バロンズ:米株、来年の上昇を前借り?

2016年11月27日 21:00

NY

バロンズ誌、今週のカバーはトランプ新政権下で米国を救うべき方策を提示するコラムの第2弾として”法人税の上限を22%へ引き下げよ(Cut the Top U.S. Corporate Tax Rate to 22%)”を掲げる。全世界で米企業の競争力を高めると共に、税金逃れに割く時間とエネルギーを削減することが可能だ。海外に滞留する米企業の利益の本国送還も、容易となる。トランプ次期米大統領は法人税を現行の35%から15%への引き下げを公約としていたが、膨れ上がる政府債務の水準を考えれば22%が妥当ではないか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週も米株ラリー継続に疑問を呈する。詳細は、以下の通り。今週はランダル・フォーサイス氏は休暇で、代わりにコピン・タン氏が執筆している。


ウォール街、来年の上昇を前借り—Wall Street Borrows From Next Year’s Gains.

ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する2017年1月20日まで待つ必要があるのだろうか。米国をもう一度偉大にするという人物が米大統領の座に就くのであれば、全てはうまくいくだろう。市場関係者はそう信じ込んでいるようで11月25日にダウやS&P500、ナスダック、ラッセル2000と4つの株式指数が一斉に最高値を更新した。音楽共有ソフトのナップスターが創立されて間もない1999年12月31日以来の快挙だ。

ダウは19,000ドルを突破し、米10年債利回りは3%を超えた。ナスダックは年初来で12回目の最高値を更新し、2000年以来で最多となる。ベスポーク・インベストメントによると、米大統領戦後2週間での上昇率は2.7%に及び1932年以降で3番目だ。トップはレーガン米大統領戦就任前で8.3%高、次いでニクソン米大統領就任前で2.9%高だった。

米国株の時価総額も全世界の37.8%を超え、過去10年間で最高となる。マーケット関係者の心理を大いに変化させており、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの調査ではグローバル・ファンド・マネージャーの177人の間で、グローバル経済が強まると回答した割合は10月の19%から35%へ急伸。インフレへの見方も上振れし2004年以来の水準に達した。アクティブ運用のファンドマネージャーもリターンを挙げ、7〜9月期に全体の53%がS&P500を上回る成績を達成している。

トランプ次期米大統領は米国を切り盛りする上で雇用の増加、減税、デフレとの戦い、規制緩和、国境間の壁建設、インフラ事業を推進していくのだろう。ゴールドマン・サックス(GS)のストラジテスト、デビッド・コスティン氏はトランプ新政権の政策により2007年の米企業のレパトリが2,000億ドルに達すると見込む

S&P500構成企業の純債務は金利・税引き・償却前利益(EBITDA)比1.6倍で、本国還流させた現金の一部は債務返済に充てられるだろう。企業は稼働力の75%しか使用しておらず長期平均の80%以下である一方、非金融機関の現金は1.6兆ドルと全体の12%と長期平均の7%を上回る状況だ。GSは企業が2017年に現金を2.6兆ドル利用し、そのうち設備投資に58%、株主還元策に48%割り当てられると見予想。これにより、7〜9月期に1株当たり利益が前年同期比3%増と2015年初めから続いた減益から脱却してからの業績を支援するだろう。

投資家はインフラ投資や念頭に小型株へ資金を振り向けると同時に、ドル高を意識し多国籍企業から資金を移した。11月8日以降の1週間反で、S&P500構成銘柄のうちトップ50は1.9%上昇した半面、下位50は8.8%も急伸した。トップ50のうち海外売上シェアの大きい銘柄は1.6%高にとどまり、海外の依存しない企業は4.3%高だったという。しかし、アナリストはドル高や過去5ヵ月間で1.36%から2.36%へ上昇した米10年債の効果を見極めてはいない。

ラッセル2000、怒濤の15日連騰を達成中。

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(出所:Stockcharts)

メインストリートは、ウォール街の反応を温かく受け入れるのだろうか?トランプ次期米大統領は有権者の27%の支持を得て勝利したが、民主党のクリントン候補の28%に満たず、40%以上が投票しなかった。実体経済が多くのアメリカ人を失望させているのであれば、米株市場は実体経済を無視するという意味で良い仕事をしている。選挙中でトランプ氏は国境間の壁建設について言及してきたが、不安という壁は取り払った。その米株市場は、まるでトランプ次期米大統領がマーケットが好む選挙公約を全て果たし、マーケットが受け付けない公約を外す前提で上昇してきた。

米国個人投資家協会の調査では強気派が3週間前の23.7%から50%へ上昇し、過去6年間で最高の上昇幅を遂げた。オプション市場ではSPDR S&P500 ETF(SPY)のプットが7月以来で最低となり、逆にiシェアーズ 米国債20年超ETF(TLT)は過去数年で最高を示す。2017年に景気後退への懸念は、ほとんどゼロに近く強気そのものだ。

確かにS&P500のバリュエーションは17倍で、1999年の28倍より割安だ。しかし、レーガン米大統領が就任した頃の米株時価総額は国内総生産(GDP)比で40%で金利は上昇を経て低下局面にあったが、現在の米株時価総額はGDP比200%に達し金利は過去最低に近く今後上昇が加速する可能性が高い。

上下院を制した共和党がトランプ政権のインフラ支出拡大などを承認するかも、定かではない。2017年3月15日には、債務上限引き上げが待ち構え、同年3月31日には2017年度(2017年9月末まで)の予算を決定する必要もある。

トランプ次期大統領が振りかざす関税引き上げなどを含めた貿易政策も、外交手腕を試すことになるだろう。米国の主要貿易相手国は米国債保有国でもある。中国は米国債保有高は1.16兆ドルと2000年の600億ドルから急増し、日本は1.14兆ドルとなる。

PIMCOの公共政策ヘッドを務めるリビー・カントリル氏は、「保護主義政策が潜在的に米国経済を打撃を与える一方で、貿易相手国からの報復はさらに深刻なリスクとなりかねない」と語る。また「良いテールリスク、即ち経済支援につながる上方リスクは高まってきたものの、残されたテールリスク、即ち政策の失敗で起こるリスクも膨れ上がっている」と言及するのも忘れない。悪いニュースは、良いニュースを相殺するということを肝に銘じておくべきだろう。


トランプ次期大統領への期待が先行したマーケットに対し、バロンズ誌は慎重そのもの。筆者も、現状のラリーが継続するとはとても考えられません。むしろ、いつ梯子を外されるかが問題。11月30日の石油輸出国機構(OPEC)総会での減産合意をはじめ12月2日の米11月雇用統計、12月4日のイタリア国民投票、12月8日の欧州中央銀行(ECB)定例理事会と来週からイベントが目白押し。またトラプ次期米大統領は、財務長官や国務長官など重量級の閣僚の発表を控えています。一連のイベントをこなし、年末のドレッシング買いが収束した年明けに下振れしてもおかしくはない。ウィスコンシン州を始めとした再集計問題がペンシルベニア州やミシガン州でも広がれば、予想外の展開も迎えるリスクもあり、安穏としていられません。

(カバー写真:Randy Lemoine/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年11月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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