平穏。なぜか。それは、衝撃があまりにも強すぎて、冷静に対処せざるをえないのだ。そして、それはいまのところ、成功しているようだ。

もうひとつは、世界のリベラル・メディア(日本のは極左メディアだから関係なし)のアンフェアなネガキャンほど酷いことにならないだろうという安心感の拡がりもある。

それから、上下両院で共和党が多数を占めたので、共和党の主流派の力が強まり、それが安定をもたらす要素になりそうだ。

政権移行が円滑に進むのは、アメリカ民主主義の長所だ。独立以来、いちどもクーデターがない。選挙結果に疑義があっても分裂につながることなく、敗れた候補者は温和な抗議に留めた。(ケネディが当選したときでいえばイリノイ州でマフィアのボスをケネディの父親が動かして結果を操作したという可能性まであったが)

オバマはさっそくトランプをホワイトハウスに招待した。オバマにしてみたらオバマの業績をトランプが変更するにせよ、オバマ攻撃をことさら強く打ち出すほど劇的なものにするよりは、オバマ支持者取り込みにかかってくれたほうがベターだ。

オバマにとって役立たずだったクリントン夫妻に配慮なんぞもはや要らない。

トランプが否定しようとしているオバマの業績の三つの業績は以下の三つが最大の焦点だ。

①オバマ・ケア・・・上手くいっていないのでどっちにしても見直し必要。トランプの立場だと上手くいっていないという前提で手直しはかえってやりやすいかも。

②気候変動・・・パリ条約はしょせん努力目標だから完全否定しないことを期待。

③TPPなど経済連携協定・・・NAFTAや米韓も見直しの可能性。どこかで全体的な整合性が取られることを期待。すでに結んだものはどのままではおかしい。少し時間が必要だがTPPは今後の検討の基礎としては維持されるだろう。

安倍首相が17日にさっそくNYで会談することが決まるなど準備はそこそこできていたし、もともと、共和党と日本はうまくいくのでそれほど心配する必要はないだろう。むしろ、アメリカのリベラル派とのパイプを将来に向けて維持することが大事。

インフラ整備は実業家的なセンスでやるとすれば存外にうまくいくかも。アイゼンハワーの最大の功績は高速道路。日本や欧州に比べて劣っているような基礎インフラの整備は成果を上げるだろう。世界的なデフレマインドが修正される?

最高裁の判事の任命は保守派を容易に任命できる。結果、しばらくは、最高裁は保守派支配でそれなりに落ちつく。

IT企業はヒラリー支持を明確にしすぎて報復されるだろう。そのなかでもトランプの宿敵といわれるのはアマゾンとワシントン・ポストのオーナーであるベゾス。これは面白い対決になりそうだ。

安全保障については無関心なので中国はラッキーと思っている。しかし、そのことで日本と韓国が軍拡に走る可能性を心配。日本は①トランプには中国がアメリカを脅かす存在になることを阻止することの重要性を丁寧に説得し、②中国には日米安保が中国にとっても結局はとくだと周恩来・キッシンジャー会談以来の認識を思い起こさせ、③しかし、日米安保体制が動揺するなら独自の軍事力強化は不可避という立場を取ることで、できる限り、現在の体制を動かさなくて済むようにすべき。

そのとき、野党が③に過度に反対することは国益を非常に傷つけるだろう。中国などにも②の論理を納得させることを野党はつとめるべきで、間違っても、③のために中国と手を結ぶなどすべきでない。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学大学院教授

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