主婦に聞いた!家族団らんの秘訣は○○にあった

尾藤 克之
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中央ピンクのエプロンが若生。レッスン教室にて。

読者の皆さまは、「絵巻き寿司」というものをご存知だろうか。金太郎飴のようにどこを切っても同じ絵柄が出てくる寿司のことである。そして、この「絵巻き寿司」をさらに太巻きにして、バリエーションを豊富にしたものを「デコ巻きずし」とよぶ。

れっきとした、「日本デコずし協会」という業界団体も存在する。レシピも豊富にあり、親子、外国人を対象にした料理教室は人気が高いそうだ。同団体によれば「断面に美しい図柄を描く巻き寿司は、一見高度な技術を要すると思われますが、わかりやすく手順を記したレシピを使えば、小学生にも巻くことができます」とのことだ。

■国境を越えた「デコ巻き」

「絵巻き寿司」は日本の各地の郷土料理として親しまれてきた。寿司の一種で、海苔に酢飯を広げてその上に具材を乗せて巻いたものを指す。「絵巻き寿司」には、いくつかの種類があり、太さによって「細巻」「中巻」「太巻」などに分類される。千葉県九十九里などを中心とし千葉県全域で作られる郷土料理で「房総巻き」「祭り寿司」などの呼び名もある。

若生久美子(以下、若生)氏は、1977年生まれ兵庫県在住の主婦である。社員やパートなどを経験。特技や趣味もなかったが、2014年初めて「デコ巻きずし」を見て一目ぼれし、日本デコずし協会認定・デコ巻きずしマイスターを取得した。

今回、注目の『親子で楽しむかわいいデコ巻きずし(マガジンランド)』を上梓するにいたる。本書は、日本国内外で活躍する人気の「デコ巻きずし」のインストラクターによるレシピ集だが、理想的な家族のコミュニケーションツールと考えることもできるだろう。

本人は、謙遜しながら普通のOL事務職だったことを吐露しているが、「デコ巻きずし」に出会ってから、若生の生活は一変したようだ。2015年に「ほっとネット★ベイコム」を皮切りに、関西テレビ「よ~いドン」、神戸新聞「自宅教室取材」、東京ビッグサイト「ホビークッキングフェア参加」、シンガポールにて「デコ巻きずし」の出張レッスンを開催するに至っている。日本全国はもちろん、海外からも引っ張りだこのようだ。

若生によれば、海外での出張レッスンでのニーズは思った以上に高い。とくに教育熱心な層において「デコ巻きずし」のウケがいいらしい。『子供と過ごす時間を増やしたい』『子供との時間を有益にしたい』という欲求に応えられているのだろう。

「最初は、不思議そうにしている子供たちも、時間が経つにつれて面白さに引き込まれていきます。実は、子供たちよりも、親御さんのほうが熱心になる傾向にあります。普段は仕事でなかなか時間が取りにくいと思いますが、たまには、『デコ巻きずし』を通じて、子供とじっくり向き合う時間も良いのではないでしょうか。」(若生)

「デコ巻きずしを作って、周囲や家族の反応が変わったと言われる方が多いです。子どもは大変喜びますし、なにしろ切る時のワクワク感がたまらないようです。子供の友達が遊びに来たら披露したいと言っている方もいます。」(同)

家族なら親子で楽しめる。教室であればお互いが出来栄えを競いあう。「断面のデザイン性を競ってインスタなどにUPする方も多いですよ。」(同)。こうなると「寿司」というより「作品」に近い印象だ。

■「デコ巻き」はイリュージョン

「絵巻き寿司」は郷土料理として発展してきた。ふるさとおにぎり百選と農山漁村の郷土料理百選にも選ばれており、その歴史は江戸時代にまでさかのぼる。当時は、酢飯に魚をのせて桜でんぶや薄焼き卵、高菜で巻いシンプルな形体が、数百年の時を越えて「デコ巻きずし」として生まれ変わったのだ。これは、まさに“イリュージョン”である。

さらに、「デコ巻きずし」は「つくること」「見せること」を兼ね備えた、コミュニケーションツールともいえる。昭和のよき時代、食を通じて家族が「団らん」したあの温かい光景は「デコ巻きずし」で再現可能だ。「団らん」には「楽しく語り合う」という意味がある。寒くなると「家族団らん」が恋しくなるものだ。

気がついたら、季節は冬へと変わり、師走の足音が聞こえてきた。皆さまも、素敵な冬のデコ巻きライフを過ごしてみてはいかがだろうか。確かに、これなら家族で楽しめそうだ。

尾藤克之
コラムニスト

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