北海の石油生産者たちは復活に向け新しい進路を描いている

2016年11月22日 06:00

弊ブログ#266で、コスト削減が進んでいる、という記事を別ブログで紹介する、と書いたのはこの記事(”North Sea oil producers chart a course for revival” Nov 21, 2016 around 00:00 Tokyo time)のことだ。「資本投資再開の噂」というのは個人的に聞き及んだもので、この記事が裏付けてくれるのかと思っていたが、きちんと読んでみるとなかなか一直線にはつながる話ではなさそうだ。メジャーが撤退している北海に、業界外の投資家をバックとした新たな投資が流れ込んでいる、というニュースだ。

それなりに現在の石油業界の事情をうかがわせるものなので、要点を次のとおり紹介しておこう。

・(スコットランドの)アバディーンの鉄道線路と大通りに挟まれた安いレンタル・オフィスに、著名なブラックストーン(Private equity fund)とシンガポール投資公社により設立された石油会社の本社があるとは思えないだろう。飾り気のない事務所の殺風景な雰囲気は、今月、オーストリアのOMVから北海鉱区を10億ドルで購入し、メジャーのBP、シェル、シェブロンなどになったSiccar Point Energyの本社と聞くとさらに驚きの対象だ。

・アシスタントがいない場合には、お客のために自らお茶を入れる最高経営責任者のJonathan Rogerは「我々はまだ立ち上げたばかりだから」という。

・2年前の価格暴落以来、耐乏の空気が漂っている英国石油産業の中心地にぴったりの質素な取り組み方だが、この2年間で最大の北海鉱区取引であるSiccarの資産購入は、コスト削減とともに北海に投資が戻ってくるかもしれないという希望を膨らませる。

・北海はコストの高い、古い油田なので、業界が「lower for longer」という市場環境に対応できるかどうかのリトマス紙となっており、ここに投資が戻ってくることは強気のサインである。

・英国の業界団体Oil & Gas UKによると、英領北海の平均操業コスト(operational cost)は価格下落前のバレルあたり29ドルから16ドルへ45%下落している。コスト削減は、主にレイオフと下請けサービス会社に安い価格を押し付けていることから生まれている。また抗井デザインの簡素化や必要な船舶の共同購入など、仕事のやり方の効率化も功を奏している。

・シェルのCFOであるSimon Henryは「世界中で生産性が改善しているが、もっとも顕著なのが北海だ」という。

・ノルウエー北海側でもコスト削減は進んでおり、この30年間で国内最大の発見といわれるJohan Sverdrup油田の開発コストも大幅削減に成功しており、25ドル以下でも利益が出るといっている(本件については弊ブログ#233「スタットオイル:25ドルでもやっていける」8月30日参照)。

・英領北海における資本投資(capital expenditure)は、2014年の148億ポンドから今年の90億ポンドまで40%減少している。過去5年平均では年に11の油田発見があったが、今年は1件のみであり、掘削坑井数では1970年代以来、最低水準である。

・(中堅石油開発会社である)Premier OilもEnQuestも、北海の開発案件で25%程度のコスト削減に成功しており、他のメジャーが手がける油田等とともに2年以内には生産が開始する見込みで、2015年に15年ぶりに前年比増産となったことに継ぎ、もう一度増産に転ずるだろう。

・然しながら業界関係者は、さらに探鉱投資が行わなければ短命に終わるだろう、と警告している。EnQuestのNeil McCullochは「英国では約4分の1しか代置(replace)されていない」「もっと高い必要がある」という。

・北海がピークを迎えたことは疑いがないが、1960年代からすでに430億バレル生産しているが、まだ100~200億石油換算バレルあると見られている。この中には、Siccarが購入したRosebank鉱区が含まれており、何十億ドルもかかる開発に関し、オペレータであるシェブロンの承認を待っているが、本件はメジャーオイルが英国北海にどれだけの魅力を感じているかのテストとみなされている。

・北海は、メキシコ湾の2倍の生産コスト(lifting costs)がかかり、中東やシェールオイルと比べるとその差はさらに大きなものであり、それがシェルなどが英領北海から撤退している理由となっている。

・然しSiccarの購入例に見られるように、ファンド筋の中には北海はまだ魅力ある収益が期待できると見ているところも多い。

なるほど。
まだまだ方向性ははっきりしないな。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年11月21日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

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岩瀬 昇
エネルギーアナリスト

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