ドイツ政界は選挙戦モードに突入

長谷川 良

欧州連合(EU)の欧州議会のマルティン・シュルツ議長(60)は24日、議長の任期が終わる来年1月末、来秋に実施されるドイツの総選挙に社会民主党(SPD)のノルトライン=ヴェストファーレン州から出馬する意向を表明した。

5年間、議長を務めたシュルツ氏は単に1人の社民党議員になってドイツ政界に復帰する考えはなく、来年9月の総選挙で“社民党の首相候補者”となってメルケル首相と対決するのでないか、という憶測が流れている。政界がにわかに慌ただしくなった。

▲ドイツ政界に復帰するシュルツ欧州議会議長(SPDの公式サイトから)

▲ドイツ政界に復帰するシュルツ欧州議会議長(SPDの公式サイトから)

SPDではガブリエル党首が次期総選挙で党の首相候補者として出馬する意向を固めている、という噂もあり、ガブリエル党首とシュルツ議長の間でどのような党内調整が行われるか注目される。来年1月末の党会議で誰を首相候補とするかを決定する予定だ。世論調査では、シュルツ議長がガブリエル党首より対メルケル首相で善戦が期待できるという結果が出ている。

シュルツ議長は来年2月の連邦大統領選で「キリスト教民主同盟」(CDU)、「キリスト教社会同盟」(CSU)、そしてSPDの3党統一候補者となったフランク・ヴァルター・シュタインマイヤー外相の後継者となるのではないかとも予想されている、5カ国語に堪能な欧州議会議長として培った外交人脈を生かす上で外相ポストが最適と受け取られているからだ。

なお、連邦大統領選ではCDUのメルケル首相は土壇場まで党の独自候補を探したが、見つからなかった。社民党がシュタインマイヤー外相を擁立した場合、CDU候補者が敗北する可能性があり、次期総選挙を身近に控えているメルケル首相にとってはまずい。そこでSPD候補者を政権与党の統一候補者として擁立することで妥協した経緯がある。

ドイツの場合、連邦議会と16の州議会から比例代表で選出された代表によって選出される。国民の直接投票ではない。議会政党が有力候補者を擁立し、投票で過半数を獲得した候補者が選出される。来年2月12日に実施される連邦大統領選で3党の統一候補者のシュタインマイヤー外相の選出は間違いないと受け取られている。

一方、メルケル首相は20日、来年の総選挙で首相候補者として4選を目指すことを表明したばかりだ。難民の受け入れ政策で国民ばかりか、与党内で批判が高まり、支持率を落としたが、同首相はドイツ政界では依然、高い支持率を維持しており、4選の可能性は高い。

ちなみに、独公共放送(ZDF)が25日発表した政治バロメーターによれば、メルケル首相の4選出馬に対し、64%が支持、33%が不満だった。CDU・CSU支持者の間で89%が支持し、拒否は10%だけだった。一方、SPDの首相候補者としては、シュルツ議長が51%で、ガブリエル党首の29%を大きく引き離している。

シュタインマイヤー外相の連邦大統領選出馬、メルケル首相の4選出馬、そしてシュルツ欧州議会議長のベルリン政界復帰とここにきて主要政治家の動きが活発化してきた。CDU、SPDの連立与党が選挙戦モードに突入してきたわけだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年11月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。