バロンズ:トランプ政権発足で、金融市場への影響は?

2016年11月14日 06:30

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バロンズ誌、今週はカバーに”トランプの政策、経済成長を促進か”を掲げる。共和党のトランプ候補の優勢が鮮明になったタイミングで、ダウ先物は一時900ポイント(4%)急落したが17,500p付近で底打ちした。S&P500などサーキット・ブレーカーが作動した事情もあり真夜中に下落した後で、トランプ候補の勝利演説を受けて下げ幅を急速に巻き戻す展開に。そのまま米株はラリーに突入、11日こそ下落したもののS&P500は3.8%高で週を終えた。投資家にとって問題は、トランプ政権が成長をもたらすか否か。マーケットの識者の間では、1)対中など貿易政策は批判を継続も小幅な調整、2)共和党による上下院での多数派確保で政策の行き詰まり打開、3)減税効果を通じた一部の多国籍企業による本国への資金環流——といった見通しを基に楽観寄りへ傾く状況だ。ただし自由貿易を妨げ、トランプ新大統領の傍若無人な性格が全面に出てしまえばリスクになりうると指摘する。詳細は、本誌をご覧下さい。

フィーチャー欄では、新債券王との誉れが高いダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏の見方を取り上げる。ガンドラック氏は、今年1月の段階からトランプ候補の勝利を正確に予想した数少ない投資家の一人。そのガンドラック氏は「大衆主義は止まらない」とし、インフラ投資拡大を軸に米成長率はトランプ候補が掲げた4%を超え名目で6%もかくやとのシナリオを描く。ただしインフレ率は3%台を視野に入れ、債券にはネガティブと予想。国債ではなくインフレ連動債(TIPS)を選好すると明かす。同氏は数年先の米成長率に楽観的な半面、米国の将来をめぐる予想は悲観寄り。減税と支出拡大による財政赤字拡大を受け、2020年の米大統領選では社会保障と医療保険などが注目議題になると予想した。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートも、もちろんトランプ新政権をめぐる考察を掲載する。抄訳は、以下の通り。


米株、トランプ政権誕生をにらみ下落を経て急伸—Stocks Stumble, Then Soar, on Prospect of a President Trump.

11月8日の米大統領選でトランプ候補の大統領就任が確実となり、S&P500先物は時間外取引で5%安をつけサーキット・ブレーカーの引き金を引いた後、明けて9日には2%高へ転じた。ダウも、時間外取引での安値から1,200ポイントもの急変動を記録する始末。その間に、米10年債利回りは17bp低下した後で37bpも急伸し2%台に突入した。

なぜマーケットはこれほどの急変を遂げたのか。一部の市場関係者の間では不透明性の時代に突入したとの思惑より、”レーガノミクス2.0”への期待が高まったと言えよう。それはつまり、ブル相場を意味する。またトランプ候補の勝利宣言が市場の安心感を誘い、株高を促した。世界の株式市場には1.3兆ドルの資金が流入したとされ、ダウは11日までの週にて5年ぶりの上げ幅を遂げた。その陰で、トランプ候補と溝があるIT関連のフェイスブックやアマゾン、ネットフリックス、アルファベットといったFANGを中心にIT銘柄は下落した。債券市場では、世界各国で1兆ドルの資金が流出した。

トランプ候補の勝利宣言だけでなく、共和党が上下院で多数派を制し”ねじれが解消”したことも好感したに違いない。トランプ候補のインフラ投資を含めた経済政策が通り、JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは財政支出を通じ向こう2年間で成長が1.5%押し上げられると予想する。ただし、財政赤字は2倍に膨らむ見通しだ。

バロンズ、米大統領選直後のカバーはこちら。

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(出所:Barron’s)

財政支出だけでなく、トランプ候補は所得税の区分を現行から変更し3つに縮小し最高税率を39.6%から33%へ引き下げる。また公約通り進めば、悪名高き代替ミニマム税(所得が多い場合の世帯に関わる税金の計算方法)の撤廃、法人税の35%から15%への引き下げなどが加わる見通しだ。チェイニー元米副大統領はレーガン政権の政策を基に財政赤字は問題ないと立場だが、いずれ赤字拡大は政治的な影響をもたらすだろう。財政出動で利上げの頻度も、変化しかねない。Fedは12月に利上げする見通しでFF先物の織り込み度は84%、2017年の利上げ回数も1回にとどまるが、インフラ投資拡大で利上げ頻度が上がる可能性も捨て切れない。トランプ・ユーフォリアは長続きするか疑問が残る。


主流メディアや世論調査では全く予想できなかったトランプ候補の勝利で、政府支出拡大・減税の合わせ技が予想されます。米株高・米債安・ドル高をもたらしたように、今後は減税策やトランプ版・本国投資法(HIA)の導入で米株高・ドル高が継続する公算。ただし 1)急激にシフトしたポジションの反動、2)トランプ候補勝利後にも関わらず、フィッシャーFRB副議長がゆるやかな利上げ示唆(財政支出拡大でも利上げ頻度変わらずか)、3)エマージング市場の下落——を受けて米株安・米債高へトレンドが変化しないとも限りません。

肝心のドル高も米国企業の競争力を削ぐだけに新政権が放置するとも考えられず、具体的に実現するかは別として、トランプ政権が中国をターゲットとした2017年版プラザ合意の必要性をちらつかせるケースにも注意したいところです。米財務長官候補で米下院金融サービス委員長を務めるジェブ・ヘンサーリング下院議員(テキサス州)は、2010年に米下院で中国人民元批判が強まり、中国など通貨安誘導国製品への関税引き上げ案が可決した当時「賢明ではない政策だ」、「(金融危機後まもない)厳しい経済環境下、貿易戦争を仕掛ける」と警告しました。翻って足元は米経済が巡航速度で拡大し、危機から脱却済み。ヘンサーリング議員のウェブサイトでは、中国とロシアを「経済と安全保障の観点で米国に挑戦する国」と名指ししているのも気掛かりです。

(カバー写真:My Big Apple NY)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年11月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

 

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