オリンピック成功への提言 ― レガシー実現に向けて(11月1日公表分)

2016年11月19日 11:00

以下は、11月1日の都政改革本部会議で調査チームが提言したオリンピック成功のための提言です(当日の配布資料を再掲)。(正式なものは都庁のHPにも掲載)。

構成は、「はじめに」の後は
「Ⅰ.改めてオリンピックの難しさについて」
「Ⅱ. 発想の転換 -1964 again を超える-」「Ⅲ. 今後に向けた提言」が本編で
そのあとに「別冊付属資料(競技のレガシー計画)」として水泳の事例を紹介した。

以下、提言の原文を掲載する。


はじめに
調査チームは9月29日に、2020大会の準備に向けた様々な課題を提示した。その後、10月に入り、都庁、組織委員会、IOCにおいて、課題解決への動きが始まった。
-3つの恒久施設の建設計画の見直し
-4者協議の開催(11月末)  など

しかし、これらの見直しは総予算の抑制を主目的としたものであり、大会の成功のために見直すべき事項はさらに多岐にわたる。例えば、
-費用/投資に見合ったレガシー/効果の明確化
-レガシー実現のための組織・体制づくり  など
そこで、調査チームでは、大会の成功とその後のレガシーを具現化させるための提言をまとめた。

Ⅰ. 改めてオリンピックの難しさについて

2020大会の準備は、日本とIOCの双方にとってたいへん大きなチャレンジ。関係者も都民(国民)もそのことを理解し、成功に向けて力を合わせていく必要がある。

○オリンピックは極めて複雑なネットワーク構造の上に成立。通常の企業や自治体のような閉
じた組織と同じガバナンスの構築は困難。
-オリンピックは民間主体の「運動」として政治・外交との絶妙な距離の上に、時間をか
けて権威と信用を確立
-200以上の国、30弱の国際競技団体が参加
-開催都市でも、自治体、政府、当該国のオリ・パラ委員会、競技団体の間の利害調整が
必要

〇加えて、近年の大会では、民間からの調達資金を凌駕する公的負担が発生
・開催都市の住民の理解獲得に苦労
・IOC/組織委員会は、政治的に中立な民間(私的)団体
・民(私)の主張と官(公)の論理がぶつかる構造
・開催都市(自治体)と政府の、納税者と有権者に対する説明責任

○2020大会は日本にとってのみならず、招致の辞退が相次ぐオリンピックの持続可能性
(sustainability)にとって大きな試金石
-人口過密の巨大都市の内外に会場が配置
-震災リスクと世界的なテロのリスク
-費用の増大と開催の意義/レガシーについての住民(納税者)の理解の獲得が課題

〇これまでの大会準備で起こった問題は、以上のオリンピックの本来的な難しさにも由来
・・・今後も発生する様々な問題に根気強く対応していく必要がある
・問題の連続:国立競技場問題、エンブレム問題、さらに今回の総費用/会場見直し問題
・国民(都民)の間には、高い期待感の一方で運営体制への懸念も併存
・どこの都市でもある程度の問題は頻発
⇒情報公開とていねいな説明が必須

Ⅱ. 発想の転換-1964 again を超える-

2020大会は、大会自体の成功だけでなく、その後のレガシーの実現を目的として設計する必要がある。

○準備期間中から開催費用に見合ったレガシーの実現に向けた工夫が必要
・施設のレガシーに加え、アスリートや人々のレガシー(引退後の活躍、競技人口の増大)
も追求
・オリンピックの成果と費用に対する内外のマインドセットの転換が重要

○競技団体や都民の参画
・競技団体は、要望・陳情だけでなくスポーツの普及や運営に参画すべき
・都民(国民)がスポーツを題材に“グローバル化”や“税金の使途(Valuefor
Money)”について考えるよい機会
・オリンピックは、東京都とIOCが共通の目標に向けて協力するいわば世界規模の
PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)

○都庁の主体性:
今後新たな問題に直面した場合は、開催都市の都庁と開催主体のIOCが密接に協議し、
スピーディーな意思決定をリードすべき
-開催資金の保証の主体は、都庁即ち都民
-従来の都庁は、基本的に組織委員会経由でIOCと協議
-組織委員会は、IOCの代弁者であり、かつ都の出資法人でもある

○プロセスの透明化と情報公開:
都庁、IOC、組織委員会は予算と負担、準備プロセスに関する情報を、極力情報公開し、
その上に関係機関や都民(国民)との信頼を構築していく必要がある
-大会開催の総予算とその内訳を、速やかに都民(国民)に公開すべき
-施設の建設と運営においては、国内/国際の競技団体の意向、レガシー形成への貢献、
運営・組織管理費用の負担状況を常に公開すべき
-IOCと協議の上、「開催都市協約」は情報公開すべき

Ⅲ. 今後に向けた提言

1 予算情報の早期開示
-組織委員会は都と連携し、12月の総予算とその内訳(V1)公表に先立ち、速やかに総予算
とその内訳を開示すべき
-順次、推移を公表、アップデート

2 共同CFO体制
-総予算は、組織委員会と都が共同で管理する体制とすべき
-最終的に赤字が発生した場合の都の負担リスクをモニタリング
-必要に応じ、都はFA(ファンクショナル・エリア)や各県の施設を含む全予算項目の
精査に参画

3 都、各県、国の分担の明確化
-都がイニシアチブを発揮し、3者協議(都、国、組織委員会)を推進
-組織委員会、都、各県、国が負担する分野と金額の試算モデルを早く示すべき

4 調整会議の刷新と事務局機能の強化
-都庁、組織委、JOCから事務局メンバーを任命(兼務可)
-事務局会議を定期的に開き、実務レベルで協議・決定
-定期的な記者会見

5 都庁と組織委員会の役割分担の見直し
-仮設施設の建設と人材供給のあり方(出向)
-都庁からの出向人材とその役割の見直し

6 都市協約の公開
-IOCと協議を経て都市協約の情報公開
-リオとロンドンは公開済み

7 施設の後利用計画に加え、今後、アスリートや地域との連携によるソフトレガシーを検討
-施設の後利用計画を速やかにブラッシュアップ
-今後アスリートや競技団体との連携による、施設を活用した競技面のソフトレガシーを
検討(オープンディスカッションにより競技の普及やアスリート支援等について検討)
-施設運営への競技団体の参画方策を検討
-地域の市民利用施設(体育館・プール等)や学校等との連携プログラムと、地域貢献策を
検討

8 「レガシー2020」(財団)の発足
-大会前からのスポーツ振興
-各競技団体のレガシー戦略づくりを支援


編集部より:このブログは慶應義塾大学総合政策学部教授、上山信一氏のブログ、2016年11月18日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた上山氏に感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、上山氏のブログ「見えないものを見よう」をご覧ください。

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上山 信一
慶應義塾大学総合政策学部教授

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