改革の痛みが始まり、サウジ副皇太子のハネムーンは終わった

2016年11月26日 11:00
サルマン副皇太子

モハマッド・ビン・サルマン副皇太子(Wikipediaより:編集部)

昨日(11月25日)の夕方、某所で11月30日のOPEC総会はどうなるだろうかという話をしていた。「サプライズはありますかね?」との質問に、「経済合理性だけを考えればありえないが、もろもろの政治要因は別問題だから・・・」と、最近のサウジの事情を話していた。気がついたら11月23日のFTの報道内容を紹介していたのだ。

そうか、この「事情」は結構根深い、重要な問題だ。エネブロで紹介する価値があると思いついた。

記事は “Honeymoon is over for new Saudi leader as reform pain kicks in” というタイトルで、Simeon Kerrがリヤド発で書いている。サブタイトルは “The kingdom is on the brink of its first non-oil sector recession in three decades” となっていることから、内容はほぼ推察できる。

記事は次のような書き出しで始まっている。

「何十万人もの国費留学生の一人として米国で機械工学を学んだ30歳のAhmedは、帰国したものの仕事が見つからず、警察に罰金を課せられるリスクを負いながら、今日もリヤド空港で白タクの客引きをしている、彼は『景気が悪いんだ。どこに仕事があるんだい?』『友達はみんな政府の文句を言っているよ』という」

本当の話なのか、あるいは架空の話なのかは判然としない。
だが、モハマッド・ビン・サルマン副皇太子が主導している国家改造計画が、スムースに離陸できていない様子が象徴的に描かれていると言えるだろう。

さて、以下に主な記事内容を紹介しておこう。

・(書き出しで紹介した)Ahmedの世代の苦境が、数ヶ月前には、これまでの頑迷な長老政治との対比で喝采を浴びていたモハマッド副皇太子の変革計画の危うい徴候を強調している。副皇太子は低油価の時代に経済多角化の陣頭指揮をとっている。大胆な変革計画を活発に推し進める副皇太子はまた、地域の影響力拡大を目指すイランを阻止すべくイエメンの代理勢力への空爆を始めていた。

・だが、非石油部門は30年ぶりにリセッションに陥りそうだ。政府の未払いがビジネス界の自信を失わせ、公務員の福利厚生削減は消費減退を招き、イエメンへの高価な介入は多くの人命を損ない、国際的非難を浴びている。

・あるファンドマネージャーはいう、「ハネムーンは本当に終わった」「経済からイエメンの苦境まで、政府にとっていいことは何一つない」と。

・国内の不平不満は、モハマッド王子に向けられている。彼のプランは、ファンファーレをもって迎えられた「ビジョン2030」と「国家変革計画(National Transformation Plan)」に集約されている。多くのサウジ人は、変革が必要なことと低油価が経済に与えている影響については承知しているが、その方法とペースに異議を唱え始めている。

・今年9月に300万人の公務員を対象に福利厚生費を170億ドル削減したことにより、教師のナセルの給料は7%減少し、月額1,400ドルとなった。

・政府は今月、政府が支払遅延を起こしている大手建設業者Binladin GroupやOgerが従業員や債権者への支払いをきちんとできなくなっていることへの対応として、これら政府債務を解消するため270億ドルを確保した(先月、初めて国債を海外で発行し、175億ドルを調達している)。

・ある政府幹部は個人的に、民間企業への支払遅延は間違いだった、と認めている。

・政府の耐乏対策の結果、2015年3.5%だった非石油部門の成長率は第二四半期に0.07%に落ち込んだ。燃料補助金のさらなる削減見通し、年金の削減、あるいは2018年に湾岸諸国で一斉に導入するsales tax (日本の消費税に相当)などがあり、将来の見通しは暗いと、国民の怒りを引き起こしている。

・最近、モハマッド王子が5億ユーロの高級ヨットを購入したとのニュースも厳しい意見を呼んでいる。

・将来が暗いことから、サウジの富裕層はすでに何十億ドルもの資金を海外に移している、とある金融筋(financer)はいう。

・経済改造計画が揺らいでいるとの感覚は、同計画のドラフトを描いたとされるマッキンゼーやボストン・コンサルティングあるいはPwCへの非難が高まっていることにも見てとれる。

・「ビジョン2030はジョークだ」とあるベテラン・サウジ・ウオッチャーはいう。「人々はマッキンゼーを攻撃しているが、それは同社を連れてきた人の代わりに攻撃しているのだ」と、モハマッド王子を指して言っている。

・マッキンゼーは、滅多に行わないアラビア語での声明を発表し、自分たちがビジョン2030を作成したのではない、と(街の噂を)否定した。

・国家改造計画は24の官庁にまたがり、543件のアクションプラン(initiatives)がある。今年のアクションプラン実行のために720億ドルかかると見込まれているが、政府のアドバイザーは、予算は30~40%削減されるだろう、という。

・ある省の被雇用者は、アクションプラン実行のために3月に予算申請を行ったが、予算を50%削減した代替プランを出すように要求された。彼は現在も予算の最終承認を待っているが、計画は2017年の実行となりそうなので「もう待っていられないから、民間に戻ろうかな」という。

やはり「不敬罪」がある国なので、けっこうぼやかした書き方をしている気がする。
王室内の他のプリンスたちや保守的な聖職者たちは、この事態をどう見ているのだろうか。

サウジの動静、やっぱり気になるなぁ。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年11月25日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

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岩瀬 昇
エネルギーアナリスト

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