豊洲移転の1年延期は最悪。小池都知事は君主豹変を --- 宮寺 達也

2016年11月26日 06:00
豊洲市場

延期が決まった豊洲新市場(東京都サイトより)

ヤメ検弁護士として有名な郷原信郎氏がコンプライアンスの観点から小池都政を批評した記事が話題を呼んでいる。私も懲戒処分についての批評記事をアゴラに投稿させていただいたが、その問題についてもより詳しく解説されており、大変勉強になる。

そして、その郷原氏の記事に対して、早川忠孝氏がアゴラに感想記事を投稿された。早川氏は小池応援団を標榜されており、「豊洲移転の1年延期を最悪の結果と決めつけている。どこか変だよ」と書かれている。

都政を議論する人間として私は大変未熟者ではあるが、同じく小池都知事を応援している一人として早川氏の意見に反論させていただきたい。豊洲移転の1年延期は最悪と考えるからだ。

その1 経済損失が発生し、都民の税金で負担する

まず、豊洲移転延期で確実に経済損失が発生する。数値が明確なものとしては

・稼働しない豊洲の維持費:700万円×365日=25.6億円

・市場業者の損失額:4億3500万円×12ヶ月=52.2億円

と、1年間で78億円の損失が発生する。これを都民の税金で負担しなければならない。

なお、市場業者への損失について小池都知事は「市場会計」を原資に、税金負担無しで補償の意向を示しているが、無理筋だ。

市場会計は、築地を含め都内に11ある中央卸売市場の業者が支払う使用料が大半を占めている。市場業者にとってはいわば「自分達のお金」だ。この「自分達のお金」を、都が判断した結果で発生した損害に使われるのは納得できないだろう。

実際、築地東京青果物商業協同組合の泉未紀夫理事長は「自分たちが払ったお金が、自分たちの補償に回されるのは納得できない」と反発している。※参考・毎日新聞

郷原氏も記事で指摘しているが、市場業者への補償に市場会計を使用することは困難であり、都民の税金が投入されることになるだろう。

さらに、豊洲市場への風評被害による損失、その2に記載する環状2号線延期による経済損失が発生する。まだ金額は定かでないが、数千億円のオーダーになると推測している。

その2 環状2号線がピンチに

豊洲移転延期により、築地市場跡地に建設予定の環状2号線:汐留ー豊洲間の開通が大幅に遅れる。当初の予定では、2016年12月に築地市場跡に暫定道路が開通し、この暫定道路を活用してオリンピック選手村の工事車両の移動、BRT(バス高速輸送システム)開業を目指していた。

このまま環状2号線が開通しないと、一日2538台に及ぶと想定されているオリンピック選手村の工事車両が、全て晴海通りを通ることになる。晴海通りは現在もで渋滞、騒音が問題になっている。そのため、さらなる渋滞は多方面に経済損失を発生させ、騒音悪化は近隣常民への人権問題になる。

このまま環状2号線が未開通だと、オリンピック選手村工事が間に合わなかったり、BRT開業が間に合わなかったりと、東京オリンピックの準備にリスクが発生する。

また、晴海通りの環境対策の追加工事、オリンピック選手村の工費増大、大会後の跡地を利用したマンション販売に悪影響といった損失が発生する。これはまだ金額は定かではないが、数百億円の経済的損失になると推測する。

また、環状2号線の未開通はオリンピック選手村の問題に留まらず、数兆円の経済効果を見込む湾岸エリアの再開発に多大な悪影響を及ぼす。その1割の経済効果を毀損すると考えれば、経済損失は数千億円のオーダーになる。

(出典:東京新聞乗り物ニュース東洋経済オンライン日本経済新聞

その3 豊洲移転延期によるメリットが無い

このように、豊洲移転延期には多大なデメリットがある。しかし、メリットで相殺できるならば私は反対しない。そのメリットが見つからないのだ。

経済効果

豊洲移転が延期になっている現状、老朽化した築地市場を使い続けることになる。築地市場の売り上げはここ10年間売上額が4100〜4400億円と横ばいであり、1987年のピークから4割以上減少している。このまま築地市場を使い続けても、劇的な売り上げ増が見込めるとは考え難い。それどころか、豊洲の土壌汚染の議論に伴い築地の汚染状態も明らかになりつつあるので、築地市場の売り上げは減少するだろう。(出典:東京都中央卸売市場

安全

豊洲移転が延期するきっかけとして盛り土問題の発覚があった。これにより本当に豊洲は安全なのかと言う懸念が発生した。豊洲市場の安全に問題があれば、経済損失は止む無しという考えもわかる。しかし、現在の豊洲市場の安全面は問題無いと私は考える。

それは盛り土問題について、市場問題プロジェクトチームの第1回会合で佐藤尚巳専門委員が土壌汚染について問題無いことを、第2回会合で小島敏郎座長が耐震性について問題無いことを明言しているからだ。

また、地下水から環境基準越えのベンゼン、ヒ素が検出された問題も、排出基準は下回っており、施設稼働には問題が無いと考える。多くの識者が指摘しているように、豊洲の安全については問題無いと結論が出ており、これ以上移転を延期する理由は無い。

またどう考えても、老朽化が進み耐震性に問題があり、アスベストの環境問題が存在する築地に留まるよりメリットが大きい。

都政ガバナンス

移転延期賛成派(豊洲問題で小池都知事を批判しない人たちも含む)が必ず言うのが、「議会答弁、情報公開を始め、都政ガバナンスに問題があった」である。瑣末な問題とは思うが、問題の存在は否定しない。しかし、移転を延期する理由にはならない。

都政ガバナンスの問題は豊洲を移転した後に議論すれば良い話であり、移転延期をしても何も解決しない。

以上のように、豊洲移転には幾つかの問題はあるが、延期して解決する問題は無く、移転延期にメリットが無い。移転延期賛成派は瑣末な問題を針小棒大に騒ぐのでは無く、数値で移転延期のメリットを示して欲しいと思う。

小池都知事は君主豹変を

私は小池都知事のファンである。都知事選挙やリオオリンピックで見せたパフォーマンスは素晴らしかったし、これまでの政治活動の実績にも敬意を表する。初の女性都知事として、女性活躍が進まない日本で大勢に勇気を与える存在だ。女性活躍を後押しし、日本を元気にするためにも小池都知事には初の女性総理を目指してさらに頑張って欲しい。

だからこそ、豊洲市場移転という東京都政の数ある問題の一つで誤った対応を行い、多大な政治的エネルギーを消耗するのは心配でならない。

多くの識者が今回の豊洲問題について、小池都知事の対応に問題があると指摘している。小池都知事はこの批判に真摯に耳を傾け、豊洲移転延期を撤回して欲しい。

君主は豹変するものである。豊洲移転延期を撤回すれば一部の熱狂的支持者からは批判の声は上がるかもしれないが、それより遥かに大勢の支持者を獲得できると私は信じている。

 

宮寺達也 パテントマスター/アゴラ出版道場一期生
プロフィール
2005年から2016年まで大手の事務機器メーカーに勤務。特許を得意とし、10年で100件超の特許を取得。現在は、特許活動を通じて得た人脈と知識を駆使しつつ、フリーランスエンジニアとして活動中。

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アゴラ出版道場、第1期の講座が11月12日(土)に修了し、出版社と面談が決まった一期生もおります。

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なお、次回の出版道場は、来春予定しています。

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